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憧れの人

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 恋人になる前から、しょうは柚希のことが好きだった。もっと言えば柚希がβだったころから変わらずに、ずっとだ。

 人懐っこく底抜けに明るい柚希はいつでも高校のバスケ部の中心的存在で、男女どちらもに人気のある花形の選手だった。
 15番を背中に貼り付けてつけて元気いっぱいにコート全体を走り回るプレーや、出番がない時でも率先して仲間に声援を惜しみなくおくる溌剌とした姿勢。
 『晶!   行け! 行け!』と熱く凛と耳に響く柚希の掛け声はいつでも晶の心に真っすぐ届いてとても勇気づけられた。

 周りを明るく照らしてくれる、お日様みたいな笑顔と思いやりに溢れた性格、 会話も豊富でその上茶目っ気のある性格だから、女の子からも可愛くてカッコいいとモテモテだった。
    先輩には可愛がられ、後輩にはちょっと甘いと言われるほどに優しく面倒見が良かったから、みんなが柚希を慕っていたし、もしかしたらただの憧れにとどまらない者もいたかもしれない。晶もその1人だった。

 幸いなことに晶は1人だけ先に先輩たちのチームに入っていたこともあって、特別に可愛がられていた自覚はあった。しかし柚希が誰にでも優しく親切にするのを見て居るのが段々妬ましくなってきて、それで自分の気持ちを実感することができたのだ。ああ、自分はユズ先輩に恋をしているのだなあと。

 いつでも目で追いたくなる、光を反射する水の煌きにも似た、惹きつけられる澄んだ存在感。汗だくでプレイした後なのに、周りと違ってさらさらとした黒髪、室内競技だからといって外を走らないわけではないのに、きめの細かい白い肌は目に眩しい。

 大きな瞳に長いまつ毛、柔らかそうな口元の美しい横顔に見蕩れては、目が合い気がつかれて、『なに?   なんかついてる?? 』とか無邪気な顔でゴシゴシ顔を拭う柚希が可愛くてたまらなかった。

 プレーが終わり飲み物をあおった白い首筋に水が垂れていく様子の艶めかしさ。汗を捲う時にちらりと見える細いが引き締まった腰の括れた稜線が目に焼き付いて、わすれられなかった。その夜はけして本人が口にしないような卑猥な台詞で色っぽく晶を誘ってくる柚希の夢を見てしまい、その後も度々卑怯な劣情に苛まれたこともあった。
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