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召喚されました

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「名はなんという」

 俺は異世界の王と対面していた。目の前の壮年の男が、ラインクルト王国の王であることが、なぜか俺にはわかっていた。

「佐藤進です」

 自分の声があまりにも可愛いらしくて驚いた。自分の姿を確かめようと、視線を下に向けて、もっと驚いた。

 まっ白いローブに身を包んだ女性の体だった。ふっくらと胸の隆起があり、真っ白な手が見える。

(すごくいいにおいがする。それに、肌がすべすべじゃないか)

 そして、俺は何とも言えない幸福感に満たされていた。魂が暖められているような、悦びが全身を駆け巡るような、今までに経験したことのない感覚だった。

「ふむ、かの世界のものに間違いはないようじゃの。だが、あちらにもスケルトンが存在していたとはな。して、能力は間違いないのじゃな?」

 そう言って、王は視線を俺の右横の人物に向けた。筆頭魔術師のサイレスだ。やせた体に黒いローブをまとった白髪の老人で、髪と同じ色の長いひげをたくわえている。

「はい、問題ないはずです。かの世界で最も魂力の強いものを召喚しました。転移の過程で肉体が消滅し、骨だけたどり着いた例は過去にはございませんが、このものからは力を感じます」

 サイレスはしゃがれた声で答えた。

 ここにいる人物の素性が、なぜか次々と俺の頭に入って来る。

「当てが外れたかと思ったが、能力さえあれば、むしろアンデッドのほうが兵器としての価値は高いやもしれぬ」

 王の言葉の意味がよくわからなかった。

(アンデッド? 兵器ってなんだ?)

 すぐに疑問が解けた。知りたいことが頭に入ってくるのだ。

 この国は長く戦争状態に置かれており、かなり不利な状況に追い込まれている。そのため、起死回生の策として、異世界から強者を召喚した。それが俺なのだが、アンデッドというのは、まだわからないままだった。

 俺の視線が俺の意志とは関係なく、俺の左側に移動した。

 初めて気づいたのだが、骸骨が一体、床に転がっていた。

「スケルトン」という言葉が頭をよぎった。

「王様、まずはサトー殿の能力を見せていただきましょう」

 サイレスが王にそういうと、王が俺の方を向いた。

「そうだな。サーシャ、憑依を解くがよい」

「はい、お父様」

 王に答えたのは俺だった。

 わかった。俺は転移の過程で肉体が消滅し、スケルトンとなってこの世界に召喚されたらしい。

 いろいろと教えてくれたのは、サーシャ王女の思念だったのだ。

 俺の魂はサーシャから離れて、左に転がっていたスケルトンに憑依した。
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