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飛んで火に入る夏の虫

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「もう黒だって分かったのですか?」

「もともと目をつけていたらしい。レイン子爵が言っていた使者とやらもマークしていて、奉納金がプリシラに渡っているところまで確認済みらしい。だが、一つ問題があってな」

「ひょっとしてして王ですか?」

「鋭いな。叔父様はプリシラとしちゃってるらしい。プリシラを追い詰めると何を言い出すか分からないため、手を出せないという状況のようだ」

「成敗すべきはクソったれの王の方ですね」

 俺は遠慮なく毒づいた。

「お前は叔父様とは上手く行ってないのか? 父とは呼ばずに王と呼んでいるが」

「話したことすらないですよ。たまにママのところに来て、デレデレして帰って行くだけです。シルフィなんて女の子の名前を俺につけやがって」

「シルフィは男女両方に使うだろう。綺麗でいい名前じゃないか。お前が生まれて来るのを楽しみにしていたし、今回の家出も、一番心配していたのは叔父様だ。叔母様は、あらあら、って言ってただけだぞ」

「王は跡取りがいなくなるのが心配なだけですよ。それより、ママがあらあらだけとは、ショックでかいなあ」

「まあ私も父とは口をきかないから、どこにでも親子の確執ってのはあるんだろう。で、プリシラはどうする?」

「何も考えずに懲らしめちゃえばいいですよ。殺しちゃったりするとママが悲しむから、殺さない程度で。王に何が起ころうと身から出た錆です。尻拭いは自分でさせればいいですよ」

「叔母様が悲しまないか?」

「もうしちゃったんだから、どうしようもないです。ママだけ知らないって方が、可哀想です。知った上でどうするかは、当人同士の話でしょう。私はママの味方ですけどね」

「お前、本当に八歳か……? 何だか私よりも歳上と話しているような感覚になるんだが……」

「気のせいですよ。さあ、王に気にせず、やっちゃいましょう。ところで、今、開発中の商品があるんですよ。マジックポーションです」

 俺はサンプルをクーラーボックスから取り出した。

 これも魔道具だが今は説明しないでおく。

「まさか、これは……」

「飲むと魔力が回復します」

「お前、大発明じゃないか!!」

「ただ、まだ実用化まで全然行けてないんですよ。一週間かけてようやく1日分しか貯められません。それに、常温だと魔力が放出しちゃうんです。かといって安定化させると吸収できなくなるし。でも、これ一本を半分ずつ飲めば、魔力回復しますから、今から乗り込みましょう」

「すごいな、これは。魔法界に革命をおこすぞ。さて、変身するか」

 ミラ姉がまたおっぱい丸出しで着替え始めた。

 清楚な美女が台無しだ。

 俺はローブを羽織るだけだが、その前にイライザに一言挨拶してから出かけよう。

 工房から店をのぞいたら、イライザが何やら客と揉めていた。

 ギルドの職員?

 よし、モノクロに変身して、店の表からぶちのめしてやろう。

「どうかしたのかしら、クロ」

「ギルドの職員と揉めているようだ。わざわざ向こうから来るとはな。シロ、ぶちのめしに行こう」
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