当たり前の日常の先に

しんしん

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交通事故

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「賢士!ちょっとこっちに来なさい!」

「うるせぇばばあ!俺に構うな!」

つい思ってもいないことを口にしてしてまった。ここ最近ずっとこうだ。なにか言われるたびになぜかはむかいたくなるのだ。これが反抗期なのかどうなのかは分からないけれども素直になれない自分がいることは確かであった。
下らないことで怒っているという自分は分かっているのだ。それなのになぜか母親には反抗してしまう。なぜなのだろうか。

賢士はカバンをもって家を飛び出した。時刻は午前1時をまわっていた。

『あんなこと…言うはずじゃなかったのにどうして言ってしまったんだ…』

賢士は心の中で後悔したが今となってはもう手遅れである。
とりあえず今日は親友である悟の家にとめてもらうことにした。

ピーンポーン
ガチャ

「どうしたんだ賢士?」

「いやー、また親と喧嘩しちゃってさ、今晩泊めてくれないかな?」

「また~?この間も喧嘩して家飛び出したじゃないか!母さんが心配するぞ!」

「お願いお願い!今日だけでいいから!」

「んもう、しかたねぇな」

賢士は部屋の中へ入っていく。
とそのとき、LINEがなった。みると賢士の母さんからであった。
『賢士、またどうせ悟くんの所にでも行っているのでしょう?あまり行きすぎると迷惑だから戻ってらっしゃい。』
こんなLINEがきていた。
賢士は返信が思い付かなかったのでとりあえず未読スルーすることにした。

「母さんからなんじゃないのか?」

「い、いや、藍からだったよ。」

「ふぅん?まあいいよ。」

悟は全てを分かっていたようであった。母さんからのLINEであることも賢士が嘘をついていることも。
もっとも、賢士がそう感じただけなのかもしれないが…


「賢士、お前はなんで母さんとあんなに喧嘩するんだ?また、お前が反抗したからなんじゃないのか?」

「う、うるせぇ。」

「それで?今回はまたなんで喧嘩したんだ?」

「まあ下らないことなんだがな…」
そう言って賢士は話しはじめた


「母さんがな、いっつも帰りが遅いって言うんだ。俺が部活が終わるとだいたい8時だ。そこから他の奴の家に行ったり遊んだりしているうちに気がつけば10時だ。そこから家に帰ってきて自分の部屋に戻るといきなり、こっちにこいとか言われて行ったら帰るのが遅いとかどーとか言われてムカついたんだ。」

「それで喧嘩になった?…と?」

「そうなんだ。」

「うーん、たしかに10時はちょっと遅いかもしれないな。部活終わったらまっすぐ帰ればいいんじゃないか?」

「まあそうなんだけどよ。なんか帰りたくないっていうか、わかるかな?」

「まあ分からなくも無いけどよ、とりあえず今日は帰った方が良いとおもうぞ。」

「…そうだな」

「あ、あと、『ごめんなさい』を忘れないで言うことだな」

「そ、それはきついな……
まあ頑張ってみるよ」

「おう!んじゃ、はやいとこ帰ってあげな」

「わかった、ありがとうな」

ガチャ

そう言って賢士は部屋を出た。


「ふう、あー言ったけど謝ることなんてできるきがしないや。
とりあえず帰るか…」


とことことことこ

ガチャ

「賢士!今までどこに行ってたんだい!何時だと思ってるの!?」

「うるせぇな。関係ないだろ」

「賢士!」

「あーもう!だまれよクソババァ!」
ガチャン!

賢士は思い切り自分の部屋のドアをしめた。
また酷いことを言ってしまった。そんなことはわかっているはずだ。なのに謝ることもできない。そんな自分に嫌気なさしてたまま朝を迎えることとなった。


~翌日~ (5月1日)

「ふぁ~あ」
いつものように朝を迎えた。なんの代わり映えのしないいつも通りの光景だ。
親はもう仕事に行ったらしい。
カバンを背負って学校に行った。


「おい賢士~、あれからちゃんと謝ったか?そして仲直りしたか?」

「それがしてないんだよ。」

「なんでだよ~、まあ分かってはいたことだけどな」

「帰ってからまた歯向かってしまったわ。」

「うーん、まぁ思春期だしそんなもんかもな。
とりあえず、今日こそ帰ったら即効で謝るんだ。いいな?」

「わかったよ。今日こそはきちんと謝るよ」

「それでいいよ。まあ頑張れよ!」

「おう!」

「なになに~またけんけんはお母さんと喧嘩してるの?」

藍がきいてきた。

「うるさいな。お前には関係ないだろ」

「ふふん、こんな面白い話聞き逃すわけにはいかないわね!」

「あっちいけいけ」

「ちぇ、つまんないな」


そして部活も終わり家に帰った。

「ふぅー、あれ?今日はまだお母さん帰ってきてないな?」

と、そのとき、賢士の電話がなった。

「もしもし?海洋病院の者ですが、桐岡さんで間違いないでしょうか?」

「は、はい」

「実はですね、先ほどお母さんが交通事故に遭いまして」

「交通事故!?」

「はい。それも相当の重症で、まだ意識が戻っていない上に脳への損傷も大きいためもしかすると助からない可能性もあります。とにかく今すぐきてください」

「わ、わかりました」

頭が真っ白になった。まさかこんなことになるなんて夢にも思わなかったからだ。
病院へ向かう賢士の両目にはうっすらと水の膜ができていた。




























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