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第2章
第39話 シングルマザー
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外は快晴で、気持ちの良い空だ。身支度を済ませると、麻生さんと一緒に食堂に向かった。食堂のおばさんが、朝食のパンと紙パックのコーヒーを配ってくれていた。
「おはようございます」
「はい、朝パンどうぞ。皆んな帰れるみたいだよ」
「有難う御座います」
御礼を言って、パンとコーヒーを受け取った。そうだ確かこの後、私はアパートに帰ってから『影の部屋』を唱えて、魔界に行ったんだった。S10ランクである私が、魔界のゲートを開くのは容易いだろう。
しかし、それを行うと同じ事を繰り返す未来が待っている。確かに魔界に封じ込められたロード達を出してあげたい。だが、今はまだその時では無い。
そもそも、父である唯一神ヤハウェを倒す事になったのは、アダムと自分の敵討ちだったはずだ。ループして復讐を遂げたのだが、それは全て予知夢的な「夢」でしか無く、母アシェラの『超強力催眠』でも無い。全ては青山瑞稀である自分が、頭を殴られて気を失っている間に見た「夢」だったのだ。だから、戦う理由など無いし、争いを回避しなければならない。ヤハウェが倒されたと聞いた他のXNUMX人が、地球に来るのを阻止する為にも。
それもあるのだが、今の自分の感覚は男でしか無い。自分が女神アナトだとは、ステイタスを見なければ信じられない事だった。夢で見たルートは決して歩まない。あくまでも、今の自分は青山瑞稀なのだ。神崎瑞稀でも無ければ、虞美人でもアナトでも無い。男の感覚しか持っていない今の自分が、女性になって男に抱かれるなんて気持ち悪い。百歩譲って相手が自分だったら、まだマシだ。
パンを囓りながら、ぼーっとニュースを眺めていると、朝から元気よく山下が話しかけて来た。
「おはようございます、先輩!」
やはりと言うか案の定、山下は昨晩会った女性(女性変化した私)に一目惚れした話しだった。
「ふ~ん、そんな綺麗な女性がいたら、話題になりそうなのに、見た事が無い人なんでしょう?何処かの部署の取引先の人で、夜間外出禁止令の為に帰れなくなっちゃったんじゃない?」
「そうですよね…また会いたいなぁ…」
遠い目をされると、胸がチクリと痛んだ。夢の中で女性だった時は、コイツとずっとカップルだったっけ。胸が痛むのは、そのせいだろう。
「まぁ、お前に縁があるなら、また会えるさ」
山下を励まして、私達は一旦解散となった。
「麻生さん、また後で」
「またね、青山くん」
麻生さんに手を振り、駅のホームに向かった。電車に乗って揺られると、眠気に襲われた。
「ふわぁ~あ」
どうして電車って、こうも眠くなるんだろう?電車を降りると、今度はバスに乗って自宅アパートに帰って来た。
「は~疲れた、疲れた。何にもしてなくても疲れた」
6月の下旬ともなると、ただ外を歩いているだけでも汗が吹き出すほど暑い。昨今の地球温暖化の影響だろう。夏は暑く、夏も終わりに近づくと、ある日を境に突然寒くなる。秋が無くなったなぁ、と感じる。本当に異常気象だ。
冷凍庫から苺ミルクのアイスバーを取り出した。
「麻生さんからメールだ。今帰ったよぉ、だって。私も、今帰って来た所です、返信と」
こう言う何気無いやり取りが出来る様になって、本当に付き合い始めたんだ、と実感が湧いて来た。
「車を買って、麻生さんとドライブにでも行きたいなぁ」
ドライブしたり、旅行している姿を妄想してニヤニヤしていた。もし第三者に見られていたら、さぞかしキモいと思われた事だろう。食材が足りない事に気付いて、近くのスーパーへ買い物に行く事にした。
「キャア!誰かぁ」
女性の悲鳴が聞こえたので、駆け付けると、男にバッグを引ったくられて倒れていた。女性に大丈夫ですか?と声を掛け、男を追いかけた。体力は無いので直ぐに息切れをしてしまうが、これでも学生の頃はリレーの選手だった。体育祭のリレーだから、大した事では無いのだが、それでも足は速い方だった。心臓が破裂しそうなほど呼吸が苦しくなったが、昔取った杵柄で、引ったくり犯に追い付いた。
「テメェ、何のつもりだよ?」
逃げられないと思った男は、凄んで臨戦態勢に入った。殺気を向けられて、尻込みしてしまう。私は喧嘩なんてした事が無かったからだ。それに、女性になれば無敵かも知れないが、今の私はスキル無しだ。この男に戦闘系のスキルがあったら、終わりだ。喧嘩の構えなんて分からないが、ボクシングを見様見真似でポーズを取った。
「はんっ、ど素人が!」
そう言って間合いに入って来たので、パンチを繰り出したが、躱されてボディに一撃を入れられると 蹲って吐いた。
「ゲェ、ゲェェ…」
