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12 追憶
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額にびっしりと汗を浮かべながら、『極氷の星々』で凍り付いた大地に座り込んで瞑想しているユウの傍で、レラは空と大地に色よりどりに広がっている『星の子』達を眺めていた。
それぞれが様々な色の眩い光をユウに向けて放っては、役目を終えたかのようにユウの体へと吸収されていく。
●
(本来ならこのような真似をせずとも、星の命のみ再生するのであればユウの通常の魔力だけで十分なのだがな)
ユウの頭上に浮かぶ白銀の球体に絶え間なく注ぎ込まれていく光にレラは溜め息をつく。
救う為とはいえ、星が生まれ、大いなる宇宙の中で育んできたその歴史を書き換えてしまう自らにユウは忌避感を持っている。
だが。
ユウは、それでも拾っていく。自分を呼んだ星に降り立ち、目にした痛み、叫び、哀しみを。
(『力を使い果たしてしまえば、次の星に呼ばれた時に何も救えない』などと自らに封印をかけているが、皮肉なモノだ。救った星がお前に託した力も、全てを受け入れられる器にも気付いていないのだから)
吸収される寸前に、愛おしげにユウに纏わりつく『星の子』達の光を視界に収めつつ、レラはユウの眷属となって行動を共にし始めた頃の事を思い苦笑いを浮かべた。
(あの星も状況が似ていたな。……私に、感情というものが備わっているなどユウと出逢うまでは知りもしなかった。私に涙を溢させるのはお前くらいだ。わかっているのか、ユウよ)
レラはジト目を閉じ、記憶を紐解いた。
●
ブアッ!
風斬り音が鳴る。
レラの大鎌の切っ先が、ユウの胸へと振り下ろされた。
大鎌と命が重なり合った瞬間。
ユウはレラを視界に捉えて、
『ありがとう』
その言葉と共に、瞳を閉じた。
●
横たわるユウの傷から、銀の光が溢れ出す。
光は空で球体を形どり、後続の光を吸収していく。
レラは膝をつき、横たわるユウを抱き起こした。ユウは呼吸を止め、ただ静かにレラの腕の中で目を閉じている。
(眷属達の集めた力とコイツの魂から流れ出る力が途絶えた後に、宇宙の創生に関わる神レベルを消滅させるほど力を籠めた『崩魂』の重ね掛けが発動するように遅延させた。この星を救おうとしたその行いに対する手向けだ)
ユウの胸から溢れ出ては球体に向かう白色の光。それは、レラには理解する事の出来ない、自らの命を代償にして星の再生を補う行為。
(さあ、数奇な因果律から解き放されるとよい。突然の滅びに泣き叫ぶ星達にはすまぬが、コイツの力は異様すぎる。そもそも、コイツは自らが願って星を救っている訳ではない)
レラは、ユウの力から溢れる力が途絶えるのを待ち続けた。
それぞれが様々な色の眩い光をユウに向けて放っては、役目を終えたかのようにユウの体へと吸収されていく。
●
(本来ならこのような真似をせずとも、星の命のみ再生するのであればユウの通常の魔力だけで十分なのだがな)
ユウの頭上に浮かぶ白銀の球体に絶え間なく注ぎ込まれていく光にレラは溜め息をつく。
救う為とはいえ、星が生まれ、大いなる宇宙の中で育んできたその歴史を書き換えてしまう自らにユウは忌避感を持っている。
だが。
ユウは、それでも拾っていく。自分を呼んだ星に降り立ち、目にした痛み、叫び、哀しみを。
(『力を使い果たしてしまえば、次の星に呼ばれた時に何も救えない』などと自らに封印をかけているが、皮肉なモノだ。救った星がお前に託した力も、全てを受け入れられる器にも気付いていないのだから)
吸収される寸前に、愛おしげにユウに纏わりつく『星の子』達の光を視界に収めつつ、レラはユウの眷属となって行動を共にし始めた頃の事を思い苦笑いを浮かべた。
(あの星も状況が似ていたな。……私に、感情というものが備わっているなどユウと出逢うまでは知りもしなかった。私に涙を溢させるのはお前くらいだ。わかっているのか、ユウよ)
レラはジト目を閉じ、記憶を紐解いた。
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ブアッ!
風斬り音が鳴る。
レラの大鎌の切っ先が、ユウの胸へと振り下ろされた。
大鎌と命が重なり合った瞬間。
ユウはレラを視界に捉えて、
『ありがとう』
その言葉と共に、瞳を閉じた。
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横たわるユウの傷から、銀の光が溢れ出す。
光は空で球体を形どり、後続の光を吸収していく。
レラは膝をつき、横たわるユウを抱き起こした。ユウは呼吸を止め、ただ静かにレラの腕の中で目を閉じている。
(眷属達の集めた力とコイツの魂から流れ出る力が途絶えた後に、宇宙の創生に関わる神レベルを消滅させるほど力を籠めた『崩魂』の重ね掛けが発動するように遅延させた。この星を救おうとしたその行いに対する手向けだ)
ユウの胸から溢れ出ては球体に向かう白色の光。それは、レラには理解する事の出来ない、自らの命を代償にして星の再生を補う行為。
(さあ、数奇な因果律から解き放されるとよい。突然の滅びに泣き叫ぶ星達にはすまぬが、コイツの力は異様すぎる。そもそも、コイツは自らが願って星を救っている訳ではない)
レラは、ユウの力から溢れる力が途絶えるのを待ち続けた。
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