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第8話 何とか間に合った初詣
しおりを挟む大晦日にあれだけ遅くまで起きていたのに、私は新年早々からバタバタしてしまう。
「まぁ、正月の朝からこれじゃ今年1年も思いやられるな」
「仕方ないのよ。女の子は準備が大変なんだから」
両親のそんな声が聞こえてくる。
「まさか、のぞみがこれを着られるようになるなんてね……」
事前に言われたように髪の毛をセットして、お母さんの前に立った。
「胸も大きくないから巻かなくていいし……」
「それって、どうせ私はちっちゃいよ!」
「でも、海斗くんはそんなのぞみがいいって言ってくれているんでしょ? こんなに長く続くなんてね。このまま続けばいいわね」
「うん……」
約束のお昼すぎ、うちのインターホンが鳴った。
「じゃあ、行ってくるね。すぐ帰ってくるから」
「海斗くんも病み上がりだし、寒くなったらいくら厚着していても冷えるから、そこそこで帰ってらっしゃい」
「うん」
玄関の扉を開けた瞬間、海斗の顔が驚いていた。
「あけおめ。今年もよろしくね」
「あ、あぁ。こっちこそ……のぞみ……」
そりゃそうだよね。今日着物を着るなんて事前には一言も言ってなかったもん。
お母さんのお下がりだけど、海斗への私の気持ちを何とか表現したかった……。
「早く行こう? 私も着慣れてるわけじゃないから、着崩れしちゃう前に?」
初詣と言っても、小さい頃からよく境内で遊んでいた神社。いつもはそんな感じだけど、三が日は屋台が出たりちょっとしたお祭り気分も味わえる。
草履の足元だから、いつものように走り出したりはできない。海斗は足並みを私に揃えてくれていた。
「驚かせすぎちゃったかな……。似合わないかな……」
「驚いたのはマジだけど……、でもこのために? このあとの予定はなんにもないんだぜ?」
「うん。いつかやってみたかったんだ……」
「そっか……。もう七五三には見えないな。大きくなったよな。のぞみも……」
参道で順番を待っている間、私の手を握ってくれた。それが彼なりの答えだって分かってる。
お賽銭を納めて、二人並んで手を合わせてからおみくじを引いてみる。
「キビシー!」
お互いに海斗が小吉で私が末吉だもん。まだ凶じゃなかっただけよかったか……。
「まぁいっか。どっちかだけ大吉なんか出たらへこむしさ」
「うん。ちゃんとやりなさいってことだよね」
「羨ましい。のぞみのポジティブシンキング」
去年まではこのあとに屋台で色々食べたり遊んで帰ったけれど……。
「着物汚すわけにいかないからさ」
今年はそれはなし。その代わり、二人でお揃いのお守りを買って、絵馬には二人で受験を頑張ることを書いて納めたんだ。
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