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ダンジョン篇

イリュージョン

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 あれから二日でさらに五人倒して、一人救った。

 レベルは103まで上がったが、魔法とスキルは増えなかった。

 救ったのは、またしても、十二、三歳の女の子だ。サーシャという色白で、人形のように可愛らしい女の子だった。アリサが話し相手が出来たと喜んでいた。

(十二、三歳の可愛い女の子を要求している変態オヤジでもいるのか?)

 大人の冒険者の女はがっかり顔が多いが、子供の冒険者は割と可愛いのが多いと思うのは気のせいだろうか。

 後で分かるのだが、気のせいではなく、美人は奴隷としての価値が高いので、十歳のときには奉公などには出されず、可愛いのは、全部冒険者にされるらしい。そして、十五歳になったときに、美人から順番に高値で奴隷として売れて行く。売れ残ったのが冒険者という訳だ。

 どの世の中も、美人というのは、本人にとって、いいのか悪いのか微妙だ。

 今日はリズと会う日だ。地下二階で落ち合うことになっているが、なかなか来ない。

 だんだんと心配になって来た。索敵にもリズらしい人間は引っかからない。

(おかしいな。どうしたのだろう)

 結局、リズは約束した日に現れなかった。

 孤児院で何かされたのか、奴隷として売られてしまったのか、などと悪いことばかり考えてしまう。

(どうする? アリサとサーシャに地上での調査を頼むか? いや、彼女たちはさらわれたことにしておかないとまずい。そうだっ、赤い首飾りの冒険者を捕まえて、情報を聞き出そう!)

 ところが、二日間探しても、赤い首飾りの冒険者は一人も見つからなかった。

(こういうときに限って、見つからないんだよな。くそう、どうすればいい?)

 だが、今日になって、何と、リズが冒険者二人に連れられて、地下三階まで下りて来たのである。

(いやあ、心配したぜ。リズが元気そうで何よりだが、あの冒険者たちは、今までとは少し違うな)

 一人がレベル98でスキルは刀技で、見た目は侍、もう一人はレベル100でスキルは忍術で、見た目は忍者だ。赤い首飾りはつけていない。孤児院付きの冒険者ではないようだ。

 まずはリズをあの二人から離したい。果たして奴らにイリュージョンは効くのだろうか。リズは霊感スキルで、すでに俺に気づいているようだ。

 俺は人間の女の姿で三人に瞬時に近づき、侍の胸に剣を刺そうとしたら、刀ではじかれ、距離を取られた。忍者もサイドステップした。二人から解放されたリズは走り出して、戦闘の邪魔にならないところまで移動して伏せた。

「女、いきなり何をする!」

 侍が叫んだ。

(イリュージョンは効いてるようだ)

 忍者が何かを投げてきた。腕の辺りに何かが数本当たり、地面に落ちた。クナイのようだ。

 忍者は地面に落ちたクナイを見て驚いている。

 俺は驚いている忍者まで瞬時に間合いを詰め、剣を忍者の右手辺りに突き出した。剣道の小手狙いだが、忍者はバックラーのようなものでガードした。

 俺は連続して忍者に向かって、フィア、フレア、デス、チャームをまとめて放った。忍者は半身を捻って、魔法を全て避けた。

(やるな、こいつら)

 忍者が刀で俺の右腕を斬り捨てた。右腕の骨がとんでいくが、イリュージョンの魔法で女の姿はそのままだ。俺はステップバックして間合いをとった。

 忍者は俺の体がどうなっているのか、一生懸命考えているに違いない。

 俺はふと閃いた。イリュージョンの位置をもっと前にしてみた。侍と忍者の視線は俺ではなく、イリュージョンの女の方を捉えている。

 俺はアンデッドであるため、呼吸もしないし、気配もしない。彼らは視覚に頼るしかないため、よく見えるイリュージョンの方を見てしまうのだろう。

 俺はイリュージョンを彼らの後ろまで移動させた。侍も忍者も反転して、イリュージョンに対して攻撃を開始している。

 俺は侍の背中まで移動して、デスを直接背中に放った。侍が糸が切れたようにがくりと膝をつき、前のめりに倒れた。

『レベルが110になりました。刀技のスキルを覚えました』

 同じように忍者の背中に密着してデスを放った。忍者がゆっくりと倒れて行く。

『レベルが115になりました。デュアルの魔法を覚えました。忍術のスキルを覚えました』

  名前:ボーン
  種族:スケルトンナイト レベル115
  魔法:マップ、フィア、フレア、デス、
     チャーム、イリュージョン、デュアル
  技能スキル:無痛、復活、剣技、拳闘、鑑定、
     迷彩、跳躍、俊足、無音、索敵、
     集音、投擲、解錠、裁縫、刀技、
     忍術
  経過日数:45

(ふう、勝てた。アンデッドだとバレてなかったから助かった。俺って普通じゃ倒せないんじゃないかな)

 一分が経過したようで、右腕が戻って来た。リズが俺の本体の方に向かって走って来た。
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