王子に転生したのですが、教育が厳し過ぎるので家出しました。神の加護で魔法が出来ますので、身分を隠して、魔道具屋を始めようと思います

もぐすけ

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「誰だ、お前たちは?」

 レイン子爵はモノクルをかけたロマングレーのイケオジだった。

「一応確認しておこうかしら? レイン子爵よね?」

 問いかけを無視したシロにレイン子爵はムッとした。

「こちらが聞いている。お前たちは誰だ? 護衛たちは何をしているっ」

 二人とも自分の話しかしない。

 偉い人にありがちだ。

「人の話を聞かない人ね。まあ、いいわ。お前はレイン子爵に決定だ。これより刑の執行を行う」

 レイン子爵はまだ喚いているが、シロは構わず続けた。

「王政府が孤児救済のために立ち上げた支援制度を悪用し、子供たちを帝国に売り渡した。また、いたいけな少女たちを娼館に売った。間違いないな?」

 シロが怒り心頭なのか、いつものミラ姉の口調に戻っている。

「シロ、口調が変だ。女らしい言葉遣いで頼む」

「あら? 私としたことが、おほほほ。レイン子爵、間違いないわね?」

「お前たちは、い、いったい何を言っているっ。証拠はあるのかっ!?」

 レイン子爵が非常にわかりやすく動揺している。

 こいつ、これで本当に黒幕なのか?

「クロ、証拠だって、困ったわね」

「証拠はお前の自白だ。今から脳を揺らすぞ。かなり気持ち悪いが我慢しろよ」

 俺はソニックウェーブを力を加減して、レイン子爵に放った。

 レイン子爵はすぐにふらふらとして、立っていられなくなり、床にうずくまって、うめき始めた。

「……魔法か? 魔法の人体への行使と、貴族への不敬罪で、死罪になるぞ」

「あら? 死ぬのはあなたなのに、何を言っているのかしら。クロ、もう少し強く揺らさないと、反省しないみたいよ」

「これ以上強くゆすったら、障害が残るが仕方がないようだな。自白させるため、言語中枢だけは痛めないでおく。まずは右半身を麻痺させるゆすりかたをするぞ。今とは桁の違う痛みが襲うが、大声出すなよ」

 レイン子爵は真っ青になった。

「ま、待ってくれ。は、話す、話すから」

「何だ、もう話すのか。根性ないな。下半身不随にすることも出来るぞ」

「頼みます。話をさせてください」

「仕方ないわね。どうぞ、話して。嘘か本当かは魔法で分かるから、嘘は言わない方が身のためよ。こんなことをこんな悪党に教えてあげるなんて、私ったら、なんて優しいのかしら」

 もちろんそんな便利な魔法はない。

「確かに人身売買を支援しています。でも、私は関係者への橋渡しや調整役で、実行役は商業ギルドです。それに私のバックには、王室の大物がいて、その大物に命令されて、言うことを聞くしかないのです」

「ふーん、その王室の大物って誰よ?」

「そ、それを話すと、私の命に関わります」

「そう、じゃあ、ここで私たちに殺されなさい。クロ、死ぬまでゆすっちゃって」

 俺はソニックウェーブを出そうとして、レイン子爵が覚悟を決めたのを見てやめた。

 大物を引き摺り出すべきだ。

「シロ、大物って誰だろう? 王だったりして……。子供に無関心だし」

「王弟の次男のクラウスとか、やさぐれてて、怪しいわね」

 ああ、あの陰険なやつか。

 俺は覆面から出ている目でレイン子爵をジロリと睨んだ。

「お前の主は王か王妃か?」

 レイン子爵がギョッとした表情をした。

「いいえ、さすがに両陛下ではございません」

 俺は少し安心した。

 ママの線はさすがにないと思ったが、父は正直、よくわからない人物なのだ。

「何だ、全く大物ではないではないか。そんな小物のことなど後からでもどうでもなる。まずはレイン子爵、一生動けない体にしてやろう。死んだ方がマシなくらいにな」

「こ、小物……?」

「クロ、ちょっと待って。生ゴミを増やすよりも、レイン子爵にはまずは償いをしてもらうのがいいわ。売ってしまった子共たちを買い戻してもらいましょう。レイン子爵、いいわね」

「し、しかし、行方も分からず、主への奉納金も払えず、私は殺されるだけです」

「その小物の名前を教えなさい。今からそいつの脳を揺らしにいくから」

 レイン子爵は散々悩んだ挙句、その人物の名前を挙げた。

「意外だな。プリシラは悪事を働くような印象ではないぞ」

 プリシラはママの妹で、俺は面識がある。

「プリシラ様は王妃様を引き摺り下ろして、ご自分が王妃になるおつもりです。今回の件は、王妃様の評判を落として、資金も稼ぐ一石二鳥の作戦です」

「思った程小物ではなかったわね。レイン子爵、証拠はある? さすがに王妃の妹を間違えて懲らしめちゃうと、面倒なことになるわ」

「定期的に奉納金をプリシラ様の使者にお渡ししています。その使者を辿れば、プリシラ様に行き着くと思います」

「分かったわ。今後は子供たちは私が指示する商人に渡しなさい。怪しまれないよう二割り増しの金額で引き取るけど、当然後で返すのよ。次回のプリシラの奉納金はあなたが立て替えなさい。指示に従えば、脳は揺らさないし、プリシラから守ってあげるわ」

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