Perverse second

伊吹美香

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episode 2

変化

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急に押し黙った三崎の歩調が狂った。



急ぎ足になったかと思えば緩んだり。



その心境を図るのはかなり難しい。



俺に家を知られたくないから一人で早く帰りたいとか?



嘘ついて家を知りたがってると思われてるとか?



二人でいるこの空間に限界を感じてるとか?



やべぇ。



マイナス思考でしか考えらんねぇ。



「俺んち、アレ」



角を曲がって嘘疑惑を早急に否定するかのように、俺は自分ちのマンションを指さして三崎を見ると。



彼女は信じられないという表情をしている。



「私のうちはこっちだよ」



は…?



「柴垣くんとはお隣りさんだね」



「え、マジかよ。奇遇だな」



ははっ、と声を上げて笑うと三崎も微笑んでくれたけれど。



いやいやいや、なにが『奇遇だな』だっ。



頭ん中、真っ白になるくらい驚いてるっつーんだよ。



この家を探してくれたのは陸だ。



俺は立地と家賃、間取りや部屋の内装などのデータを陸に送ってもらって決めただけ。



アイツは妙にこの物件を推していたけど…これは偶然じゃないんじゃ?
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