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episode 2
変化
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「けど入社してみれば、お前はその時とは別人みたいに、不自然に格好つけた可愛げもクソもねぇ女になっちまってた」
俺はそれが悔しくて仕方なかったんだ。
目の前に大きな壁の前に立ちはだかって、手も足も出せない状況に似ている。
そんな亀のような俺のできることといえば、優しさの破片も無い荒療治。
とても好きな女に浴びせている言葉とは思えない。
ぐっと溢れる涙を我慢する彼女の肩を抱いたら…拒絶されてしまうだろうか。
「お前の得意先に㈱古閑ってあるだろ。そこの前任者の吉井さんっていたの覚えてるか?」
「…うん」
暴走しそうになった腕に力を込めて、俺は話を変える。
50代男性の吉井さんはとてもお世話になったバイヤーさんだ。
その吉井さんの顔を頭に思い浮かべると、俺の邪な気持ちが薄れた気がした。
「吉井さん、大阪の百貨店に引き抜かれて、そこで担当したのが俺だったの。お前のこと聞かれて同期ですって言ったらメチャクチャ可愛がってくれてさ。その古閑さんも言ってたよ。お前はいつも真っ直ぐで明るくて、あの笑顔に癒される子だって」
「そんなこと…」
「見てたよ。それが本当のお前だろ?」
そういった途端、三崎の大きな両目から一気に涙が零れ落ちた。
俺はそれが悔しくて仕方なかったんだ。
目の前に大きな壁の前に立ちはだかって、手も足も出せない状況に似ている。
そんな亀のような俺のできることといえば、優しさの破片も無い荒療治。
とても好きな女に浴びせている言葉とは思えない。
ぐっと溢れる涙を我慢する彼女の肩を抱いたら…拒絶されてしまうだろうか。
「お前の得意先に㈱古閑ってあるだろ。そこの前任者の吉井さんっていたの覚えてるか?」
「…うん」
暴走しそうになった腕に力を込めて、俺は話を変える。
50代男性の吉井さんはとてもお世話になったバイヤーさんだ。
その吉井さんの顔を頭に思い浮かべると、俺の邪な気持ちが薄れた気がした。
「吉井さん、大阪の百貨店に引き抜かれて、そこで担当したのが俺だったの。お前のこと聞かれて同期ですって言ったらメチャクチャ可愛がってくれてさ。その古閑さんも言ってたよ。お前はいつも真っ直ぐで明るくて、あの笑顔に癒される子だって」
「そんなこと…」
「見てたよ。それが本当のお前だろ?」
そういった途端、三崎の大きな両目から一気に涙が零れ落ちた。
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