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【挿し絵あり】3 天冥門と『歌う精霊と花の惑星』ノルン
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ふうう。
大きく息を吐き出したレラがユウへと向かう。
「ありがとう、レラ」
ユウの両手がレラの片手を包む。
「うむ。……この手を離せ、ほわほわさせるな」
レラは、気遣わしげなユウの鼻を摘まむ。
「話は後だ。開くぞ」
レラの黒い三日月が通り過ぎた蒼天に浮かぶひとすじの裂け目が、ゆっくりと口を開けていく。
その、黒よりも昏い闇の中で。
女が、佇んでいた。
「あ奴が、この星の生と死を司る者らしい」
漆黒の髪を靡かせ、同じ色のドレスを纏った女は、レラが頷きと同時に両手ですくった砂を零すような動きを見せた。金色の粒が、大地に向かって降り注ぐ。
女はユウをジッと見つめ、深く頭を下げた。
「ユウがこの星に何をもたらすか、あ奴……エステランダも分かっているのだろう。ま、私にできる事など、お前に比べたら些細なものだ。当てにはするなよ?」
戯けて肩をすくめた。
その時。
二人の耳に、子供達の叫びが聞こえてきた。
●
「ノルン、出てこれるかい?」
ユウが優しく囁くと、傍らの空間が揺らいだ。
" 歌う精霊と花の惑星 ノルン "
ぴょん!
ユウの体から、小さな緑の光球が飛び出した。
そして緑髪の女の子姿に変貌したノルンはユウの服を両手で握りしめて嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「あの子供達がケガしてたら治してほしいんだ」
ノルンの傍で遠く指を差すユウに、
ふんす!
ふんすっ!
ノルンはガッツポーズをしながら何度も頷く。
そこに、フェルネが駆けてきた。体高三メートルはあろうかという、ユウ達が見上げるその姿はフェルネ本来の姿である。
「フェルネ、悪いけどノルンを乗せて子供達の所へ戻ってほしいんだ」
ユウのその言葉に、フェルネは千切れそうな程に尻尾を振り回して応える。
と、そこに。
「ちび子、出番か? よかったな」
『?!』
ニマニマしながらノルンに近寄るレラ。
二人は互いの力の性質上、相性が悪い。
癒しと再生の力を持つノルン。
片や、死を司る力を持つレラ。
他の『星の子』よりレラとの小競り合いが多いノルンが、頬を膨らませてカウンターを放った。
ぐむ。
「な?! 足を踏むな!」
びー。
目を瞑り舌を出したノルンは、伏せていたフェルネにうんしょうんしょ!とよじ登る。
「ちび子を降ろせ! 尻を叩いてやる!」
そう叫んだレラにフェルネは。
ボフーン!!
フェルネの前足を間一髪、大鎌で止めたレラ。
「貴……様! その巨体でお手をするな!」
ふんっ!
ソッポを向いたフェルネが、ノルンを乗せて駆け出す。
「待たんか! 貴様らああぁ!」
大鎌を片手に追いかけていくレラ。
「あはは」
ユウは、レラの『私にできる事など些細なものだ』という言葉を思い出し、呟いた。
「君がいてくれるから……僕達はこうやって笑う事ができるんだ」
大きく息を吐き出したレラがユウへと向かう。
「ありがとう、レラ」
ユウの両手がレラの片手を包む。
「うむ。……この手を離せ、ほわほわさせるな」
レラは、気遣わしげなユウの鼻を摘まむ。
「話は後だ。開くぞ」
レラの黒い三日月が通り過ぎた蒼天に浮かぶひとすじの裂け目が、ゆっくりと口を開けていく。
その、黒よりも昏い闇の中で。
女が、佇んでいた。
「あ奴が、この星の生と死を司る者らしい」
漆黒の髪を靡かせ、同じ色のドレスを纏った女は、レラが頷きと同時に両手ですくった砂を零すような動きを見せた。金色の粒が、大地に向かって降り注ぐ。
女はユウをジッと見つめ、深く頭を下げた。
「ユウがこの星に何をもたらすか、あ奴……エステランダも分かっているのだろう。ま、私にできる事など、お前に比べたら些細なものだ。当てにはするなよ?」
戯けて肩をすくめた。
その時。
二人の耳に、子供達の叫びが聞こえてきた。
●
「ノルン、出てこれるかい?」
ユウが優しく囁くと、傍らの空間が揺らいだ。
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ぴょん!
ユウの体から、小さな緑の光球が飛び出した。
そして緑髪の女の子姿に変貌したノルンはユウの服を両手で握りしめて嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「あの子供達がケガしてたら治してほしいんだ」
ノルンの傍で遠く指を差すユウに、
ふんす!
ふんすっ!
ノルンはガッツポーズをしながら何度も頷く。
そこに、フェルネが駆けてきた。体高三メートルはあろうかという、ユウ達が見上げるその姿はフェルネ本来の姿である。
「フェルネ、悪いけどノルンを乗せて子供達の所へ戻ってほしいんだ」
ユウのその言葉に、フェルネは千切れそうな程に尻尾を振り回して応える。
と、そこに。
「ちび子、出番か? よかったな」
『?!』
ニマニマしながらノルンに近寄るレラ。
二人は互いの力の性質上、相性が悪い。
癒しと再生の力を持つノルン。
片や、死を司る力を持つレラ。
他の『星の子』よりレラとの小競り合いが多いノルンが、頬を膨らませてカウンターを放った。
ぐむ。
「な?! 足を踏むな!」
びー。
目を瞑り舌を出したノルンは、伏せていたフェルネにうんしょうんしょ!とよじ登る。
「ちび子を降ろせ! 尻を叩いてやる!」
そう叫んだレラにフェルネは。
ボフーン!!
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「貴……様! その巨体でお手をするな!」
ふんっ!
ソッポを向いたフェルネが、ノルンを乗せて駆け出す。
「待たんか! 貴様らああぁ!」
大鎌を片手に追いかけていくレラ。
「あはは」
ユウは、レラの『私にできる事など些細なものだ』という言葉を思い出し、呟いた。
「君がいてくれるから……僕達はこうやって笑う事ができるんだ」
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