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一章「ラビリンスゲーム」
ある大きなお屋敷
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ある町の一角に存在している、中々に大きな屋敷があった。ここの主人は数日前から行方不明になってしまい、その子息も行方不明になっていたのだった。屋敷の主人の妻も子息が行方不明になる数日前に亡くなっていたのだった。この広大な屋敷には数人の使用人が住み込みで働いており、主人がどんな人物かも理解しているのだが、それでも必ず屋敷に帰ってくる人ではあった。使用人達はいつでも主人を迎えられるように屋敷を掃除していたが、それでも今この屋敷には数人の使用人しか動いていない。汚れなどすぐになくなってしまい、使用人達もそれぞれ主人のことを心配していたのであった。
ある日、髭の立派な使用人のリーダーが切り出した。
「どうしたものでしょうかな……旦那様も、御坊ちゃまもおかえりになりません……」
茶髪のメイドが話す。
「お給料は今年度分はもらっていますが……お部屋も廊下ももうお掃除するからところがありません……」
そんなこんなで、その場にいた使用人やメイド達は揃ってため息をついていた。そんな中、表情が氷のように冷たい、真顔に近い顔をしたメイドがカツカツと豪華な階段を降りて来た。それに気づいたリーダーが声をかけた。
「おや?どうされました藍堂(アイドウ)さん?その荷物は?」
藍堂と呼ばれたメイドはジュラルミンケースを片手にメイド服のまま外出しようとしているようだった。
「私は誠也(セイヤ)お坊ちゃんの専属メイドです。私はお坊ちゃんを探しに行きます」
「え……ちょ、あ、藍堂さん?御坊ちゃまも奥様を救えず思うところがあって、行方をくらましているのでは……?」
すると、藍堂と言われたメイドはその氷のような表情を少しだけ悲しそうに変え、話し始める。
「私の思い過ごしならそれで構いませんが、もし犯罪者に連れ去られていたり、陰謀に巻き込まれているのであれば看過できません。私は御坊ちゃまを見つけるまではここには帰らないつもりですので。では」
それだけを端的に伝えると、藍堂はそのまま屋敷を後にしてしまった。
取り残された使用人やメイド達はポカンとしていた。
リーダーがハッとして、呼び戻そうと思ったが、すでに藍堂の姿がどこにもなかった。
青みがかった長い髪をなびかせながら、藍堂は歩みを進める。全ては彼女の御坊ちゃまのために。
ある日、髭の立派な使用人のリーダーが切り出した。
「どうしたものでしょうかな……旦那様も、御坊ちゃまもおかえりになりません……」
茶髪のメイドが話す。
「お給料は今年度分はもらっていますが……お部屋も廊下ももうお掃除するからところがありません……」
そんなこんなで、その場にいた使用人やメイド達は揃ってため息をついていた。そんな中、表情が氷のように冷たい、真顔に近い顔をしたメイドがカツカツと豪華な階段を降りて来た。それに気づいたリーダーが声をかけた。
「おや?どうされました藍堂(アイドウ)さん?その荷物は?」
藍堂と呼ばれたメイドはジュラルミンケースを片手にメイド服のまま外出しようとしているようだった。
「私は誠也(セイヤ)お坊ちゃんの専属メイドです。私はお坊ちゃんを探しに行きます」
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すると、藍堂と言われたメイドはその氷のような表情を少しだけ悲しそうに変え、話し始める。
「私の思い過ごしならそれで構いませんが、もし犯罪者に連れ去られていたり、陰謀に巻き込まれているのであれば看過できません。私は御坊ちゃまを見つけるまではここには帰らないつもりですので。では」
それだけを端的に伝えると、藍堂はそのまま屋敷を後にしてしまった。
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