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【和樹とファルルの画像あり】お母さんの気持ちと、ケンカの理由①
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もう。
お父さんってば、何でわかってくれないのかしら。月の女神だった私のおねがいで、わたしたちの世界を助けに来てくれた和樹。
勇者として魔族と戦ってくれたあの頃はあんなに話を聞いてくれて、優しくてカッコよかったのに。
とかいって。
今も優しくてカッコいいのは変わらないんだけどね、えへへ。
だけど。
今回はちょっとガンコ。わかってほしいの。わかってよ、和樹。よるの未来にかかわることなんだから。わたしたちの大切な、よる。
「春……いや、ファルル。君の言ってること、わからなくはない。だけど僕らじゃなくって、よるがグランディア……君が暮らしていて俺が召喚された異世界に呼ばれるっていうのは、やっぱり考えすぎじゃないのか?」
そんな風にしかめっツラをしてるけど、知ってるんだから。
「でも、よるはあの世界で勇者になった和樹と、月の女神だったわたしの子どもだよ? 何かの力を持っていてもおかしくないよ。ふだんは何も感じないけれど、ちゃんとした理由があって、あの子が泣いたり怒ったりするときに……ふしぎな力を感じるときがあるって言ったでしょ? 和樹だってそう言ってたじゃない」
「そりゃ、そうだけど……」
知ってるんだから!
昔からゲームしてるときやキャンプに行ったときに呪文の言いかたとか教えてるの。しかも、召喚とか強い魔法ばっかり。心のどこかで、和樹も心配してるんじゃないの?
わたしだってよるのために、準備をしてあげたいの。よるの未来はよるのものだし、よるが自分の力でつかみ取らなきゃいけないしあわせだってあるよ。
でも。
わたしたちがしてあげれることだっていっぱいある。よるがふしあわせになるような、悲しい気持ちになるような未来は消しておきたいんだよ。
そのためにも、いちどわたしたちのグランディアを見せておきたい。
なのに、この話をするといつも和樹、むむむって顔をするの。和樹のばかばか、わからんちん!
●
「……俺、やっぱり反対だな。あの世界を見せたい気持ちはわかるよ。グランディアは美しいところだ。神様と生き物、自然が手をとりあって生きてる。でもさ、危険だって多い」
「それはそうだけど……」
「今は魔族と手を取りあって仲良くしているけど、魔族全員とわかりあえたってわけじゃないでしょ? それだけじゃない。会話や気持ちが通じない、キケンな精霊や生きものだっていっぱいだ。グランディアより安全な日本でくらしているよるが、そんなところに行ってケガしたらどうするのさ!」
「だから、何回も言ってるでしょ! よるをひとりでグランディアに行かせるわけないじゃない! わたしたちといっしょなら……あ、待って和樹! しーっ!」
よるがリビングのドアのスキマから、こっちを見てる!
お父さんってば、何でわかってくれないのかしら。月の女神だった私のおねがいで、わたしたちの世界を助けに来てくれた和樹。
勇者として魔族と戦ってくれたあの頃はあんなに話を聞いてくれて、優しくてカッコよかったのに。
とかいって。
今も優しくてカッコいいのは変わらないんだけどね、えへへ。
だけど。
今回はちょっとガンコ。わかってほしいの。わかってよ、和樹。よるの未来にかかわることなんだから。わたしたちの大切な、よる。
「春……いや、ファルル。君の言ってること、わからなくはない。だけど僕らじゃなくって、よるがグランディア……君が暮らしていて俺が召喚された異世界に呼ばれるっていうのは、やっぱり考えすぎじゃないのか?」
そんな風にしかめっツラをしてるけど、知ってるんだから。
「でも、よるはあの世界で勇者になった和樹と、月の女神だったわたしの子どもだよ? 何かの力を持っていてもおかしくないよ。ふだんは何も感じないけれど、ちゃんとした理由があって、あの子が泣いたり怒ったりするときに……ふしぎな力を感じるときがあるって言ったでしょ? 和樹だってそう言ってたじゃない」
「そりゃ、そうだけど……」
知ってるんだから!
昔からゲームしてるときやキャンプに行ったときに呪文の言いかたとか教えてるの。しかも、召喚とか強い魔法ばっかり。心のどこかで、和樹も心配してるんじゃないの?
わたしだってよるのために、準備をしてあげたいの。よるの未来はよるのものだし、よるが自分の力でつかみ取らなきゃいけないしあわせだってあるよ。
でも。
わたしたちがしてあげれることだっていっぱいある。よるがふしあわせになるような、悲しい気持ちになるような未来は消しておきたいんだよ。
そのためにも、いちどわたしたちのグランディアを見せておきたい。
なのに、この話をするといつも和樹、むむむって顔をするの。和樹のばかばか、わからんちん!
●
「……俺、やっぱり反対だな。あの世界を見せたい気持ちはわかるよ。グランディアは美しいところだ。神様と生き物、自然が手をとりあって生きてる。でもさ、危険だって多い」
「それはそうだけど……」
「今は魔族と手を取りあって仲良くしているけど、魔族全員とわかりあえたってわけじゃないでしょ? それだけじゃない。会話や気持ちが通じない、キケンな精霊や生きものだっていっぱいだ。グランディアより安全な日本でくらしているよるが、そんなところに行ってケガしたらどうするのさ!」
「だから、何回も言ってるでしょ! よるをひとりでグランディアに行かせるわけないじゃない! わたしたちといっしょなら……あ、待って和樹! しーっ!」
よるがリビングのドアのスキマから、こっちを見てる!
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