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第2話 嗅ぎ慣れない新しい家

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モイティ…もとい、ロバが来た日から妹の我儘は良い方に加速している。

そう、あの日から実質的な大黒柱が関白という訳でもないが凄く働き者という訳でもない父から、ロバと妹がその立場をかっ攫ったのである。

父も母も僕でさえも、一晩にして
妹とロバに頭が上がらなくなったのだ。
なんと言っても本物の金なのだから。

いきなり金が手に入ったからと言って妹は直ぐに贅沢する事を選んだわけでもなく、堅実に衣食住を整えていった。

…どこで学んだんだこいつ。

瞬く間に風呂なしトイレ無しの5畳半あって良い方位の狭さのアパートからマルっと本当に”のび太くんの家”みたいな立派な一軒家を真っ先に手に入れてみせたのだ。

ドヤ顔のロバ・モイティと、涼しい真顔の妹。
ローン無しの一軒家という資産に感動する両親。

いまいち現実になれない僕。
念の為に妹に訊ねる。

「金を何処で交換してもらったんだ?」

『わらしべ長者です。』

またロバの金で
物々交換をして、この家を手にしたらしい。
もういい、兄としてのプライドあれど次からちゃんと妹について行ってその交渉術やどんな人間と関わっているかをちゃんと見よう。

それはそうとして妹から家族に対して、
このような提案が発令された。

『私は商業の専門学校へ行く。』

『でも、お兄ちゃんは
   もっと好きに生きるといい。
   学びを得るなら厳しくも私立高校だ。
   あの子もいつまで金を産むかわからんから、
   我儘を言えるうちに言って、
   モイティに謝れるうちに謝れ。』
 
神のように祀られだすロバ・モイティ。
勅令でも言うかのように真っ直ぐ凛とした妹。
こんな妹僕は初めてみた。

僕と両親が知らなかっただけで妹はこんなにもしっかりしていたのかと関心すらしてしまう。

でも、僕にだって青春を謳歌する
権利があるだろうとは思っていた!
両手と頭を地面につけてロバ・モイティと妹に僕はのたまった。

「ありがとうございます!!
昨晩の態度申し訳ございませんでした!!!」

これで僕の憧れていた青春が手に入るのであれば
今までの僕の苦労が報われると言ったものだ。
むっさい入りたくて入った訳でもないFランクから脱却するべく、僕は死に物狂いの猛勉強をした。

勉強している途中でたまたま古い和英辞典なものだからこのページに止まった。

moiety《モイティ》
1.名詞
2.半分
3.部分、一部
〔文化人類学の〕半族◆社会生活のさまざまな部分が二つの補い合う集団に分かれているときの一方の集団。

妹はまだ13歳だ。
まさかなと思いながら、
僕は恋するなり、スポーツはからっきしだから、茶道とか書道とかに青春を捧げて青春を元女子校私立浪漫巣《ろうまんす》学園転校する為に勉学に励んだ。

                      ─面接当日─

顔も声もスネイプ先生みたいな
コワモテな先生が僕に訊ねる。

「君は何故、我が校を選んだんだね?」

『文芸部に入り僕の青春を
   貴校で送りたいと思っております!』



                      ─合格通知─

「ッー!!!!よっしゃあああ!!」

この後、僕がこの学園に入学した事に
後悔することになる事を
…当時の僕はまだ知らない。

天井あまい 杉它すぎた

下調べの詰めが甘い。
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