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よるは、そんな算数みたいな名前じゃないもんっ!
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がうう。
寝そべったままでよるを見てるちっさい銀のモフモフわんちゃんは怒ってるみたい。
でも。
でも、ですね。
きっと痛くてくるしくって、はやくなおしてって言ってるのかもしれないの。なら、よるががんばらないと!
「だ、だいじょうぶ? よる、おくすりとホータイ持ってるよ! お母さんがリュックにいれてくれたの!」
ぐ、るる……。
立ち上がろうとしてるけど、さっきより元気がない!
たいへんだ、はやくしないと!
お母さん、よるがころんだときに、どうしてたっけ……。たしかキズをしょーどくして、バンソウコウはってくれて、そのあとでヒリヒリして痛くって泣いてたよるに……。
そうだ!
お歌を歌って、せなかをポンポンってしながらお歌を歌ってくれたんだ!
それでどんどん痛くなくなって、気がついたら寝ちゃってたんだ。どんなお歌だったっけ?
でも、さきに痛いところを見つけないと!
「ねえねえ、どこが痛いの? ケガしてるならわたしがしょーどくしてホータイ巻いてあげる! ポンポンしてなでなでしてあげる!」
たぶん、声の女のひとが探してたのはこの子だとおもう。助けて、だもんね。この子、ケガしてるもんね。きっとそうだよ、うん。
「……む? 魔人のエリアとなった『エルフの庭に来てみたら、女神のしもべの狼の子と、人間のむすめ、だと?』
「きゃあああああああ?!」
だ、だれ?!
「女神のしもべの子は、魔人にねらわれたか。おい、むすめ…………何だと?! ひ、姫様?!」
声がひくい、大人の男のひとがおどろいてる。
……あたまに、ツノぉ?!
「ミリ姫様ではないですか! な、なぜ魔人のエリアに……いや、そんなはずはない。ミリ姫様は今も魔人ののろいで、ずっと眠りつづけている。それに我ら魔族とは髪の毛も、はだの色もちがう。ミリ姫様はむらさき色の髪、黒髪ではない。お前……いや、ごっほん。あなたの名は何という? わたしはゴート。魔族の『四天王』のひとり」
何かひとりでいっぱいしゃべってる。
だれかとかんちがいしてるみたい。
つのがふたつ、頭でつんつんしてる。
変装パーティー、やってるのかなあ。
あ、名前!
「わたしの名前は『たかなしよる』! よるは、そんな算数みたいな名前じゃないもん!」
「算数、とは?」
「それに、今いそがしいんです! このわんちゃんを助けてあげるところなんだから、お姫様って言われたってよろこんだりしないんだから! でも、十回くらい言ってくれたらよる、うふふってなっちゃうかも! あ、ツノのおじさんはこの子が元気になるおくすり、持ってませんかぁ!」
「む。よくわからないことを次から次へというところは、まさにミリ姫様……」
ミリとかセンチとか、いくら『姫』って言われても、お返事しないんだから!
『よる、いたあっ! きさま、魔族の四天王のゴートか!』
「ぬ? 何だこの黒い猫は」
「あー! ひぐれ!」
ひぐれだあ!
よかった!
夢の中に来てくれたんだ!
『よるにケガをさせたらゆるさないぞ! しゃあああ!』
「おっと、何をする」
『あっ……』
あ!
そんなところ掴んじゃダメえ!
「ツノのおじさん! 猫はくびのうしろを掴んじゃダメなのお! うにー、ってかわいくってポヤポヤな顔してるけど、目がくりくりしてるけど! 『そこはダメ! はなしてえ!』ってきっとたいへんなんだから!」
『おい、ゴート! ひきょうだぞ! 猫つかみされたらうごけないじゃないか!』
「わたしは飛びかかられたから、つかまえただけなんだが……」
ぶらーん、しちゃダメえー!
寝そべったままでよるを見てるちっさい銀のモフモフわんちゃんは怒ってるみたい。
でも。
でも、ですね。
きっと痛くてくるしくって、はやくなおしてって言ってるのかもしれないの。なら、よるががんばらないと!
「だ、だいじょうぶ? よる、おくすりとホータイ持ってるよ! お母さんがリュックにいれてくれたの!」
ぐ、るる……。
立ち上がろうとしてるけど、さっきより元気がない!
たいへんだ、はやくしないと!
お母さん、よるがころんだときに、どうしてたっけ……。たしかキズをしょーどくして、バンソウコウはってくれて、そのあとでヒリヒリして痛くって泣いてたよるに……。
そうだ!
お歌を歌って、せなかをポンポンってしながらお歌を歌ってくれたんだ!
それでどんどん痛くなくなって、気がついたら寝ちゃってたんだ。どんなお歌だったっけ?
でも、さきに痛いところを見つけないと!
「ねえねえ、どこが痛いの? ケガしてるならわたしがしょーどくしてホータイ巻いてあげる! ポンポンしてなでなでしてあげる!」
たぶん、声の女のひとが探してたのはこの子だとおもう。助けて、だもんね。この子、ケガしてるもんね。きっとそうだよ、うん。
「……む? 魔人のエリアとなった『エルフの庭に来てみたら、女神のしもべの狼の子と、人間のむすめ、だと?』
「きゃあああああああ?!」
だ、だれ?!
「女神のしもべの子は、魔人にねらわれたか。おい、むすめ…………何だと?! ひ、姫様?!」
声がひくい、大人の男のひとがおどろいてる。
……あたまに、ツノぉ?!
「ミリ姫様ではないですか! な、なぜ魔人のエリアに……いや、そんなはずはない。ミリ姫様は今も魔人ののろいで、ずっと眠りつづけている。それに我ら魔族とは髪の毛も、はだの色もちがう。ミリ姫様はむらさき色の髪、黒髪ではない。お前……いや、ごっほん。あなたの名は何という? わたしはゴート。魔族の『四天王』のひとり」
何かひとりでいっぱいしゃべってる。
だれかとかんちがいしてるみたい。
つのがふたつ、頭でつんつんしてる。
変装パーティー、やってるのかなあ。
あ、名前!
「わたしの名前は『たかなしよる』! よるは、そんな算数みたいな名前じゃないもん!」
「算数、とは?」
「それに、今いそがしいんです! このわんちゃんを助けてあげるところなんだから、お姫様って言われたってよろこんだりしないんだから! でも、十回くらい言ってくれたらよる、うふふってなっちゃうかも! あ、ツノのおじさんはこの子が元気になるおくすり、持ってませんかぁ!」
「む。よくわからないことを次から次へというところは、まさにミリ姫様……」
ミリとかセンチとか、いくら『姫』って言われても、お返事しないんだから!
『よる、いたあっ! きさま、魔族の四天王のゴートか!』
「ぬ? 何だこの黒い猫は」
「あー! ひぐれ!」
ひぐれだあ!
よかった!
夢の中に来てくれたんだ!
『よるにケガをさせたらゆるさないぞ! しゃあああ!』
「おっと、何をする」
『あっ……』
あ!
そんなところ掴んじゃダメえ!
「ツノのおじさん! 猫はくびのうしろを掴んじゃダメなのお! うにー、ってかわいくってポヤポヤな顔してるけど、目がくりくりしてるけど! 『そこはダメ! はなしてえ!』ってきっとたいへんなんだから!」
『おい、ゴート! ひきょうだぞ! 猫つかみされたらうごけないじゃないか!』
「わたしは飛びかかられたから、つかまえただけなんだが……」
ぶらーん、しちゃダメえー!
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