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14.冒険者ギルドに依頼の報告を
しおりを挟む「あ。エリーゼさん、狼の姿だと今はまだ魔力が回復していないので会話は無理なんですが…ある程度回復すれば会話が出来る様になりますので…」
「そうなのね、分かったわ。無理はしないで、回復に専念してね?」
はい、とリオンくんは頷くとぽふん、と音を立てて小さな黒い狼の姿へと戻っていた。
あああ、可愛い。
やっぱり黒いもふもふも可愛いぃいい!…ぎゅってしたい。
…禁止だから我慢するけれど。
『エリーゼ様、そろそろ行かなければ混雑してしまうかと』
「…ジル、そうね。行きましょうか」
ジルの言う通りでいつの間にか時間が経っていた様で、空を見ると太陽が傾き掛けていた。
まだまだリオンくんを愛でていたい気持ちを押し込めながら、私は張っていた結界を解除する。
街へ入る為、ジルも小さい姿になれば定位置の私の肩へ。
リオンくんはバスケットの中へと戻って行った。
あ、やっぱり抱っこ禁止だからそうなるよね…。
でもバスケットに入った黒い狼もとっても可愛いからこれはこれで良いかも知れない。
そっとリオンくんの入ったバスケットを静かに抱えながら門へと向かい歩き出す。
ここから見る限り、どうやらまだそれほど混んではいなさそうで安心する。
程なくして門へと着くと丁度良いタイミングで殆ど並ばずに私の番が回って来た。
「あの、すみません。依頼を終えて帰ってきたのですがその際にこの子を保護しまして…」
そう言って門番さんへとリオンくんが入ったバスケットを見せる。
「…この子は獣人族、ですね?」
経験を積んだ方はさすがである。
直ぐに狼の姿のリオンくんが獣人であると気付いたのだから。
「はい。この子の入門許可をお願いします。…それと、冒険者のサージェさん宛に伝達をお願い出来ますか?」
「…ふむ、魔力には特に問題ないので入門を許可します」
魔力の質を計測する魔道具にてリオンくんを測定するも、問題はなかった様で入門の許可が降りた。
この魔道具は魔力の質を計測し、悪人との識別を行う物で、鑑定石同様、オーデルト国によってもたらされた一品であったりする。実に便利。
「冒険者ギルドのサージェさん宛、ですね。それでは伝達内容をお願いします」
「はい。Bランク冒険者、エリーゼが依頼報告にこれから行くので一部屋、確保お願いします、と」
「畏まりました。これで手続き完了となります。…エリーゼさん、おかえりなさい」
微笑んで登録証を返してくれる門番さんからのおかえりなさいの一言が身に染みる。
“いってらっしゃい、おかえりなさい”…その言葉は、魔物が蔓延るこの世界ではとても重みのある言葉 。
人々は常に死と隣り合わせであるからだ。
防衛を担っている、このタンジェラの街では尚更のこと。
だから私も登録証を受け取りながら笑顔で返す、
「…ただいま!」
と。
無事リオンくん含めて検問を通過した私達は真っ直ぐに冒険者ギルドへ。
冒険者ギルドへ入ると伝達を受けたサージェさんが待機してくれていて。
私達はサージェさんが確保してくれた部屋へと入る。
「…先ずはエリーゼちゃん、無事に帰って来てくれてなによりだ。で、そのバスケットの中にいるのは…今回の依頼に関係しているんだな?」
互いにテーブルを挟んでソファーに座ると、サージェさんが口を開く。
その視線は膝に置いたリオンくんが入っているバスケットに向けられていて。
「はい。そうなんですが…取り敢えず、順を追って話しますね…」
私は魔の森であった事を説明していく。
呪いの事、リオンくんがその呪いから結界を張って自身を守っていた事。
そしてリオンくんは獣人で、リオンくんの身の安全の為にもこの事は一部を除き、内密でという事も。
一通り報告を聞いたサージェさんは、改めてリオンくんへと目を向け呟く様に言った。
「…この依頼を受けてくれたのがエリーゼちゃんで良かったな。そうでなかったらどうなっていた事か…」
どうなっていた事か、サージェさんははっきりと言葉にはしなかったが、それはリオンくんの命が…という事だ。
「…私も。リオンくんを助ける事が出来て本当に良かったと思っています。…心から」
しみじみとそう思っていると、リオンくんが何か伝える様に鳴いてから、バスケットからぴょんと出て私の腕にすり寄って来てくれた。
『彼も…他の誰でもないエリーゼ様に助けて貰えて良かった、と言っています』
肩に乗ったままだったジルが気を利かせて通訳してくれる。
「…リオンくん」
__本当に本当に助ける事が出来て良かった。
そしてリオンくんが可愛い…。
すり寄って来てくれるリオンくん、可愛すぎ…!
このしんみり、ほわほわタイムはサージェさんが咳払いをするまで続くのであった。
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