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第一章
電撃婚
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この女の表情は、どうしてこんなにそそられるのだろうか。
副社長室に入ってきた依舞稀を見つめて、遥翔が一番に思ったのはこれだった。
「緒方依舞稀」
「はい……」
「判子は持ってきたか?」
「はい……」
遥翔は机の引き出しから、茶色の枠の薄い紙を取り出した。
「じゃあ、ここに署名捺印を」
淡々と事務作業のように捺印を求めてくるが、それが婚姻届けであることを、果たして遥翔はわかっているのだろうか。
依舞稀はおずおずと机の前に進み、初めて目の当たりにする婚姻届けをまじまじと見つめた。
「どうした?早く押せよ」
そう急かしてくる遥翔の表情からは、この結婚が遥翔にとって何の意味もないことが伺える。
「あの……教えて欲しいことがあります」
依舞稀は勇気をもって遥翔を射抜いた。
「どうして新契約が結婚なんですか?」
何をどう考えても答えは見つからなかったが、どうしてもそこは聞いておかねばならぬこと。
自分の人生が掛っているというのに、『ハイわかりました』と簡単に判を押す愚かな人間など要るはずがない。
「答えていただかないと、サインもなにもできません」
そう言った依舞稀の言葉に、遥翔は眉をしかめたが、いくら怖い顔をされたところで引くわけにはいかない。
「これは私の人生を変える大きな問題です。うやむやになんてできません」
一度質問してしまえば度胸も出るというもの。
仮に結婚となってしまえば二人の立場は対等でなければならない。
一生迫害されて生きていくなんて、まっぴらごめんだ。
依舞稀は開き直り、怯えることをやめた。
副社長室に入ってきた依舞稀を見つめて、遥翔が一番に思ったのはこれだった。
「緒方依舞稀」
「はい……」
「判子は持ってきたか?」
「はい……」
遥翔は机の引き出しから、茶色の枠の薄い紙を取り出した。
「じゃあ、ここに署名捺印を」
淡々と事務作業のように捺印を求めてくるが、それが婚姻届けであることを、果たして遥翔はわかっているのだろうか。
依舞稀はおずおずと机の前に進み、初めて目の当たりにする婚姻届けをまじまじと見つめた。
「どうした?早く押せよ」
そう急かしてくる遥翔の表情からは、この結婚が遥翔にとって何の意味もないことが伺える。
「あの……教えて欲しいことがあります」
依舞稀は勇気をもって遥翔を射抜いた。
「どうして新契約が結婚なんですか?」
何をどう考えても答えは見つからなかったが、どうしてもそこは聞いておかねばならぬこと。
自分の人生が掛っているというのに、『ハイわかりました』と簡単に判を押す愚かな人間など要るはずがない。
「答えていただかないと、サインもなにもできません」
そう言った依舞稀の言葉に、遥翔は眉をしかめたが、いくら怖い顔をされたところで引くわけにはいかない。
「これは私の人生を変える大きな問題です。うやむやになんてできません」
一度質問してしまえば度胸も出るというもの。
仮に結婚となってしまえば二人の立場は対等でなければならない。
一生迫害されて生きていくなんて、まっぴらごめんだ。
依舞稀は開き直り、怯えることをやめた。
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