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第五章
反撃の刃
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決して人を騙していたわけではない。
依舞稀の心情的にはただ黙っていただけである。
誰かを傷付けたことも、陥れたこともなにもない。
けれどやってはいけないことをしてしまって、それを隠してきたことは事実だ。
今でも聞きたいことは山ほどあるはずなのに、何一つ聞かずにいつも通り笑ってくれている。
あんな一方的に依舞稀を攻撃するだけの言葉ではなく、三人にはちゃんと自分の言葉で伝えたいと思った。
「……見たよね、メール……」
和やかな雰囲気が崩れてしまうのは仕方がない。
けれどこのまま流すわけにはいかなかった。
「見た……」
依舞稀が自分からこの話に触れてくるとは思わなかったのだろう。
三人は気まずそうに顔を見合わせながら、依舞稀の次の言葉を待った。
「大きな悪意が事実を捻じ曲げてしまってるけど、大まかな経緯は間違っていないの」
両親が亡くなってから知った多額の借金や、実家の維持と借金返済のため禁止されていた副業としてホステスを選んだこと。
たまたま接待に来ていた副社長に副業がバレてしまい、接点を持つようになったこと。
もちろんそのことを脅されて結婚したことには触れなかった。
辰巳専務のこともしかりだ。
誤解を解くために、新たな誤解を生まないように、依舞稀は事細かに丁寧に話していった。
「私の抱えている借金の多さにドン引きして離れていった幼馴染が、唆されて私の前に現れたことで、今回みたいに大事になってしまったの。きっと彼女はこれを機に私を潰したかったんだと思う」
依舞稀の驚くべきカミングアウトを、三人は黙って聞いていた。
依舞稀の心情的にはただ黙っていただけである。
誰かを傷付けたことも、陥れたこともなにもない。
けれどやってはいけないことをしてしまって、それを隠してきたことは事実だ。
今でも聞きたいことは山ほどあるはずなのに、何一つ聞かずにいつも通り笑ってくれている。
あんな一方的に依舞稀を攻撃するだけの言葉ではなく、三人にはちゃんと自分の言葉で伝えたいと思った。
「……見たよね、メール……」
和やかな雰囲気が崩れてしまうのは仕方がない。
けれどこのまま流すわけにはいかなかった。
「見た……」
依舞稀が自分からこの話に触れてくるとは思わなかったのだろう。
三人は気まずそうに顔を見合わせながら、依舞稀の次の言葉を待った。
「大きな悪意が事実を捻じ曲げてしまってるけど、大まかな経緯は間違っていないの」
両親が亡くなってから知った多額の借金や、実家の維持と借金返済のため禁止されていた副業としてホステスを選んだこと。
たまたま接待に来ていた副社長に副業がバレてしまい、接点を持つようになったこと。
もちろんそのことを脅されて結婚したことには触れなかった。
辰巳専務のこともしかりだ。
誤解を解くために、新たな誤解を生まないように、依舞稀は事細かに丁寧に話していった。
「私の抱えている借金の多さにドン引きして離れていった幼馴染が、唆されて私の前に現れたことで、今回みたいに大事になってしまったの。きっと彼女はこれを機に私を潰したかったんだと思う」
依舞稀の驚くべきカミングアウトを、三人は黙って聞いていた。
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