「素人が、舐めてんじゃねえぞ!コラァ!」
腹を蹴られて仰向けにされると、馬乗りになって来て、顔や頭を執拗に殴って来たのでガードしたが、ガードした腕が折れた様に痛くて、防御が緩んだ所を何度も殴り付けられて意識を失いそうになった。
「ぺっ!」
男は唾を私の顔に吐きかけると、立ち去って行った。情けない。文字通り、ボコボコにされた。この分だと骨折していそうだ。
『女性変化』『衣装替』と呪文を唱えて女性になると、傷は一瞬で治った。
「あいつ、絶対に許さない!」
飛んで男の前に回り込んだ。
「うわっ、と。な、何だ?空に浮いてるぞ」
「よくもやってくれたな?」
「何の事だ?」
「お前の様な奴がいるから、いつまで経っても治安は良くならないんだ」
地上に降りて間合いに入って、バッグを持っている手に手刀を喰らわすと、手首を切断してしまった。
「ウギャァア!」
「ごめん。叩き落とすつもりが…手加減が難しいな…」
『完全回復』
男の落ちた手首が繋がった。
『光之拘束』
光で出来たロープが、男を縛り付けて拘束した。
「さてと…」
元の男の姿に戻ると、引ったくられた女性の所へ戻り、バッグを渡した。何度も感謝され、是非お礼をと、言われて断れずに彼女の自宅にお邪魔してしまった。肉付きが良く豊満な身体は、少し幼く見える可愛い顔とバランスが取れてない感じが、麻生さんとはまた違って良かった。
彼女は夫のDVを受けて離婚したばかりのシングルマザーで、私よりは1つ下の31歳だった。どうしてこうなったのか分からない、魔が差したとしか言いようが無い。我に返ると、夢中になって彼女に跨り、激しく腰を突いていた。麻生さんの顔が頭によぎったが快楽には勝てず、膣内に精を勢いよく吐き出した。その後も、何度も体位を変えながら肉欲に溺れた。
「もう、子供を迎えに行く時間だから」
そう言うと彼女は、シャワーを浴びに行った。部屋を出る時、彼女から「また会える?」と言われて、断れずに「はい」と答えてしまった。
彼女と別れると、スーパーに行く気は無くなって、ふらふらとアパートに戻った。避妊をしていなかった事に気付いて、妊娠させていたらどうしよう?と青ざめた。最低だ、私は。絶対に浮気はしないと言っておきながら、付き合った翌日に元人妻と浮気してしまった。浮気しても私にバレない様にしてね?と明るい笑顔で言った麻生さんを思い出して、良心が痛み懺悔して泣いた。麻生さんは、私を信じきっていたから、あの言葉を言ったのだ。絶対に麻生さんに知られてはいけない。知れば深く傷付ける。この秘密は、墓場まで持って行く。
「おはようございます」
「はい、朝パンどうぞ。皆んな帰れるみたいだよ」
「有難う御座います」
御礼を言って、パンとコーヒーを受け取った。そうだ確かこの後、私はアパートに帰ってから『影の部屋』を唱えて、魔界に行ったんだった。S10ランクである私が、魔界のゲートを開くのは容易いだろう。
しかし、それを行うと同じ事を繰り返す未来が待っている。確かに魔界に封じ込められたロード達を出してあげたい。だが、今はまだその時では無い。
そもそも、父である唯一神ヤハウェを倒す事になったのは、アダムと自分の敵討ちだったはずだ。ループして復讐を遂げたのだが、それは全て予知夢的な「夢」でしか無く、母アシェラの『超強力催眠』でも無い。全ては青山瑞稀である自分が、頭を殴られて気を失っている間に見た「夢」だったのだ。だから、戦う理由など無いし、争いを回避しなければならない。ヤハウェが倒されたと聞いた他のXNUMX人が、地球に来るのを阻止する為にも。
それもあるのだが、今の自分の感覚は男でしか無い。自分が女神アナトだとは、ステイタスを見なければ信じられない事だった。夢で見たルートは決して歩まない。あくまでも、今の自分は青山瑞稀なのだ。神崎瑞稀でも無ければ、虞美人でもアナトでも無い。男の感覚しか持っていない今の自分が、女性になって男に抱かれるなんて気持ち悪い。百歩譲って相手が自分だったら、まだマシだ。
パンを囓りながら、ぼーっとニュースを眺めていると、朝から元気よく山下が話しかけて来た。
「おはようございます、先輩!」
やはりと言うか案の定、山下は昨晩会った女性(女性変化した私)に一目惚れした話しだった。
「ふ~ん、そんな綺麗な女性がいたら、話題になりそうなのに、見た事が無い人なんでしょう?何処かの部署の取引先の人で、夜間外出禁止令の為に帰れなくなっちゃったんじゃない?」
「そうですよね…また会いたいなぁ…」
遠い目をされると、胸がチクリと痛んだ。夢の中で女性だった時は、コイツとずっとカップルだったっけ。胸が痛むのは、そのせいだろう。
「まぁ、お前に縁があるなら、また会えるさ」
山下を励まして、私達は一旦解散となった。
「麻生さん、また後で」
「またね、青山くん」
