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第一章

電撃婚

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話し合いが終了し、イタリアンのデリバリーで食事を済ませる。

依舞稀の引っ越しの荷物っが遥翔のマンションに届けられたのは、午後21時を過ぎた頃だった。

遥翔の言った通り、本当に依舞稀のソファーとベッドは持ち込まれていない。

僅かな望みを捨てていなかった依舞稀はがっくりと肩を落とし、遥翔はニンマリと笑みを浮かべた。

時間外配達にも拘らず、搬入から荷解きまで文句なく終わらせてくれた作業員に申し訳なく思いつつも、全てを口頭で終わらせてしまった。

あっという間に片付けが終わると、無駄に大きなバスルームでゆっくりと疲れを取る。

ドライヤーで髪を乾かしていると、遥翔が自分が乾かしてやると言ってきた。

何度か断ったのだが、遥翔が全然引かないので面倒くさくなってお願いすると、ニコニコしながらとても丁寧に乾かしてくれた。

問題は就寝時だ。

遥翔のことだから、一人で使うにしても、それはそれは大きなベッドを使用していると勝手に思い込んでいたが、実際はダブルベッドであった。

確かに一人で眠るには十分すぎる大きさだが、二人で眠るにはあまりにも一般的だ。

これでは結構密着することになるのではないか。

依舞稀の心配は、見事的中することになる。

『結構密着』どころか『完全にホールド』であった……。

「首いた……」

右手で左の首の付け根をぐいぐいと押しながら、依舞稀は大きな溜め息をついた。


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