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突然の帰省

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「殿下、ここ私の家のすぐ近くです!」

 城の外に出て、監禁されていたのがスプリング城であることに気づいた。

 私の家はスプリング城を見下ろす高台の上にある。

「うん、知ってる」

 あれ? リング様の顔色が冴えないわ。

「せっかくですから、寄って行きませんか?」

 お二方が顔を見合わせている。テリィ様が真剣な表情で私を見つめて来た。

「なあ、サーシャ、俺たちの命を守るためにいくつか頼みがある」

 どんなお話かと思ったら、命を守るって、どういうことかしら。

「ええ、私に出来ることでしたら……」

「まず、俺たちが師匠と聖女様の正体を君に話していないことにして欲しい。師匠から許可を頂いていないのに、教えてしまったのは不味かったと思うのだ」

 何だ、そんなことか。

「分かりました。父が元賢者で、母が元聖女で、帝国の公爵位にあることは聞いていない、ということでよろしいでしょうか?」

「うむ、助かる」

「それと、僕たちの魔法の師匠ってことも知らないってことにして欲しいな」

「それもですか? でも、私と魔法の訓練はしていいってお話でしたよね?」

「師匠からはこう言われたんだ。学園に娘がいるので手を出すな、ってね。それで、魔法の手合わせをしたいってお願いしたら、それは娘も喜ぶからいくらでもしていい、って仰ったんだよ」

「そうなのですね。私は私と同じぐらい魔法好きのお二方に出会えて幸せだと思ってました。私の相手はこれまで両親だけでしたし、学園の皆んなも、魔法が好きって感じではありませんでしたから」

「確かに俺たちは魔法好きだ」

「好きじゃなければ、君のご両親の訓練にはついていけないよ……」

「分かりました。両親は皇室の方々に魔法は教えていない、でよろしいですね?」

「助かる。もう一つお願いしたい。今日のこの事件はなかったことにして欲しいんだ。俺たちのせいでサーシャが危険な目にあったと知られたら、どうなるかわからないからな」

「お二方のせいでは……。分かりました。今日の事件はなかったということで、了解しました。ただ、そうなると、なぜここにいるのかの理由をどう説明しましょうか」

 お二方がまた顔を見合わせている。

「兄さん、僕たちはついて行かない方がいいんじゃ……」

「俺もそんな気がして来たぞ」

「あ、手遅れです。父に見つかりました」

 家の様子を見たら、父がちょうど庭に出て、こちらの方を見て、驚いているところだった。

 私は手を振った。父が珍しくおどおどとした感じで手を振り返した。

 お二方はボソボソと小声でお話をされている。

「兄さん、師匠は帝国におられるはずじゃ……」

「そのはずだが……」

「あっ、今日は王国との国交樹立二百周年だよ。マリンは式典に参加していて、魔法の訓練は休みじゃないか」

「そうだった。てことは、当然聖女様もいらっしゃるのか……」

「殿下、王子のちょっかいから守ってくれて、魔法の手合わせをしてくれる素敵なお兄様方ということで、ご紹介します。今日もアンソニー王子に釘を刺しに来て頂いた、ということにすれば、嘘になりませんよ」

「そうだな、そうしてもらおう」

「うん、自然な流れでいいよね」
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