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準備を始めました
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ルークは物腰が柔らかく、聡明で理知的だった。
(この世界にもこんな人がいるんだ)
この世界には俺様かその他大勢しかいないと思っていた。
ジョージ=俺様、父=俺様、兄その1=俺様、兄その2=俺様、セバス=その他大勢
という感じで。
ルークは帝国の貴族の次男だと自己紹介した。アードレー家はさすがに人材豊富だ。帝国と取引したいと提案すれば、すぐに最適な人物をアサインしてくる。
ただ、それにしても若すぎやしないだろうか。自分が20歳だということを棚に上げて、商売経験は大丈夫かと心配していたら、それが顔に出てしまったらしい。
「私は25歳ですが、それなりに経験を積んでますし、こう見えて、帝国ではそこそこ顔がきくんです」
「あ、そんなつもりは……」
「いいんです。お互い思ったことはどんどんぶつけ合っていきたいと思います。どれだけ本音をぶつけ合ったかで、信頼関係が変わると思っています」
そういって、彼は私にウィンクした。
ウィンクされたのって、生まれて初めてではないだろうか。私は恥ずかしくなってしまって、慌ててルカの方を向いた
「ルカ、何か聞くことない?」
「私は、ない、です……」
そうだった。すずきさゆりが入ってくる前は、私はイケメン男性の前ではこんな感じだった。
ジョージも顔だけはよかったのよね。
「では、私からいくつかお願いしたいです。まず、帝都までの馬車にこういったものを取り付けていただけますか」
私はコイル状に巻いたスプリングの図をルークに提示した。
「これは何ですか?」
「スプリングといいます。鉄の線を巻いたものです。馬車の荷台と車軸の間に取り付けることで、振動を吸収してくれます。商品の破損を防げますし、お尻も痛くなりません」
「なるほど。さっそく技術のものに見せてみます」
「次に持ち出す商品ですが、今回はサンプルを持っていくつもりですが、王国の特産品であるシルク、陶磁器のほかに帝国で需要が出そうなものはございますか?」
「僕の考えでいいですか?」
「はい、エーベルバッハ様のお考えをお聞かせください」
「ルークでいいですよ。そうですね。扇子を持ち帰ると貴婦人に喜ばれます。あとは金細工や宝石もですかね」
「ルークさんのアイデアは、貴婦人が喜ばれるもの限定ですか?」
(この色男め。きっと女には不自由しないってところかしら)
「い、いいえ、そんなことはないです。私の姉や妹からお土産をねだられてまして。それに帝国の男性は質実剛健で、ほとんど自分にお金を使わないのです。もっぱら女性にプレゼントを贈る習慣がございまして……」
「まあ、羨ましい習慣ですこと」
「王国の職人は手先が器用で、精微な装飾が実に見事で、王国物は本当に喜ばれます」
「そうなのですね。逆に帝国からは何を持ち帰ると良いとお考えですか?」
「それは実際に帝国で見ていただくと良いと思うのですが、特産品としては、絨毯、毛皮、お茶などがございます。エリーゼ様とルカ様に効率よくご紹介する予定でおります」
「分かりました。荷馬車は今回は五台で行きましょう。警備はお任せしてよろしいでしょうか」
「はい、警備は帝国の得意分野です。お任せください」
ルークとの打ち合わせは終了した。準備に一ヶ月欲しいということで、今後は、週に一度、定例会を持つことにして、今日はお別れした。
(そうか、警備も帝国の特産品ということね。色々と物騒だから、警備会社は欲しいと思っていたのよね)
今はマリアンヌと仲良くしているため、王妃の威光が効いていて、「侍女の店」は今のところ安泰だが、私はマリアンヌとの仲は長くは続かないと見ている。
王妃として盤石な体制を整えるため、資金面で彼女をサポートしている私を今は自由にしているが、いつかは自分の思い通りにしたくなるはずだ。
