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episode 2
望まぬ再会
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完全に集中してものすごいスピードでキーを叩く姿が、中学の頃に図書館で受験勉強をしていた姿と重なって見えた。
一度ダブってしまうと無意識に高鳴る胸が、あの頃の甘酸っぱい気持ちを一気に思い出させてしまう。
眉間に皺を寄せてペンをした顎に当てながら考えている。
その姿をこっそり盗み見てキュンとするのが好きだった。
そんな姿をもう一度見ることになるなんて。
思ってもみなかった。
この抑えられない感情をどうすればいいのだろう。
過去と現在を混同したくなくて、私はふいっと視線をそらした。
なのに。
「真鍋さん」
彼が私ではなく真鍋さんを呼んだ。
そのことに小さく反応してしまったことが悔しくて仕方がない。
「お昼、外に出る?」
「またいつもの?」
「頼むよ」
「忙しい時はいつもなんだから。仕方ないなぁ」
真鍋さんが溜め息を漏らすと、藤瀬くんはデスクの中から黒い二つ折りの財布を取りだし、真鍋さんに向かって放り投げた。
「真鍋さん達もいつもの、いいから」
「了解。じゃ、行ってくる」
藤瀬くんの財布を当然のように受け取りポケットにしまう。
真鍋さんのその姿に、また胸がチリっと焼ける気がした。
思い出なんて、消えてなくなってしまえばいいのに。
私は心の底からそう思って、そっと溜め息をついた。
一度ダブってしまうと無意識に高鳴る胸が、あの頃の甘酸っぱい気持ちを一気に思い出させてしまう。
眉間に皺を寄せてペンをした顎に当てながら考えている。
その姿をこっそり盗み見てキュンとするのが好きだった。
そんな姿をもう一度見ることになるなんて。
思ってもみなかった。
この抑えられない感情をどうすればいいのだろう。
過去と現在を混同したくなくて、私はふいっと視線をそらした。
なのに。
「真鍋さん」
彼が私ではなく真鍋さんを呼んだ。
そのことに小さく反応してしまったことが悔しくて仕方がない。
「お昼、外に出る?」
「またいつもの?」
「頼むよ」
「忙しい時はいつもなんだから。仕方ないなぁ」
真鍋さんが溜め息を漏らすと、藤瀬くんはデスクの中から黒い二つ折りの財布を取りだし、真鍋さんに向かって放り投げた。
「真鍋さん達もいつもの、いいから」
「了解。じゃ、行ってくる」
藤瀬くんの財布を当然のように受け取りポケットにしまう。
真鍋さんのその姿に、また胸がチリっと焼ける気がした。
思い出なんて、消えてなくなってしまえばいいのに。
私は心の底からそう思って、そっと溜め息をついた。
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