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9 私を、もよもよさせるな。

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 ユウとレラの最初の邂逅で、二人が対峙する事はなかった。

 その星から力を吸い上げる埒外らちがいからの力の回収を優先したユウは、フェルネやノルンを始めとする『星の子』達と共に埒外を打ち倒し、星の力を回収した。

 埒外の存在同様にユウを危険視し始めたレラに対して、自分が何故この星にいるのかを極力簡潔に説明した上で、ユウはレラに願いを口にした。


 その言葉は、この宇宙が開闢した遥か昔から存在しているレレイア=ラライアをもってしても、到底理解が追い付かない言葉であった。



 僕を殺してほしい。
 そうすれば、この星は再生される。



 その異質な願いに首を捻ったが、死を願う者を前にして思い留まらせる理由もその気もなかったレラは何の躊躇ちゅうちょもなく、魂を消滅させるべくユウの胸に大鎌の切っ先を振り落とした。

 地に倒れ伏したユウの体から溢れ出る力の大きさと星を覆っていく球体魔法陣に眉を顰めながら、イレギュラーはあったが役目を終えたと確信をしたレラはその星から去った。

 そして。

 惑星間戦争の末に滅びゆく星の傍を通りがかったレラは唐突に出現したユウに驚愕した。自らが魂を消滅させられない存在など皆無だったのだ。

 レラは請われて再度大鎌を振るい、また別の場所で邂逅する事を繰り返すうちに、自らの力が及ばないユウと行動を共にし始めたのであった。





 ユウとレラはエイダート王国に到着してしばらくの間、神樹から漏れ出た力を帯びて活性化した魔物や妖精、精霊といった人外の者達をこの星の輪廻に還しながら、『神樹から漏れ出た星の力』を集めていた。

 それと同時に二人がエイダートの現状を調べた上で分かった事は、ユウとレラが今までに見てきた、意志ある者の欲が呼んだ星の末路だった。

 神樹を手中に収めた後にその力を用いた魔道兵器を開発し、周囲の国を吞み込んで強大な王政国家を作り上げたエイダート。

 威を示し続け、更に自らの国の勢力の拡大と豊かさを求める。力を得た者達の誰しもが望む、輝かしい未来と盤石な国の姿。

 だが、他国を攻め落として我が利を得ようとする国が、自らに歯止めをかけられる訳がない。神樹の力を以てエイダートの快進撃は続いた。

 が。 

 とある時期を境にしてその勢いは止まった。
 神樹から力を取り出す供給施設が限界を超えたのだ。

 そうして、施設内で制御できずに漏れ出た力がエイダート以外にも力を与え始めただけでなく、ありとあらゆるものに降り注いでいき、エイダートはこの星の歴史の中で例を見ない程に闘いを繰り広げる悲惨な国へと変貌していった。

 力の管理ができぬままに施設を限界稼働させていたエイダートに、その力を浴びた獣達が人外が更なる力を求めて神樹に押し寄せた。そこに神樹を力をもっと我らに、と小国が連合軍となって襲い掛かる。

 結果。 

 その危機を打破しようと神樹から更なる力を搾取する為に稼働させていた施設が大爆発を起こした。一瞬のうちにエイダートと連合軍の好守共々をも巻き込んで消し飛ばしていく神樹の力の暴威の中で、そよ風に吹かれるが如く大地からその光景を眺めるレラとユウがいた。





「ま、星にとっては青天の霹靂といったところだったな。欲まみれの者は、足元しか見れんというお手本だ。で、ここからどうするつもりだ?」

 そう言って肩を竦めたレラに、ユウは溜め息をついた。

「この星の命達には悪いけど、もう星の輪廻の中に帰ってもらうしかない。『星の子』達にその力を集めて貰ったら、この星ではもう魔法を使えないように『禁忌』に書き換えた方がいいかもしれない」
「いっそ、星以外の生命の活動ができないようにしたらどうだ? お前は星を救いに、ここに呼ばれて来た。それさえ叶えば、他の事は些事に過ぎん」
「……」

 その言葉を聞いて、静かに目を伏せたユウ。
 
「その顔をやめろ、わかっている。私を、させるな」

 レラは肘でユウの脇腹に一撃を加えた。

「ぐっ?!」
「一人で抱え込むな。全く、お前というやつはは……」



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