そのため、後宮依存のビジネスから、別のビジネスへとシフトを進めていたのだが、マリアンヌは想定よりも早く牙を剥いて来たのである。
(この世界にもこんな人がいるんだ)
この世界には俺様かその他大勢しかいないと思っていた。
ジョージ=俺様、父=俺様、兄その1=俺様、兄その2=俺様、セバス=その他大勢
という感じで。
ルークは帝国の貴族の次男だと自己紹介した。アードレー家はさすがに人材豊富だ。帝国と取引したいと提案すれば、すぐに最適な人物をアサインしてくる。
ただ、それにしても若すぎやしないだろうか。自分が20歳だということを棚に上げて、商売経験は大丈夫かと心配していたら、それが顔に出てしまったらしい。
「私は25歳ですが、それなりに経験を積んでますし、こう見えて、帝国ではそこそこ顔がきくんです」
「あ、そんなつもりは……」
「いいんです。お互い思ったことはどんどんぶつけ合っていきたいと思います。どれだけ本音をぶつけ合ったかで、信頼関係が変わると思っています」
そういって、彼は私にウィンクした。
ウィンクされたのって、生まれて初めてではないだろうか。私は恥ずかしくなってしまって、慌ててルカの方を向いた
「ルカ、何か聞くことない?」
「私は、ない、です……」
そうだった。すずきさゆりが入ってくる前は、私はイケメン男性の前ではこんな感じだった。
ジョージも顔だけはよかったのよね。
「では、私からいくつかお願いしたいです。まず、帝都までの馬車にこういったものを取り付けていただけますか」
私はコイル状に巻いたスプリングの図をルークに提示した。
「これは何ですか?」
「スプリングといいます。鉄の線を巻いたものです。馬車の荷台と車軸の間に取り付けることで、振動を吸収してくれます。商品の破損を防げますし、お尻も痛くなりません」
「なるほど。さっそく技術のものに見せてみます」
「次に持ち出す商品ですが、今回はサンプルを持っていくつもりですが、王国の特産品であるシルク、陶磁器のほかに帝国で需要が出そうなものはございますか?」
「僕の考えでいいですか?」
「はい、エーベルバッハ様のお考えをお聞かせください」
「ルークでいいですよ。そうですね。扇子を持ち帰ると貴婦人に喜ばれます。あとは金細工や宝石もですかね」
「ルークさんのアイデアは、貴婦人が喜ばれるもの限定ですか?」
(この色男め。きっと女には不自由しないってところかしら)
「い、いいえ、そんなことはないです。私の姉や妹からお土産をねだられてまして。それに帝国の男性は質実剛健で、ほとんど自分にお金を使わないのです。もっぱら女性にプレゼントを贈る習慣がございまして……」
「まあ、羨ましい習慣ですこと」
「王国の職人は手先が器用で、精微な装飾が実に見事で、王国物は本当に喜ばれます」
「そうなのですね。逆に帝国からは何を持ち帰ると良いとお考えですか?」
「それは実際に帝国で見ていただくと良いと思うのですが、特産品としては、絨毯、毛皮、お茶などがございます。エリーゼ様とルカ様に効率よくご紹介する予定でおります」
「分かりました。荷馬車は今回は五台で行きましょう。警備はお任せしてよろしいでしょうか」
「はい、警備は帝国の得意分野です。お任せください」
ルークとの打ち合わせは終了した。準備に一ヶ月欲しいということで、今後は、週に一度、定例会を持つことにして、今日はお別れした。
(そうか、警備も帝国の特産品ということね。色々と物騒だから、警備会社は欲しいと思っていたのよね)
今はマリアンヌと仲良くしているため、王妃の威光が効いていて、「侍女の店」は今のところ安泰だが、私はマリアンヌとの仲は長くは続かないと見ている。
王妃として盤石な体制を整えるため、資金面で彼女をサポートしている私を今は自由にしているが、いつかは自分の思い通りにしたくなるはずだ。
そのため、後宮依存のビジネスから、別のビジネスへとシフトを進めていたのだが、マリアンヌは想定よりも早く牙を剥いて来たのである。
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