麻生さんに手を振り、駅のホームに向かった。電車に乗って揺られると、眠気に襲われた。
「ふわぁ~あ」
どうして電車って、こうも眠くなるんだろう?電車を降りると、今度はバスに乗って自宅アパートに帰って来た。
「は~疲れた、疲れた。何にもしてなくても疲れた」
6月の下旬ともなると、ただ外を歩いているだけでも汗が吹き出すほど暑い。昨今の地球温暖化の影響だろう。夏は暑く、夏も終わりに近づくと、ある日を境に突然寒くなる。秋が無くなったなぁ、と感じる。本当に異常気象だ。
冷凍庫から苺ミルクのアイスバーを取り出した。
「麻生さんからメールだ。今帰ったよぉ、だって。私も、今帰って来た所です、返信と」
こう言う何気無いやり取りが出来る様になって、本当に付き合い始めたんだ、と実感が湧いて来た。
「車を買って、麻生さんとドライブにでも行きたいなぁ」
ドライブしたり、旅行している姿を妄想してニヤニヤしていた。もし第三者に見られていたら、さぞかしキモいと思われた事だろう。食材が足りない事に気付いて、近くのスーパーへ買い物に行く事にした。
「キャア!誰かぁ」
女性の悲鳴が聞こえたので、駆け付けると、男にバッグを引ったくられて倒れていた。女性に大丈夫ですか?と声を掛け、男を追いかけた。体力は無いので直ぐに息切れをしてしまうが、これでも学生の頃はリレーの選手だった。体育祭のリレーだから、大した事では無いのだが、それでも足は速い方だった。心臓が破裂しそうなほど呼吸が苦しくなったが、昔取った杵柄で、引ったくり犯に追い付いた。
「テメェ、何のつもりだよ?」
逃げられないと思った男は、凄んで臨戦態勢に入った。殺気を向けられて、尻込みしてしまう。私は喧嘩なんてした事が無かったからだ。それに、女性になれば無敵かも知れないが、今の私はスキル無しだ。この男に戦闘系のスキルがあったら、終わりだ。喧嘩の構えなんて分からないが、ボクシングを見様見真似でポーズを取った。
「はんっ、ど素人が!」
そう言って間合いに入って来たので、パンチを繰り出したが、躱されてボディに一撃を入れられると 蹲って吐いた。
「ゲェ、ゲェェ…」
「素人が、舐めてんじゃねえぞ!コラァ!」
腹を蹴られて仰向けにされると、馬乗りになって来て、顔や頭を執拗に殴って来たのでガードしたが、ガードした腕が折れた様に痛くて、防御が緩んだ所を何度も殴り付けられて意識を失いそうになった。
「ぺっ!」
男は唾を私の顔に吐きかけると、立ち去って行った。情けない。文字通り、ボコボコにされた。この分だと骨折していそうだ。
『女性変化』『衣装替』と呪文を唱えて女性になると、傷は一瞬で治った。
「あいつ、絶対に許さない!」
飛んで男の前に回り込んだ。
「うわっ、と。な、何だ?空に浮いてるぞ」
「よくもやってくれたな?」
「何の事だ?」
「お前の様な奴がいるから、いつまで経っても治安は良くならないんだ」
地上に降りて間合いに入って、バッグを持っている手に手刀を喰らわすと、手首を切断してしまった。
「ウギャァア!」
「ごめん。叩き落とすつもりが…手加減が難しいな…」
『完全回復』
男の落ちた手首が繋がった。
『光之拘束』
光で出来たロープが、男を縛り付けて拘束した。
「さてと…」
元の男の姿に戻ると、引ったくられた女性の所へ戻り、バッグを渡した。何度も感謝され、是非お礼をと、言われて断れずに彼女の自宅にお邪魔してしまった。肉付きが良く豊満な身体は、少し幼く見える可愛い顔とバランスが取れてない感じが、麻生さんとはまた違って良かった。
彼女は夫のDVを受けて離婚したばかりのシングルマザーで、私よりは1つ下の31歳だった。どうしてこうなったのか分からない、魔が差したとしか言いようが無い。我に返ると、夢中になって彼女に跨り、激しく腰を突いていた。麻生さんの顔が頭によぎったが快楽には勝てず、膣内に精を勢いよく吐き出した。その後も、何度も体位を変えながら肉欲に溺れた。
「もう、子供を迎えに行く時間だから」
そう言うと彼女は、シャワーを浴びに行った。部屋を出る時、彼女から「また会える?」と言われて、断れずに「はい」と答えてしまった。
彼女と別れると、スーパーに行く気は無くなって、ふらふらとアパートに戻った。避妊をしていなかった事に気付いて、妊娠させていたらどうしよう?と青ざめた。最低だ、私は。絶対に浮気はしないと言っておきながら、付き合った翌日に元人妻と浮気してしまった。浮気しても私にバレない様にしてね?と明るい笑顔で言った麻生さんを思い出して、良心が痛み懺悔して泣いた。麻生さんは、私を信じきっていたから、あの言葉を言ったのだ。絶対に麻生さんに知られてはいけない。知れば深く傷付ける。この秘密は、墓場まで持って行く。
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