ようこそ、一条家へ

如月はづき

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54.真冬の訪れ②

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「おい!柚子!」

 なんでいつも……タイミングが悪いんだ!今、私は人生で最大級に勇気を振り絞って聞きたいことを聞いてるんだぞ。それなのに、それなのに。

「あ!望月も!2人で何してんだ?俺がーー」

「うるさい!修斗くん嫌い!ふんっ!」

「はぁ?俺はただお前ら探してただけだろ?なんで怒ってんだよ」

「うるさい!うるさぁーい」

「ちょ、柚子ちゃん、落ち着いて」

 私の心は、光くんからの返答を聞けなかったもどかしさと、それを邪魔した修斗くんへの怒りでいっぱいだ。とりあえず、当たれるものには当たろう!

「修斗くんがっ!修斗くんがっ!」

「俺が何だ??ったく、お前ら姉妹揃っていつも俺に怒りやがって」

「あの、本当に2人とも落ち着いて」

 お姉ちゃんに口では敵わないからって、私に当たるのはどうなんだ!もう怒ったぞ!と、修斗くんに突進をしようとした所で、光くんが私達の間に入った。……光くんが言うならしょうがないな。

「……それで?修斗くんは何のご用事?柚子忙しいんだけど?」

「どーこが忙しいんだよっ!ったく……。育が探してたぞ」

 私が育を探すことは多いけど、その逆は滅多にない。どうしたんだろう。

「育のピンチだ!光くん行こう!」

 後ろで修斗くんが走るな!とか言ってるような声がしたけど、光くんと一緒に走り出した。育は多分ーー外にいる。




「いーくぅー!どこー?」

「柚子ちゃん!雪降っとるよ!風見はホンマに外におるん?お屋敷の中と違う?」

「育だもん!多分外だよ」

 キョロキョロとお庭を見渡す。また雪が降って、午前中に門番さんが雪かきをしてくれていた所にうっすら雪が積もってきた。

「2人ともうるさいよ」

 ひょこっと雪の影から育が顔を覗かせる。

「育!どうしたの?埋まったの?柚子、育のピンチだと思って急いできたよ!」

「……埋まってないよ。これ、見て」

 育の隣を見ると大きな雪の塊ーー。

「雪だるまやんな!懐かしいなぁ」

「あんまり大きくないけどね」

 雪の塊の正体は雪だるまだった!すごい……大きい!
 というか……かまくらは景観を損ねるけど、雪だるまならいいのか?思わず口から出そうになった言葉を飲み込んだ。光くんがどこか切なそうな表情でそれを見ていたから。声をかけようか、何て言えばいいんだろう。え、でも恋の思い出とか語られたらどうする?

「いったぁーい!」

 悶々と悩む私の右肩に雪玉が当たった。

「変な顔してるから、冷ました方がいいかなって」

「育!やったな!」

 雪玉を作って育に投げつける。すると育はどこから出したのか、既に作ってあった雪玉を投げてくる。

「光くん!ちょっと手伝って!柚子、育のこと倒すまでお屋敷に戻れないわ」

「へ?あの……怒られるで?」

「望むところだね。……望月の手伝いはハンデって事で認めてあげるよ」

「今にそのセリフ後悔させてやるんだからねっ!……光くん、早く雪玉作って」

「え?え?」

 私に押され気味になりながら雪玉を作る光くんと、雪玉を隠し持っている育と3人で雪合戦が始まった。そんな昼下がりだった。




 王暦236年1月18日

 今日はすごい雪だった。
 かまくら作りたかったのに、雪合戦をすることになった。
 光くんと柚子チームと育の対決!
 育って雪玉作ってから投げるまでが早い!
 光くんは雪玉を丁寧に作る派らしいことがわかった。ヒートアップしてたら、修斗くんに怒られた!楽しかったからいいや。


 日記を書き終えて外を見ると、また雪が降っていた。ここ最近また寒くなってきたなぁ、そんなことを考えながら湯たんぽ入れた布団の中に潜り込む。……凍てつくような寒さ、真冬が私に迫ってきていた。
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