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episode 6
実った初恋
しおりを挟む土曜日ということもあって込み合っている店内だったが、スムーズに個室の前に案内してもらえた。
この中には20名ほどの元クラスメイトがいる。
今日ここに『彼女』が参加しているかどうかは聞いていないけれど。
もし参加しているならば、一体どんな顔をしてその場にいるのだろうか。
そして私は『彼女』を目の前にしたとき、一体どんな顔をするのだろう。
不安で足が動かなくなってしまった時、藤瀬くんがそっと私の肩を抱いてくれた。
「大丈夫だよ。俺達はもう何があっても惑わされない」
低く優しく諭すように。
藤瀬くんの言葉を聞くと、全身の力が抜けそうになる。
そっと視線を合わせると、藤瀬くんは優しく微笑んでくれた。
それだけでゆうき思が持てた私は、思い切って個室の引き戸を開けた。
騒がしい室内は既にお酒の匂いがする。
「茉莉香っ」
亜弓がいち早く私に気が付いて手を上げると、皆の視線が一斉に私と藤瀬くんに集まった。
しん……と一瞬で静まり返った室内に緊張が走ったが。
「真斗っ!てめえこの野郎!おっせえんだよっ!」
田原くんの一言で一気に歓迎ムードへと空気が変わった。
「お前、今までどうしてたんだよ」
「連絡くらいしろよな」
「ほら、いいからこっち座れよ」
クラスメイト達が藤瀬くんと肩を組みながら、強引に輪の中に引きずり込んでいく。
藤瀬くんは焦ったようにチラリと私を見たけれど、私はニコリと笑って頷いた。
藤瀬くんは皆の中心にいるのが一番似合っている。
一瞬で藤瀬くんを受け入れてくれた空気に感謝をしながら、私は手招きしてくれている亜弓と奈緒の間に腰を下ろした。
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