136 / 172
続
136 迷子のジジィ
しおりを挟む
「ん?迷子のジジィ?」
先にジークの思考が再起動した。
「今、そう言ったわね。」
アリスの思考も再起動した。
「そうじゃ!ワシは、迷子のジジィじゃ!」
目の前のジジィは、地面に座り込んだ状態で、そう叫んだ。
ルカに剣を向けられて、腰が抜けただけなのかもしれない。
「何故、迷子になったのですか?」
ルカが剣を鞘に戻しながら、ジジィに尋ねる。
「それはじゃな・・・・。」
途端に、ジジィは素早く立ち上がり、
「ちょっと、待っていてくれーーー。」
叫びながら、茂みの中に駆け込んでいった。
アリス達は、ジジィの後ろ姿を茫然と見守る。
「どうしたんだ?」
「さぁ?」
ジークとアリスは、顔を見合わす。
しばらく、ジジィを待っていると
「あぁーーーーーー・・・・・。」
ジジィの声が聞こえてきた。
「あっ、ジジィの声だわ。」
「そうだな。どうしたんだろう?」
すると、ガサガサと草木を掻き分けながら、ジジィが先ほどよりもげっそりとやつれ、ふらつきながら戻って来た。
「大丈夫ですか?」
「まったく大丈夫じゃないよ。」
ジジィが、地面に座り込む
そして、ぽつりぽつりと話し出した。
「ワシは、山菜を採りに山に入ったんじゃが、ビッグボアと遭遇してしまったんじゃ。ワシは、慌てて逃げたんじゃが、あまりの恐怖に、無我夢中で走っておったもんじゃから、周囲を良くみておらんかったんじゃ。傾斜に気づかず足を滑らせて、転げ落ちてしまっての。まぁ、そのおかげでビッグボアに襲われずにすんだんじゃが・・・。」
ふぅー。とジジィがため息をついた。
「それから、家に帰ろうと思ったんじゃが、夢中で走っていたせいで帰り道が分からなくなってしもうて、山の中を彷徨っておったんじゃ。食べ物を持っておらんかったので、腹が減って仕方がなくて、思わず木の実を食べてしまったんじゃが、そのせいで腹を下してしもうての。下痢が止まらんのじゃ。」
なるほど、だからボロボロの姿でげっそりとやつれているのね。
ジークを見るとなぜか、ポロポロと涙を流している。
今の話で、そこまで泣くところがあったかしら?
「ジジィ、辛かったねー。」
ジークが跪き、ジジィの手を取り、握りしめている。
「ありがとうよ。」
「ジークハルト様、なんとお優しい。さすが、我が主。」
ルカが感動に震えている。
「ジジィ。一緒に山を下りましょう。」
ジークが立ち上がり、ジジィの手を引き立ち上がらせる。
「ここから、すぐに山を出られますよ。」
ジークは、ジジィの手を引きながら歩き出す。
馬を繋いだ場所までたどり着くと、ジークは自分の荷物から靴を取り出した。
「ジジィ、俺の靴を履くといい。」
ジークは、予備の靴を持ってきていたようだ。
「遠慮しなくていい。」
ジークは、ジジィの足元に靴を置いた。
「ありがとうよ。」
ジジィは、そう言って靴を履いた。
そして、またジークは荷物の中からお菓子をいくつか取り出した。
「ルカ、すまないがお湯を沸かしてくれないか?」
「すぐに、準備いたします。」
ルカは、荷物から水筒とヤカンを取り出した。
レインは、小枝を集めて火を熾している。
お湯が沸くと、ルカがお茶を淹れた。
「さぁ、ジジィ。お菓子を食べるといい。」
ジークがお菓子とお茶をすすめる。
ジジィが、パウンドケーキを一口食べた。
「うぅ、美味い・・・・。」
ジジィは、そういうとパウンドケーキをあっという間に食べ終えた。
「ジジィ、そんなに慌てて食べなくてもいいよ。まだ、お菓子はあるから。」
ジークはクスリと笑うと、マドレーヌとフィナンシェを渡す。
「こんなに、美味いお菓子は生まれて初めて食べたよ。」
お茶を飲み干すと、マドレーヌを食べる。
「ジジィ、後で、この薬を飲んでね。」
アリスは、腹下しの薬を渡した。
長旅になるので、薬を用意していたのが役に立ったようだ。
「おぉ、ありがたい。」
ジジィは、薬を飲んだ。
「食べ物の辛さは、俺が一番よく分かるよ。」
ジークは、ポツリと呟いた。
ちょっと違うと思う。
アリスは、そう思ったが、口には出さなかった。
先にジークの思考が再起動した。
「今、そう言ったわね。」
アリスの思考も再起動した。
「そうじゃ!ワシは、迷子のジジィじゃ!」
目の前のジジィは、地面に座り込んだ状態で、そう叫んだ。
ルカに剣を向けられて、腰が抜けただけなのかもしれない。
「何故、迷子になったのですか?」
ルカが剣を鞘に戻しながら、ジジィに尋ねる。
「それはじゃな・・・・。」
途端に、ジジィは素早く立ち上がり、
「ちょっと、待っていてくれーーー。」
叫びながら、茂みの中に駆け込んでいった。
アリス達は、ジジィの後ろ姿を茫然と見守る。
「どうしたんだ?」
「さぁ?」
ジークとアリスは、顔を見合わす。
しばらく、ジジィを待っていると
「あぁーーーーーー・・・・・。」
ジジィの声が聞こえてきた。
「あっ、ジジィの声だわ。」
「そうだな。どうしたんだろう?」
すると、ガサガサと草木を掻き分けながら、ジジィが先ほどよりもげっそりとやつれ、ふらつきながら戻って来た。
「大丈夫ですか?」
「まったく大丈夫じゃないよ。」
ジジィが、地面に座り込む
そして、ぽつりぽつりと話し出した。
「ワシは、山菜を採りに山に入ったんじゃが、ビッグボアと遭遇してしまったんじゃ。ワシは、慌てて逃げたんじゃが、あまりの恐怖に、無我夢中で走っておったもんじゃから、周囲を良くみておらんかったんじゃ。傾斜に気づかず足を滑らせて、転げ落ちてしまっての。まぁ、そのおかげでビッグボアに襲われずにすんだんじゃが・・・。」
ふぅー。とジジィがため息をついた。
「それから、家に帰ろうと思ったんじゃが、夢中で走っていたせいで帰り道が分からなくなってしもうて、山の中を彷徨っておったんじゃ。食べ物を持っておらんかったので、腹が減って仕方がなくて、思わず木の実を食べてしまったんじゃが、そのせいで腹を下してしもうての。下痢が止まらんのじゃ。」
なるほど、だからボロボロの姿でげっそりとやつれているのね。
ジークを見るとなぜか、ポロポロと涙を流している。
今の話で、そこまで泣くところがあったかしら?
