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出会い
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話は俺が大学を辞めてからすぐ……大体2ヶ月ほど前まで遡る。
……まぁ、『怪奇専門探偵事務所』を設立してすぐの話だと思ってくれれば良い。
『所長:東 厳彦』と書かれた名刺を眺めながら、白いシャツを着た男はため息をついて椅子に寄っかかる。
「ハァ~……盲点だった……」
「いやはや~人外たちをどうすればいいか分からないなんてにゃ~」
「…………」
頭を抱える東を見ながら、由々は山積みになった依頼の書類を指差す。
「だけど、依頼はこんなにどっさり。八方塞がりだにゃ~」
「ハァ~………」
由々との出来事があり、他にも怪奇現象などに苦しむ人を助けたいという思いから勢いでこのような事務所を作ったのだが、除霊する方法はおろか、由々以外の霊的存在が見えないときた。
「……とりあえず……買い出しに行くか……」
「んじゃ行くにゃ~」
買い出しをしている最中、由々が度々体を抜け出してはポルターガイストによるイタズラが続き精神的に疲労し、道端にあったベンチに腰掛ける。
「お前な……」
「いや~ごめんごメンゴ。ほら好きな人をいじめたくなっちゃうアレだにゃ~」
「そう言えばなんでも許されるとか思ってんじゃねぇぞ……」
目線だけを動かし、空中に浮遊している由々を睨む。
「まぁ、もういい…ただ疲れた…依頼どうすればいいんだ……」
がっくしをうなだれていると、そこへ草履のような音が聞こえてきた。
「お~?どうしたんだにいちゃん?死にそうな雰囲気してんなぁ?」
「んあ?」
間抜けな声と共に顔を上げると、黒い袈裟を羽織り、編笠をかぶり、白い髪の毛を後ろで短く結んでいる僧侶のような人が立っていた。そして驚くべきことに僧侶のような格好をしているのに口元にタバコを咥えて、ゆらゆら揺らしていた。
「え……っと、だれです?」
(…アレ……この人あの時の……あれ…なんか思い出せないにゃ~)
「まぁ、俺のこたァ気にするな。ただの破戒僧だぜ」
タバコをゆらゆら揺らしながらニッと笑う自称破戒僧。その後由々に視線を送って、またニッと笑う。
「で、悩み事だろぉ?にいちゃん?」
「え、なんで知っ……」
東が言いかけると、破戒僧は煙を吐き出しながら言葉を紡いだ。
「呵々ッ!【気にすんな】」
「………ってるん……あれ?……あぁ、そうなんですよ。実は悩んでいて」
……なんだろう……何か違和感を覚えたような気がするのだが、それがどうにも煙で覆われたように思い出せない。でもまぁ、この人は事情を知っていて当たり前だよな……
「実は……」
ー説明なうー
「なるほどねぇ~、この嬢ちゃんを助けたのを機に、もっと多くの人を助けたいってか。いいねぇ、ちっとばかし突っ走りすぎだが、そういう若い奴は嫌いじゃねぇぜ?」
タバコを吸いながら、ニィッと笑う破戒僧。
「そうさなー……明日の今頃にまたここに来てみろ、俺の知り合いを呼んでやる」
「ほ…本当ですかッ!!」
「あぁ、いいぜ。『腐れ縁も悪縁も縁』だ。……っとと、いけね忘れるとこだった…」
「……?まだ何か……」
っと、東がいうと、破戒僧はパチンと指を鳴らす。すると『ボンッ!』っと小さく何かが爆発したような音が響き、煙が勢いよく広がった。
「俺んこたぁ、忘れちまいな」
破戒僧はそういうと、そのまま立ち去っていった。
「ゲホっゲホっ……な、なんだあの人は……ん……?……あの人……?」
……って誰だっけ?確か、ここで出会って、何か話をして……えぇっと……?
