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2章:セントフィリアの冒険

17話.フェルミナの冒険③:フェルミとリア 前編

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「なかなかね。これが、貴方の力を最も引き出せる最強の装備よ!」

リア・エリーゼ・ヴァイロンが言う。

な、なんでこんなことに……

可愛さのかけらもない男物のカブト、謎に肩がはみ出した鎧。切先から鍔にかけてどんどん太るくなっていくダサい刀。

鏡で自分の姿を見る。
全体的にカッコ悪いわ。

確かにこの鎧は硬いし軽い。
それに、剣は耐久力と破壊力申し分無さそう。
機能美だけ考えたらそこそこいい装備なのかもしれない。それはわかる。
わかるんだけども!

けど、これが、怪鳥王フェルミナの姿かと思うと、なんだか情けなくなってくるわ。

「ごめんなさい。もうあなたとはこないわ」




時は少し前に戻る。


「フェルさん、合格よ。むしろこっちが頼み込んで仲間に加わって欲しいくらい」
気絶から目覚めたリアは私を快く迎えてくれた。

初めきた時は、強さの資格が必要だと言われ焦ったものだが、これでクラーケン討伐に参戦できる。

同じ医務室では大男3人組がうーん、うーんとかなり苦しそうにうなされていた。

少しやりすぎたかしら。まぁどうでもいいことね。

「俺も合格には大賛成だが、その前にフェルミさん、あんた何者なんだい?あの動き、そんじょそこらで身につけられるものとは思えねぇ。かといってフェルミなんて名前聞いたこともねぇし」

ギルドマスター、カジットが言う。
そういえば、模擬戦前に素性が聞きたいって言われてたわね。

リアとの戦いは結構楽しかったし、熱中して忘れてたわ。

私は旅人でたまたまこの街を訪れた時、クラーケン襲来を知り何かできることがあるなら協力したいと思って来た、と言う嘘の作り話を彼らに話した。

ギルドマスターはそれでは納得してないみたいだったが、リアは

「いいんじゃない?冒険者だって素性関係なくなれる職業だし、フェルさんの話が嘘でも本当でも変わらないわ」
と言って、彼を説得してくれた。

リアには本当に感謝だ。


「ところで、フェルミさんの装備だけど」
「ええ、そうね」
「?」
ギルドマスターとリアの2人は顔を見合わせて言った。

「「よくない」」

「え、そ、そうかしら!?オシャレでカワイイと思うのだけど」

私は装備に手を当てて言う。
「オシャレ基準で防具選ばないで!!」
リアがいった。

え?そんなに変なことしたかしら?

防具なんて、私にとっては動きづらくなるだけで、
なくてもあまり変わらないんだけど。

「確かに見た目はいいかもしれないけど、鎧はかなり薄っぺらいし、防御力低いわよ、それ。それじゃシャツ来てるのとあまり変わらないわ」

「それと、その剣なんだが、耐久性に問題がありそうに見えるぞ。よく切れそうだし、対人戦や雑魚魔物相手じゃ有効かもしれないが、クラーケンと戦うには少し不向きかもしれん」
リアの言葉に、カジットも賛同する。

え、この装備よくないの?
まぁ、確かに冒険者っぽい格好は正体がバレないためのカモフラージュだし、可愛さで選んじゃったけど、よく考えたらメインの武器はこの剣になるのよね。

本来の戦い方は正体を隠すことを考えたらすべきではない。

鎧はともかく、剣が折れやすいのは少しまずいかも。

「金はギルドで出すから、新しいの買って来たらどうだ。リア、お前もついていってやれ」
「しょうがないですね。私がかわいくて、機能美にも優れた一品を選んであげますか」
えっへんと得意げにリアが言う。

「あ~、お前はお前でそういうのには問題あるからなぁー。機能にこだわるのもいいがくれぐれも、最低限、普通のやつを買ってあげるんだぞ」

「?」
この時は、なぜギルドマスターがそう言う言い方をしたのか分からなかった。

「分かってますって。フェルさんに合いそうな装備は戦った私が1番いいのを選べると思うし、大船に乗ったつもりで期待してて。フェルさん、貴方のとっても強い力をもっともっと強くしてあげる」



そうして、武器屋にきてこの有様だった。

カジットさん、こうなること分かってそうだったけど、なんでこの子をお供に選んだわけ!?

結局武装は店主に見繕ってもらい、
私の防具は可愛くはないけれど、普通の見た目で、機能面でもまぁまぁいい程度のものに落ち着いたのだった。

「え~、私の選んだ奴の方が絶対つよいのにぃ」
とリアはぼやいていたが、あの格好は絶対却下よ。生理的に受け付けないわ。

それにしても。

装備を買い終わり、街を見渡す。

街の今いるこの区画だけは、人通りも多く営業している店も多い

この街は私たち魔獣四王の影響で、活気が失われてしまってたと思っていたけど、こんな形で賑わっていたなんて。

リアに話を聞くと、なんでも領主の息子が店に一軒一軒頭を下げて回り、ここで祭りを開こうとしてるんだとか。

私が防具を買った店も一度は閉店したそうだが、その経緯があって店を再開し、祭りに向けて準備を手伝っているらしい。

その領主の跡取りはまだ子供らしいけど、大したものだ。

この街はきっと復活するのだろう。商人達の顔を見てればわかる。
こうして、人々が頑張っているのなら、俄然クラーケン討伐にやる気が出るというものだ。

そんな気持ちになる私は魔獣モンスターとしてはおかしいのだろうが。

その時、ふとどこか遠くから声が聞こえてきた。
裏路地からかしら?

「おい、どうだった?息子様との商談は?」
「ダメだった。取りつく島もねぇ。俺たちの計画に勘づいたのかどうか分からないが、今のやり方じゃ無理だと思ったぜ」
「じゃあ、プランBで真っ向から行こう」


私は多少聴力がいいから、聞こえてきたのだが、何やら不穏な雰囲気の会話だった。

街は少しずつ活気を取り戻してるみたいだけど、治安は悪いのね。

もう少し盗み聞きして、何か犯罪めいた内容の計画なら潰しておいてあげようかしら。

そう思った時、リアが会計を終えて武器屋から出てきた。

「次はカフェでお茶でもどうかしら?フェルさん」
リアが誘ってくれた。
ま、私には関係ないわよね。それよりカフェの方が楽しそう。

「いいわね。あと、フェルって呼び捨てでいいわよ。多分私、あなたより年下だし」
「え!?うそでしょ。何歳なの!?」
「何歳だと思う?」

私たちはその男たちの不穏な会話を無視した。

リアとは思ったより気が合い、会話も弾んでいたので、その男達が、なんの悪事を企てていようが、そんな些事はどうでもいいことだった。

そして、そのままカフェで、お茶を美味しく頂いた。

その時にはすでにあの怪しげな男たちのことを忘れていたが、とは、私はこの時考えもしなかったのだ。







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