2 / 63
episode 1
入籍は突然に
しおりを挟む
例えば今、私の目の前に座っている新郎新婦。
新婦の方は新郎の意見を何も求めることなく、ひたすらに映える結婚式をご所望のようだ。
一方新郎の方はというと、本当に結婚する気があるのかと聞きたくなるほどに、無関心という言葉を顔面に張り付けている。
私の「新郎様もそれでよろしいですか?」という言葉に、視線も合わせずに「彼女にお任せします」というテンプレートな言葉を返してくる。
出会って間もないお二人だと聞いたが、この二人は結婚してから上手くいくのだろうかという、余計な詮索をしてしまいそうになるほどの温度差を感じる。
もちろんこういったことはよくあることで、なにもこの新郎様だけが特別なわけではない。
五年以上もこの業界にいれば、いろんな関係性を目の当たりにすることがある。
意見の食い違いから大喧嘩をはじめ、結婚式を取りやめて別れてしまうカップル。
結婚式直前に新郎様の最後の過ちが発覚し、式をキャンセル破局したカップル。
横暴な新郎様に逆らえず、虐げられていた新婦様など、挙げればきりがない。
そんなヤバいカップルを思えば、この新郎様は穏やかで、最少人数でという自分の意見以外は、新婦様の意見を全て聞き入れてくださっている、優しい新郎様だと言えるだろう。
しかし私はどうもこの新郎様が気になって仕方がなかった。
どうしてだと聞かれると答えようもないのだが、このやさしさの内に隠された無関心さが気になって仕方がなかったのだ。
だからだろうか。
「あら、新婦様と私の名前、一文字違いですね。こんな偶然初めてです」
と、余計な言葉を口走ったのは。
新婦の方は新郎の意見を何も求めることなく、ひたすらに映える結婚式をご所望のようだ。
一方新郎の方はというと、本当に結婚する気があるのかと聞きたくなるほどに、無関心という言葉を顔面に張り付けている。
私の「新郎様もそれでよろしいですか?」という言葉に、視線も合わせずに「彼女にお任せします」というテンプレートな言葉を返してくる。
出会って間もないお二人だと聞いたが、この二人は結婚してから上手くいくのだろうかという、余計な詮索をしてしまいそうになるほどの温度差を感じる。
もちろんこういったことはよくあることで、なにもこの新郎様だけが特別なわけではない。
五年以上もこの業界にいれば、いろんな関係性を目の当たりにすることがある。
意見の食い違いから大喧嘩をはじめ、結婚式を取りやめて別れてしまうカップル。
結婚式直前に新郎様の最後の過ちが発覚し、式をキャンセル破局したカップル。
横暴な新郎様に逆らえず、虐げられていた新婦様など、挙げればきりがない。
そんなヤバいカップルを思えば、この新郎様は穏やかで、最少人数でという自分の意見以外は、新婦様の意見を全て聞き入れてくださっている、優しい新郎様だと言えるだろう。
しかし私はどうもこの新郎様が気になって仕方がなかった。
どうしてだと聞かれると答えようもないのだが、このやさしさの内に隠された無関心さが気になって仕方がなかったのだ。
だからだろうか。
「あら、新婦様と私の名前、一文字違いですね。こんな偶然初めてです」
と、余計な言葉を口走ったのは。
11
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説

すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私の大好きな彼氏はみんなに優しい
hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。
柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。
そして…
柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。

寒い夜だから、夫の腕に閉じ込められました
絹乃
恋愛
学生なのに結婚したわたしは、夫と同じベッドで眠っています。でも、キスすらもちゃんとしたことがないんです。ほんとはわたし、キスされたいんです。でも言えるはずがありません。

獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない
たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。
何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話


溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる