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王都篇

聖魔女

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「サーシャ、ステータスを読めないのだけど、鑑定を阻害する方法を習ったのかしら」

「いいえ、何もしておりませんわ。ただ、少し悪寒がしましたわ」

「え? 鑑定を持っている人が鑑定されるときに悪寒を感じるけど、サーシャは鑑定スキルは持っていないわよね」

「はい、お姉様」

「ひょっとして……。ちょっと憑依してもいいかしら。あなたは聖女だから、一瞬しか憑依できないけど、ステータスを見るぐらいはできると思うの」

「はい、お姉様」

 クレアはサーシャに憑依して、すぐに弾き飛ばされた。

「これは、相当キツイわね。何回かトライさせてね」

「はい、お姉様」

 クレアは何度も憑依しては弾かれ、少しずつサーシャのステータスを確認した。

「霊視、鑑定、偽装、その他ビースト系のスキルが並んでいるわ。レベルは4318ね。ステータスが見られなくなったのは、『偽装』のスキルね。悪魔が持っているスキルだけど、人間も取得できるスキルよ」

「おじ様から頂いたとしか思えませんが、こんなことができますの? しかも、ビーストのスキルまで頂きましたわ」

「『授与』のスキルだわ、きっと。ただ、アンデッドが『偽装』を得るのは至難の業なの。私も持ってないわ。アンデッドに悪魔は殺せないのよ。聖属性の魔法じゃないと浄化出来ないから、聖属性の仲間と組まないと無理よ。例えば、私とあなたのようにね」

「きっと、シスターアネモネですわ」

「そのシスターは聖魔女かもね。悪魔を浄化してレベルを上げて、スキルを取らせるのは、聖魔女の使徒を育てるやり方だから。ただ、それでも悪魔を浄化するのは難しいのよ。奴らはすぐに逃げるから。そんなレアなスキルを与えるなんて、信じられないわ」

「おじ様、そんな大切なスキルを私に……」

 聖魔女は死霊系と神聖系の両方の魔法を行使でき、男性であれば、人間もアンデッドも魅了して使役する最強の魔女だ。三百年前に出現し、姿形を変えては、世界を裏から支配して来た。

 今から四十年前、クレアが人間で王妃だったときに聖魔女が現れ、夫を魅了され、息子の王太子も魅了され、国を聖魔女に乗っ取られた。

 聖女でもあったクレアは、聖魔女から魅了されない強力な力を持つ女性を集めて、聖魔女と彼女の使徒と壮絶な争いを繰り広げ、何とか勝利した。だが、クレアの夫と息子はもはや元には戻らず、クレアは失意のまま人生を終えた。

 クレアは無念のまま死亡したことで、アンデッドとして蘇った。聖魔女には、転生のスキルがあり、今は三十代半ばのはずだ。四十年前に魅了された王太子が今は国王をしている。

 クレアは、転生した聖魔女に彼女の孫である現在の王太子が魅了されないように注意しながら、聖魔女を倒すための強い女性を探している。

 だが、数ヶ月前に聖魔女に裏をかかれ、法皇が魅了されてしまい、クレアは法皇が育てたミントの聖女から攻撃を受け、浄化寸前まで追い詰められ、ギリギリ逃げ出した。

 クレアの25万あったレベルが1になってしまい、ダンジョンのホームで復活したときに、クレアはおじ様と初めて出会ったのだ。

 以上がこの数ヶ月の間にサーシャがクレアから聞いた話だった。

「シスターアネモネが聖魔女……」
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