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第一章
躓いたスタート
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初めて足を踏み入れた副社長室は、思ったよりもシンプルでとてもセンスが良かった。
お金持ちの御曹司の役員室なんて、金にモノを言わせた重苦しくて奇抜なイメージを持っていた依舞稀にとって、それは意外なものであった。
もっといろいろ観察してみたいところではあるが、今の依舞稀にはそんな余裕など微塵もない。
遥翔と目を合わせる事もできず、入り口の真ん前で深く顔を伏せていた。
「緒方依舞稀さんをお連れしました」
「ご苦労だった」
遥翔の落ち着いた低い声からは感情を読み取ることはできなかった。
「さて、緒方依舞稀」
遥翔から名前を呼ばれ、依舞稀はビクリと肩をすぼめた。
「人が名前を呼んでいるんだぞ。ちゃんと顔を上げろ」
そう言われてしまったら視線を合わせないわけにはいかない。
依舞稀は恐る恐る顔を上げて遥翔の表情を伺った。
「お前に聞きたいことがある。このホテルは副業禁止だということは知ってるな?」
「……はい」
遥翔の落ち着いた口調では、自分の未来を伺い知ることはできないが、これから自分が遥翔のよって追い詰められていくことだけはわかる。
「知った上でホステスとして働いている理由はなんだ?」
「それは……」
多額の借金を背負っている依舞稀にとっての正当な理由は、このホテルには全く関係のないことで、副業を許可してもらう理由になるはずもない。
依舞稀は言葉に詰まってしまった。
お金持ちの御曹司の役員室なんて、金にモノを言わせた重苦しくて奇抜なイメージを持っていた依舞稀にとって、それは意外なものであった。
もっといろいろ観察してみたいところではあるが、今の依舞稀にはそんな余裕など微塵もない。
遥翔と目を合わせる事もできず、入り口の真ん前で深く顔を伏せていた。
「緒方依舞稀さんをお連れしました」
「ご苦労だった」
遥翔の落ち着いた低い声からは感情を読み取ることはできなかった。
「さて、緒方依舞稀」
遥翔から名前を呼ばれ、依舞稀はビクリと肩をすぼめた。
「人が名前を呼んでいるんだぞ。ちゃんと顔を上げろ」
そう言われてしまったら視線を合わせないわけにはいかない。
依舞稀は恐る恐る顔を上げて遥翔の表情を伺った。
「お前に聞きたいことがある。このホテルは副業禁止だということは知ってるな?」
「……はい」
遥翔の落ち着いた口調では、自分の未来を伺い知ることはできないが、これから自分が遥翔のよって追い詰められていくことだけはわかる。
「知った上でホステスとして働いている理由はなんだ?」
「それは……」
多額の借金を背負っている依舞稀にとっての正当な理由は、このホテルには全く関係のないことで、副業を許可してもらう理由になるはずもない。
依舞稀は言葉に詰まってしまった。
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