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第三章

手駒の足音

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依舞稀が本当に反省していることは、光星と対峙しているときから感じていた。

八神から辰巳彩葉が依舞稀の周りを詮索していると聞いたときから、遥翔にとってはいずれ起こるかもしれない出来事だった。

しかし依舞稀にとっては唐突に起きたことで、遥翔に何をどう説明したらいいのかも分からない出来事だっただろう。

できることなら一人で何とかしようとせずに、即座に自分を頼ってほしかった。

人に頼ることができない性格だということは知っているが、自分と依舞稀は他人じゃない。

結婚したばかりだとはいえ、夫婦なのだ。

お互いに受け止め合い支え合うのが夫婦というものなんじゃないだろうか。

夫婦間の絆どころか男女の愛情もわかっていなかった遥翔だが、今ではそんなことを不満に思ってしまうくらい、依舞稀の全てを背負いたいと思っているのだ。

その旨を冷静にしっかりと依舞稀に伝えようと、感情を落ち着かせる為に口を閉ざしていたのだが。

こう可愛い仕草をされては、しっかりと語る前に簡単に許してしまうではないか。

遥翔は依舞稀の頭を優しく何度も撫でながら溜め息をついた。

「もう怒ってないから」

自分に甘えながら謝罪する依舞稀を怒れるはずなんかない。

「顔見せて?」

遥翔の膝に顔を伏せたままの依舞稀に、遥翔は優しく声を掛ける。

ゆっくり顔を上げた依舞稀の目は、周りも含めて真っ赤になっていて、今にも涙が零れ落ちそうになっていた。

「もう大丈夫だからな」

遥翔はそう言って微笑むと、依舞稀にそっと口付けた。
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