契約結婚！一発逆転マニュアル♡

第三章

手駒の足音

依舞稀と遥翔の結婚の経緯を詳しく知る人物は八神以外はいない。

それ以外は皆、遥翔からの猛烈なアピールによって、依舞稀が結婚を決めたと思っているであろう。

依舞稀と遥翔の結婚をそのような形で吹聴し、依舞稀の過去や光星のことなどを調べ上げ、このような奇行をするように唆す事ができる人物。

それはいったい誰なのか……。

「依舞稀が死に物狂いで頑張ってたっていうのに。人の人生を金で買うだなんて、なんて奴だと思ったよ」

「そんなこと、あなたに言われたくない」

光星の言葉を依舞稀はピシャリと跳ねのけた。

もともと期待も当てにもしていなかったが、光星自身も依舞稀の抱えた負債に関わりたくない一心で恐れをなして逃げたではないか。

「本当は結婚なんてしたくなかったんだろ？脅されて無理やり結婚させられたんだよね？」

なんいう的外れな思い込みだろうか。

「ずっと誰かに救いを求めてたって聞いたよ。僕にできることなら、今度こそ力になりたいと思ったんだ。だから僕は依舞稀を救うためにここに来たんだよ」

なるほど。

依舞稀の中でバラバラだったパーツが組みあがっていき、今ようやく一つに繋がった。

このホテルの人間で、依舞稀の過去を徹底的に洗え、依舞稀と遥翔の関係性を屈折させ、上手く光星を使いストーカー紛いなことまでさせてしまうほど話術に長けている。

思い当たり人間は一人しかいないではないか。

「あの女……」

依舞稀の怒りは完全に光星から彩葉に移り変わった。