「なぁ、由々。今俺たち誰と話してたっけ……?」
「う~ん、なんか由々も記憶が煙に覆われたようにぼやけて思い出せないんだにゃ~……ただ、確かお坊さん……?だったような……?」
何か釈然としないまま、俺たちは『明日の今と同じ時間にもう一度ここに来る』という約束だけを覚えていた。
……まぁ、『怪奇専門探偵事務所』を設立してすぐの話だと思ってくれれば良い。
『所長:東 厳彦』と書かれた名刺を眺めながら、白いシャツを着た男はため息をついて椅子に寄っかかる。
「ハァ~……盲点だった……」
「いやはや~人外たちをどうすればいいか分からないなんてにゃ~」
「…………」
頭を抱える東を見ながら、由々は山積みになった依頼の書類を指差す。
「だけど、依頼はこんなにどっさり。八方塞がりだにゃ~」
「ハァ~………」
由々との出来事があり、他にも怪奇現象などに苦しむ人を助けたいという思いから勢いでこのような事務所を作ったのだが、除霊する方法はおろか、由々以外の霊的存在が見えないときた。
「……とりあえず……買い出しに行くか……」
「んじゃ行くにゃ~」
買い出しをしている最中、由々が度々体を抜け出してはポルターガイストによるイタズラが続き精神的に疲労し、道端にあったベンチに腰掛ける。
「お前な……」
「いや~ごめんごメンゴ。ほら好きな人をいじめたくなっちゃうアレだにゃ~」
「そう言えばなんでも許されるとか思ってんじゃねぇぞ……」
目線だけを動かし、空中に浮遊している由々を睨む。
「まぁ、もういい…ただ疲れた…依頼どうすればいいんだ……」
がっくしをうなだれていると、そこへ草履のような音が聞こえてきた。
「お~?どうしたんだにいちゃん?死にそうな雰囲気してんなぁ?」
「んあ?」
間抜けな声と共に顔を上げると、黒い袈裟を羽織り、編笠をかぶり、白い髪の毛を後ろで短く結んでいる僧侶のような人が立っていた。そして驚くべきことに僧侶のような格好をしているのに口元にタバコを咥えて、ゆらゆら揺らしていた。
「え……っと、だれです?」
(…アレ……この人あの時の……あれ…なんか思い出せないにゃ~)
「まぁ、俺のこたァ気にするな。ただの破戒僧だぜ」
タバコをゆらゆら揺らしながらニッと笑う自称破戒僧。その後由々に視線を送って、またニッと笑う。
「で、悩み事だろぉ?にいちゃん?」
「え、なんで知っ……」
東が言いかけると、破戒僧は煙を吐き出しながら言葉を紡いだ。
「呵々ッ!【気にすんな】」
「………ってるん……あれ?……あぁ、そうなんですよ。実は悩んでいて」
……なんだろう……何か違和感を覚えたような気がするのだが、それがどうにも煙で覆われたように思い出せない。でもまぁ、この人は事情を知っていて当たり前だよな……
「実は……」
ー説明なうー
「なるほどねぇ~、この嬢ちゃんを助けたのを機に、もっと多くの人を助けたいってか。いいねぇ、ちっとばかし突っ走りすぎだが、そういう若い奴は嫌いじゃねぇぜ?」
タバコを吸いながら、ニィッと笑う破戒僧。
「そうさなー……明日の今頃にまたここに来てみろ、俺の知り合いを呼んでやる」
「ほ…本当ですかッ!!」
「あぁ、いいぜ。『腐れ縁も悪縁も縁』だ。……っとと、いけね忘れるとこだった…」
「……?まだ何か……」
っと、東がいうと、破戒僧はパチンと指を鳴らす。すると『ボンッ!』っと小さく何かが爆発したような音が響き、煙が勢いよく広がった。
「俺んこたぁ、忘れちまいな」
破戒僧はそういうと、そのまま立ち去っていった。
「ゲホっゲホっ……な、なんだあの人は……ん……?……あの人……?」
……って誰だっけ?確か、ここで出会って、何か話をして……えぇっと……?
「なぁ、由々。今俺たち誰と話してたっけ……?」
「う~ん、なんか由々も記憶が煙に覆われたようにぼやけて思い出せないんだにゃ~……ただ、確かお坊さん……?だったような……?」
何か釈然としないまま、俺たちは『明日の今と同じ時間にもう一度ここに来る』という約束だけを覚えていた。
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