「ジジィ、辛かったねー。」
ジークが跪き、ジジィの手を取り、握りしめている。
「ありがとうよ。」
「ジークハルト様、なんとお優しい。さすが、我が主。」
ルカが感動に震えている。
「ジジィ。一緒に山を下りましょう。」
ジークが立ち上がり、ジジィの手を引き立ち上がらせる。
「ここから、すぐに山を出られますよ。」
ジークは、ジジィの手を引きながら歩き出す。
馬を繋いだ場所までたどり着くと、ジークは自分の荷物から靴を取り出した。
「ジジィ、俺の靴を履くといい。」
ジークは、予備の靴を持ってきていたようだ。
「遠慮しなくていい。」
ジークは、ジジィの足元に靴を置いた。
「ありがとうよ。」
ジジィは、そう言って靴を履いた。
そして、またジークは荷物の中からお菓子をいくつか取り出した。
「ルカ、すまないがお湯を沸かしてくれないか?」
「すぐに、準備いたします。」
ルカは、荷物から水筒とヤカンを取り出した。
レインは、小枝を集めて火を熾している。
お湯が沸くと、ルカがお茶を淹れた。
「さぁ、ジジィ。お菓子を食べるといい。」
ジークがお菓子とお茶をすすめる。
ジジィが、パウンドケーキを一口食べた。
「うぅ、美味い・・・・。」
ジジィは、そういうとパウンドケーキをあっという間に食べ終えた。
「ジジィ、そんなに慌てて食べなくてもいいよ。まだ、お菓子はあるから。」
ジークはクスリと笑うと、マドレーヌとフィナンシェを渡す。
「こんなに、美味いお菓子は生まれて初めて食べたよ。」
お茶を飲み干すと、マドレーヌを食べる。
「ジジィ、後で、この薬を飲んでね。」
アリスは、腹下しの薬を渡した。
長旅になるので、薬を用意していたのが役に立ったようだ。
「おぉ、ありがたい。」
ジジィは、薬を飲んだ。
「食べ物の辛さは、俺が一番よく分かるよ。」
ジークは、ポツリと呟いた。
ちょっと違うと思う。
アリスは、そう思ったが、口には出さなかった。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
木こり無双~愛する者のためならば、勇者も神も切り倒す!~
にゃーにゃ
ファンタジー
主人公ケネスの義理の妹、ソフィが勇者パーティーから追放される。追放の現場を目にした主人公は、ソフィの名誉を守るため勇者と木剣での決闘を引き受け、みごと果し合いに正々堂々勝利する。
決闘に勝利した主人公。だが、勇者が敗北をすることは許されない。勇者を選定し庇護する組織、『教会』は主人公を卑劣な手段で勇者を暴行した大罪人として、極刑を告げる。
主人公は義理の妹であるソフィにも危険が及ぶ可能性を危惧し、主人公は自ら王都を去ろうとする。その去りゆく主人公の背中を見たソフィは、主人公とともに王都を離れる決意をする。
父が連れてきた連れ子ソフィ。彼女が肌身見放さず持っていた『翡翠のブローチ』を手がかりに故郷を探す旅を始める。
旅の道中に『教会』が雇った暗殺者や、ソフィを奪い返そうとする勇者を倒しながら、出自の謎をたどる旅を続けるのであった。
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー
ジミー凌我
ファンタジー
日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。
仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。
そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。
そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。
忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。
生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。
ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。
この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。
冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。
なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。
天使の住まう都から
星ノ雫
ファンタジー
夜勤帰りの朝、いじめで川に落とされた女子中学生を助けるも代わりに命を落としてしまったおっさんが異世界で第二の人生を歩む物語です。高見沢 慶太は異世界へ転生させてもらえる代わりに、女神様から異世界でもとある少女を一人助けて欲しいと頼まれてしまいます。それを了承し転生した場所は、魔王侵攻を阻む天使が興した国の都でした。慶太はその都で冒険者として生きていく事になるのですが、果たして少女と出会う事ができるのでしょうか。初めての小説です。よろしければ読んでみてください。この作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも掲載しています。
※第12回ネット小説大賞(ネトコン12)の一次選考を通過しました!
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる