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「ディラン、今日は無理だ……」

 それは大型の肉食獣に恐る恐る呼びかけるような、静かな声だった。

「明日の試合は俺にとっては重要なんだ。だから今、お前に身体を与えるわけには行かない。けしてお前のことが嫌いなわけじゃない。わかってくれ」

 ディランが腕の拘束を解くと、レノは腕を上げてディランがしてくれたように頬に手を添わせた。

 微笑む美しい顔は慈愛に満ちていて、ディランの心にも急激に大切にしたいと思う愛おしさが溢れ、戻ってきた。髪が乱れさらされた白い額に口づける。

「愛してる、どこにもやりたくない」
「わかった」
「二年して成人の儀をすませたらすべてオレのものになることも、考えくれ」
「わかった。それまでは誰のものにもならない。約束する」
「だけど今日はこのままあなたに触れさせて。最後まではしないから」

 ずっと年上の男の我儘な懇願に、レノはすべてを許すように優しく微笑み、
獣から人に戻った愛しい相手の額に口づけ返した。

ディランは長い前髪の間に見える大きな金色の瞳に甘い笑みを浮かべ、やわやわとした優しい口づけで泣き濡れたレノの目元を慰める。

 枕元の椀に入れられた甘い花の香り立つ香油をとると、両手で温め、肩、腕、脚と絶妙な力を込めてもみほぐしていった。

 明日の試合に備えての身体の隅々までを緩めるように、ゆったりとさする。
胸のあたりはやや執拗に撫ぜ、指が乳首をかすめるたびにレノは良さげな声を上げ、瞳をとじて感じ入った。こうしていてふられるたびに、脳内で幸せな感情が溢れ出すのを感じる。

 ディランはレノの白い足を広げさせ、すっかり硬さを取り戻したレノの雄を猫がするように舐めあげ、口淫する。

 口に含むと強めにジュッジュと音を立てて吸い上げる。レノは途端に甘い矯声をあげ、足をばたつかせ刺激を逃そうとした。

 ディランはそんな足を押さえつけてより長いストロークで攻め苛む。

 射精の衝撃で跳ね上がる細い腰を押さえつけ、すべてを零さず舐め取り嚥下した。

 まだ敏感に震えるが、とろとろと力の抜けた身体を裏がえし、今度は赤い花が沢山散らされた背中を解すと、尻をほぐしいやらしく撫ぜ、未開の後肛に太い指をゆっくりと食ませる。

「やぁ、こわぃ……」

 体重をかけないように覆い被さり、柔らかな首筋から耳へくちびるを滑らせるようにしながら耳元で囁く。

「大丈夫だから。気持ちよくするだけ。良いところを探させて。いいところを辿る、アタシの指を覚えていて」

 ゆるゆると中挿の真似事のように抜き差しする。
 二本に増やした太い指が腹側の一点を掠めたとき、ヒッと喉が引絞るほどの声が出た。

 その後も絶えず刺激を加えられ、さらに胸も香油を含まされた指でひたすら苛められる。
 胸の刺激は昨日からすっかり泣き所となっており、感じすぎて辛く身悶えて乱れた。

「ああっ…… あなたの中に入りたい。たまらない気持ちよ。レノ……。こんなに狂おしい気持ちになったのは生まれて初めてだわ」

 一度指を抜かれ強い力でひっくり返された。
 見上げると、レノは自分を抱く男の欲にまみれた姿を目にし震えが止まらなくなった。

 褐色の身体は汗の粒でより艶めき、華やかで美しい顔は淫靡なまでの陰が落ちており、清らかで年若い情人を見下ろし目を眇める。

 昨日は風呂の湯の泡で見えなかった長大な屹立は、腹につくほど反り返り、さながら凶器のようにそそり立ってレノを怯えさせた。

「だめ…… だめっ!!」

 レノは足を閉じ、腰を寝具にするように後退るが、その姿を捉えた獲物の最後の足掻きを見るように、ディランは光る金色の瞳で持って見下ろし、肉感的なくちびるを舐めた。

「レノが女の子だったら、この場ですぐに孕ましてやるのに」

 その片足をとって嗜虐的に引きずり下ろし、もう一度今度は指を3本同時に含ませた。
 善さに導くより、中を開くことを目的にしてばらばらと動かす。

「あっ…… あうぅ! 苦しい、やめて」

「男の子なんだから我慢できるわね? ほら、すごく善くしてあげる。可愛く声をあげて。狂ったようになって。アタシを愉しませて」

 自分の手でずしりと重く筋が浮き出た雄を擦りあげながら、同時にレノの前立腺に強い刺激を与え続ける。ビクビクと中がうねり始めた瞬間、しかし指をとめた。レノの蜜壺にはむずむずとした感覚だけで取り残される。

「レノ、とろとろで温かいわ……」

 後肛はきゅうきゅうとディランの指をはみ、先の刺激をねだる。
 自分の陰茎をしごこうとするレノの手を払い、意地悪くじゃました。

「やあ、いきたい! もうやめて!」

「挿れてっていって」

「だめ…… やあぁ! おかしくなる!!」

「アタシが欲しいって強請って。そしたら死ぬほど良くしてあげる。明日からもずっと一緒にいられるわ」

 それは悪魔のような甘美な誘惑で、レノはその手に落ちていきそうになる。しかし気力を振り絞り声を上げた。

「だめ! だめ!」
「強情ねっ」

 ディランは蜜をこぼし続けていたレノの性器をの先をくちくちと刺激し、小さく振られる腰を見て今度はゆるゆると扱きながら、もう一方です指を再び動かし、レノを絶頂に導く。

 細い身体は可哀想なほどガクガクと震えが、過ぎる刺激は痛みより堪難く毒のように身体をおかした。

「あっ!ああっ! もう、いくっいくから!」

 つらいっと泣き喘ぎ続けた声はかすれ裏返るほどだった。
 程なくして高みから降ろされた身体は身が沈むほど柔らかい寝具の上に横たわった。

 目をつぶりぐったりとしたレノの身体を再び引き寄せ抱えあげ、座った足の間に向かい合わせに跨がらせると、片手でまだとぷとぷと吐精するレノの性器と先走りでぬるつく自分のそれとをひとまとめに、甲合わせに擦りあげる。
自然に開いた可愛らしい唇から舌を差し入れ、舐め取りながら抱きしめる。

これを最後に別れなければいけないのかもしれないし、手放してあげるほうが幸せなのかもしれない。

 それでも今は腕の中に身を預ける身体を深く味わい尽くそうとディランは感じ、眉を寄せて口を半ば開いて達する寸前の淫らなレノの顔をじっと見つめながら自らも達した。
長い長い射精を終え、二人分の蜜に濡れた身体をともに寝所に横たえた。


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