異世界転生少女奮闘記

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第5章「新人傭兵」

第58話「別れ」

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 このギルドは人気であり、加入希望者は毎年絶えない。しかし実際加入出来るのはごくわずか。大きな夢を見ることは誰でもできるが、実際それを成し遂げるのは別れや挫折を要求される。

 決して珍しい事ではない。残酷な現実である。




「だから!俺等はもうついてけねえんだよ!!」
「そんなことない。」

 やけにテントが騒がしいため起きてしまう。朝から修羅場らしい。

「私達、ユウシャとは違うのよ!一般人なの!」
「御免なさい…。」
「だから、君たちは別に最下位とは決まってないし、この一ヶ月耐えられてたじゃないか。」
「耐えられてねえからこうして、、ここを出てこうと決めてんじゃねえか!」
「センシ。ユウシャは昔からこうだったわよ。私達みたいな平凡な人の気持ちなんて分かりっこないわ。」

 …え?センシ君含め三人辞めちゃうってこと?

「っ俺についてくればどうにかするよ。殆どがチーム戦だから、俺が頑張って上位を取れるようサポートする。」

「あのな。この際言うけど、お前。俺達のことどう思ってた?ただの保護対象だと思ってるだろ。」
「?」
「私達、毎日悔しいのよ。ユウシャが悪い人じゃないことは分かってるわ。だからこそ、私達は対等な立ち位置で戦っていきたかったの。」
「昔みてえにあんたに付いていくだけなのは嫌だ。だから、此処に留まるのは辞めようと俺達決めたんだ。」
「……じゃあどこに行くの?俺がいないと何もできないのに。」

 あちゃー。ついに本性表しやがったか。

「ねえ。アス。君もそう思うだろ?」
 巻き込まないでぇ…。

 つい屑な考えをしてしまう。まあ許してくれ。こんな会話に途中で割り込めるほど精神は図太くないんだ私は。

「アス。今までありがとうね。」
「覚悟は決まってんだ。これ以上何を言われてもっ。」
「意味ないんだろ?わかるよそれくらい。君たちの真剣な目を見ればね。ユウシャ君もいい加減にしたら?彼らはいい子についてく人形じゃない。意志を持った生き物だ。本人たちの意思を尊重したらどうなの?」
「君に何が分かる。」
「逆に聞くけど君の方こそ彼らの事の何が分かるというのさ。どんなに同郷出身で、昔からの付き合いがあったとしても、すべてが分かるわけじゃない。あくまでも僕たちは他人だよ。」

 ようやく上半身を起こして立ち上がり、湯を沸かし始めた。

「今日限りでやめるの?」
「ああ。」
「そっか。今までありがとう。楽しかった。」

 彼らに向き合い挨拶を交わす。
マホウツカイちゃんもソウリョちゃんも涙目。センシ君は下を向いてしまい表情は見えない。


「私たちの方こそお礼を言いたいわ。アスがいてくれたおかげでここまでついてこられた。それと同時に現実も見ることになっちゃったけどね。」
「・・・アス、今だから正直に言う。私、最初は貴方の事あまり信用してなかった。弱かったし。でもこの一か月で驚異的な成長スピード。私驚いた。本気で強くなろうと努力して、凡人の私たちではとても真似できない。」

 ようやく顔を上げたセンシ君の顔が晴れ晴れしている。

「多分騎士団もこのギルドでも、活躍するのはユウシャやお前みてえな奴らだと分かった。そんな真顔で聞くなよ。俺たちはただ向いてなかった。それだけだ。」


 長い間見ていた夢から目覚めたということだろうか。
 異なる世界に生まれ変わったため忘れていたが、ここはただ少し魔法や怪物がいるだけで、現実世界・・・・なのだ。
 ユウシャのように常に人の注目の的になり活躍を見せる人もいれば、ただ生きて死ぬ人もいるのだ。大きな夢を見るが、それを叶えることができる者はそれこそ選ばれし人だ。

 ユウシャ君の正義スマイルがみるみる歪んでいく。
 そして言葉を吐き出した。
 
「・・・行けば?どこでも。正直君たち足手まといだったし。俺がいないと何もできない馬鹿どもだからな。」
「んな言い方っ!!」
「ユウシャ!あんたね言わせておけばっ。」
「センシ、マホウツカイ、行くよ。話すだけ無駄。」


 結局最悪な別れ方をして出ていってしまった。

「あんな言い方しちゃってさ。素直じゃないねぇユウシャ君。」
「・・・。」
「罪悪感を感じてほしくなかったんでしょ。あの三人に。多分根っからのいい子たちだから。罪悪感で落ち込まれられるより、失望して恨まれる方がましって感じ?」
「・・・っだったら、俺はよほど善人なんだな。そんなわけないだろう。ちょうどいい機会だからいっておくが、、、俺は君が気に入らない。君が俺よりも優れる未来が来ることは絶対にありえない。最終試験能の時、不慮の事故・・・・・で相手を殺してしまっても許されるらしい。注意してね。」


 そういい捨てるとユウシャ君はテントから出ていってしまった。

「ほんっとにいい子だなぁ、あの三人も、ユウシャ君も。そんなルール黙ったままの方が殺せる可能性あったというのに。馬鹿正直に言っちゃうんだもん。」

 つい出てしまったボヤキを聞いて突っ込みをしてくれる人達はもういない。
 一気に寂しくなったテント内がいたたまれなくなり、私も支度を手早く済ませいつもより早くその場を後にした。


    
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