上 下
23 / 27

ラクリア国・王城にて

しおりを挟む

「…今日は良い天気だね。そう思わないかい?レグニス」

執務の手を止め、そう穏やかにエリーゼの父・レグニスに問い掛けたのはラクリア国の王、アディル・ラクリアである。

「…確かに今日は良い天気ですが…俺は、そんな話をしにここに来たわけじゃないのだが?」

「ははっ、そんなに不機嫌そうにするな。ほら敬語、取れてるぞ。まぁ今はお前と俺しかいないから構わないけどな」


「…陛下…!俺の可愛い可愛いエリーゼの所にグレン王子を向かわせたそうですね?…どういう事か説明して貰いましょうか…!」

ゴオォオオとレグニスの背後に炎が昇る。
その顔は全く笑っていない。

「…事後報告になって悪かったとは思っている。…レグニス、俺のユニークスキルは知っているよな?もちろん、秘匿されている方の、だ」

「…あぁ。未来予知、でしたね…って、まさか…」

「__そのまさか、だ」



アディル国王には公言されているスキルの他に、もう一つ、秘匿されているユニークスキル、未来予知を持っていた。

そしてそのスキル、未来予知の存在は国家機密の一つとなっている。



「その予知の内容だが、“近い未来、伝承に残る災害級モンスターの再来”だ。それがどこで起きるとまでは分からなかったが、その被害は…この国にも及ぶ程だ」

「…は?」

「まぁそうなるよな。…予知は予知であって絶対ではない。__けれど、俺の未来予知が高い確率で当たるのも知っているだろう?」

「…そうですね」


あまりにも壮大な事象にレグニスは肯定する事しか出来なかった。

けれど実際、アディル陛下は幾度となく、この国をその未来予知で救って来たという実績がある。


「そこで、だ。グレンにのみこの事を話し、エリーゼ嬢と共にその調査に当たって貰う事にした。まぁ、いわゆる極秘任務だな」

「確かに…冒険者としてなら、集められる情報も多いでしょうし。だから、エリーゼにマジックバッグをあげたのですね、」

「あぁ、そうだ。国としても情報は集めているが情報は多いに越した事はない。…それとグレンをエリーゼ嬢に向かわせたのにはもう一つ、理由があってな、」


「…もう一つ、ですか?」

「…幼少の頃からエリーゼ嬢に好意を寄せているのはレグニス、お前も知っているだろう?」

「…それは、あれ程、エリーゼにだけ素を見せて心を許しているのを見たら…エリーゼが冒険者になったのを知って、グレン王子も冒険者になっていた様ですし。
まぁ…エリーゼが婚約してからは話す機会自体、減った様でしたがね」


「…いやー、エリーゼ嬢が婚約したと知った時からグレンが被る、王子としての仮面は更に厚くなっていったな。
__しかし、今回、良くも悪くもエリーゼ嬢の婚約は解消となった。その己の心に未だに気付かない哀れな息子、グレンに親としてたまには、お節介をな」

「…エリーゼの中ではグレン王子は友人止まり、の様でしたがね」

「知っている。…そこはグレンの頑張り次第だ」

「それじゃあ、少し休憩、お茶にするとしようか。レグニス、付き合ってくれるだろう?」

「…分かりました。少しだけならお付き合いします」



こうして二人は仲の良い友人として、お茶と共に昔話へと花を咲かせるのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

【完結】ごめんなさい?もうしません?はあ?許すわけないでしょう?

kana
恋愛
17歳までにある人物によって何度も殺されては、人生を繰り返しているフィオナ・フォーライト公爵令嬢に憑依した私。 心が壊れてしまったフィオナの魂を自称神様が連れて行くことに。 その代わりに私が自由に動けることになると言われたけれどこのままでは今度は私が殺されるんじゃないの? そんなのイ~ヤ~! じゃあ殺されない為に何をする? そんなの自分が強くなるしかないじゃん! ある人物に出会う学院に入学するまでに強くなって返り討ちにしてやる! ☆設定ゆるゆるのご都合主義です。 ☆誤字脱字の多い作者です。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?

仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。 そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。 「出来の悪い妹で恥ずかしい」 「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」 そう言ってましたよね? ある日、聖王国に神のお告げがあった。 この世界のどこかに聖女が誕生していたと。 「うちの娘のどちらかに違いない」 喜ぶ両親と姉妹。 しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。 因果応報なお話(笑) 今回は、一人称です。

断罪された商才令嬢は隣国を満喫中

水空 葵
ファンタジー
 伯爵令嬢で王国一の商会の長でもあるルシアナ・アストライアはある日のパーティーで王太子の婚約者──聖女候補を虐めたという冤罪で国外追放を言い渡されてしまう。  そんな王太子と聖女候補はルシアナが絶望感する様子を楽しみにしている様子。  けれども、今いるグレール王国には未来が無いと考えていたルシアナは追放を喜んだ。 「国外追放になって悔しいか?」 「いいえ、感謝していますわ。国外追放に処してくださってありがとうございます!」  悔しがる王太子達とは違って、ルシアナは隣国での商人生活に期待を膨らませていて、隣国を拠点に人々の役に立つ魔道具を作って広めることを決意する。  その一方で、彼女が去った後の王国は破滅へと向かっていて……。  断罪された令嬢が皆から愛され、幸せになるお話。 ※他サイトでも連載中です。  毎日18時頃の更新を予定しています。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ
ファンタジー
侯爵令嬢のサーシャは平凡な令嬢だった。 姉は国一番の美女で、才色兼備で聖女と謡われる存在。 対する妹のサーシャは姉とは月スッポンだった。 能力も乏しく、学問の才能もない無能。 侯爵家の出来損ないで社交界でも馬鹿にされ憐れみの視線を向けられ完璧を望む姉にも叱られる日々だった。 人は皆何の才能もない哀れな令嬢と言われるのだが、領地で自由に育ち優しい婚約者とも仲睦まじく過ごしていた。 姉や他人が勝手に憐れんでいるだけでサーシャは実に自由だった。 そんな折姉のジャネットがサーシャを妬むようになり、聖女を変われと言い出すのだが――。

処理中です...