契約結婚！一発逆転マニュアル♡

第二章

嫉妬と好奇

休みの日に買い物に行き、食材が乏しくなってきたら外食かテイクアウトと副菜を作って次の休みまで乗り切る。

そういう当たり前の家庭の晩御飯というものを大切にしようと思ったのだ。

家事は遥翔も手伝ってくれるし、依舞稀を先にお風呂に入れさせ、食事の準備をしてくれることもある。

時には二人でキッチンに立つことも珍しくはない。

何処にでもある、ごく普通の夫婦。

これが二人の理想の夫婦であった。

遥翔の中では、理想の夫婦というにはまだ足りないものもあったのだが……。

それはおいおい依舞稀を慣らしていくしかないと考えていた。

「そういえば美味い赤ワインがあったな」

『あったな』というのは少々わざとらしい気もするが、依舞稀の目はキラキラと輝く。

「じゃ、ビーフストロガノフ作りましょう？ワインにも合うし最高です」

「だったら今日は俺が作るよ。結構得意だ」

「やった。楽しみにしてます」

そういって嬉しそうに笑う依舞稀は、ワインに目がないのだ。

お酒自体は強くないが、ワインの香りが大好きで、ついつい遥翔に勧められるままに呑んでしまうのだ。

遥翔は依舞稀のほろ酔いの姿が大好物で、敢えてワインをこっそりと買い揃えていた。

潤んでとろんとした瞳も、女性らしい色気も、少し甘えるようなしぐさも、いつもの数倍素直になるところも。

全てが大好物過ぎて、ついつい押し倒してしまいそうになるほどだ。

ギリギリで押し留まるのだが、これは何かの拷問かと自分に問いかけてしまう。

自分でその状況を作り出しているというのに、バカな男である……。