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2 レレイア=ラライア

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 「ぐあ!」

 男が、大きな熊の魔物に殴られ地面に転がる。

 更に飛び掛かる魔物の爪を横に避けた男は、その顔面を短剣で抉った。

 反撃をされた魔物が、怒りの咆哮を上げる。

「ひいっ」
「うわーん!」
「は、早くこっち! 逃げなきゃダメ!!」

 足を止めた幼い子供二人の手を引き、頼りなげな足取りでふわふわと木の陰を目指す少女。その動きに魔物が反応する。 

「おい、おい熊公! 餌が……逃げちまうぞ?」

 肩で息をする血まみれの男がほくそ笑んで、

 一歩。

 二歩。
 
 よろめきながら後方に下がった。

 まるで。

 邪魔はしねえから、行けと言わんばかりに。

 その動きを見て魔物が子供達へ向かおうとした瞬間に、男の投げた礫がその頭に直撃した。

 グア?!
 グ、ガアアアアアァ!

「ひゃはは……ばーか!」

 ガ、アアア!!

 男に向き直り、再度怒りの咆哮を上げる魔物。

「は! ザマァみやがれ! 俺が手に入れたもんだ! 誰がお前らになんか食わせっかよ……!」

 ニヤニヤと笑う男に、魔物が襲いかかった。

 だが、そこまでだった。銀色の光を纏ったフェルネが魔物に体当たりをしたのだ。

 ガアア?!

 顔面への鋭い体当たりに苦悶の叫びを上げた魔物を踏み台にし、フェルネはくるりと回転する。
 
 瞬間。

 まばゆい光がフェルネを包み込み、弾けた。

「な、何だ?! ぐっ……」

 目が眩み、傷ついた身体をよろめかせて膝をついた男の傍らに、涼やかに魔物をフェルネがいた。
 




 フェルネを見守っているユウの前に、青筋を立てたレラが駆け込んできた。

「フェルネ、必ずやその鼻っ面にお手をしてやる! ……呼んだか?」

 フェルネとの追いかけっこで葉っぱまみれになったレラが、スカートを払った。

「レラ、お願いがあるんだ」

 ユウはレラの耳元で、願いを告げる。
 レラはその顔を見つめて、ため息を吐いた。
 
「……星の記憶から、そ奴の過去が見えたのか」
「うん」
「手向け、か。年端のいかない者どもの前だ。何が起こるか想像のつかないお前ではないだろう」

 コクリと頷いたユウ。

「……その顔をするな。私をもやもやさせるな」

 レラはユウの頬に手のひらをあて、むぎゅう!と視界から押し出した。

「任せるがいい」

 そのままユウの横を通り過ぎ、背を向けたままひらひら、と手を振り歩いていく。

 そして。

 数十歩ほど歩いたレラが、頭上で大鎌をくるりと回転させた。

 光の消えた瞳で空を見やりつつ、最初は時計回りに、途中から逆回りに。大鎌を回転させたまま、レラは言葉を紡ぐ。



" この地の生と死を司る者に告ぐ
 我 『始まり』を冠す レレイア=ラライア
 今 輪廻の理を解き 彼我を繋がん
 この一技 彼の者の為に
 この一言 我の者の為に "



 頭上の回転を止めたレラは、空に向かって大鎌を逆袈裟に振り抜いた。



 ごうっ!



 風を下僕に、天に登っていく黒い三日月。



 斬!



 レラは大鎌を振り払う。


ひらけ、天冥門」


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