姉の様子が、おかしいです。

98 普通じゃない

カトリナがアリスに拳を振り上げて、襲い掛かってきた。

ジークは咄嗟に、アリスのスカートを捲って、左の太もも(不〇子ちゃんスタイル帯剣）にある短剣を抜いた。

そして、すばやくアリスをジークの背後に隠す。

振り降ろされた拳を剣で受けて流す。

振り降ろされた拳は重い。

女性の腕力では考えられない。

「なんだ？この女。」

普通じゃない。ジークの眉間に皺がよる。

女の背後から、監視をしていたレインが走ってくるのが見える。

「アリス様、ジークハルト様。ご無事ですか？」

レインがとても焦った表情だ。

「大丈夫よ。」

アリスがジークの背後から、顔を出す。

「この女、前に会った時と随分、変わった様子なんだが・・・。」

ジークが訝しがる。

「この者の監視をしていたのですが、先ほど、黒い靄のようなものが
この者の身体に吸い込まれていったのです。その後に、このような状態になって
しまいました。」

レインが先ほど、目にした光景を説明する。

「えっ、なに？悪霊とか悪魔とか、そういったものに憑りつかれたってこと？」

何それ！コワッ！

カトリナの攻撃は止まらない。

ジークが拳を躱す。

レインは、アリスを背後に庇う。

ジークは、カトリナを攻撃するべきか迷っている。

それも見透かしているかのように

カトリナは、攻撃を緩めない。


「オヤオヤ、ドウシマシタ？コウゲキヲ　シナイノデスカ？」

クックックッ・・・。

むしろ、面白がっている。


ジークの額に汗が滲む。


「モウ、アナタニハ　アキテシマイマシタ。」


カトリナの爪が突然、長く伸び鋭い刃のように変形した。

そして、ジークの脇腹に刺した。

刺された脇腹から、血が噴き出す。

「ぐぅぅ・・・。」

ジークが呻き、地面に倒れる。

カトリナは爪についたジークの血を振り払う。


「ジーークゥーーーー！！！」

アリスとレインは、ジークへ駆け寄る。


「サテ　ツギハ　オジョウサン　ノ　バンデスヨ。」


レインがアリスの前に立ちふさがる。

すばやく、上着の内側から隠しナイフを取り出す。

そして、身を屈めてカトリナに飛び掛かる

カトリナは、「アブナイ、アブナイ。」と余裕で笑いながら躱す。

完全に、遊ばれている。

レインは、追撃をやめない。

アリスは、ジークの頭を膝にのせ、ハンカチで脇腹を抑える。

ハンカチがすぐに真っ赤に染まった。

従者が医務室へと走って行ったが、時間がかかるだろう。

周りのいた生徒達は、いつのまにかいなくなっている。

避難したのだろうか。

騎士団を呼んでくれているはずだ。

騎士団がくるまで、レインが持ちこたえるだろうか？



カシャーン。



レインのナイフが遠くへ飛んだ・・・。