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無神機関編
26話
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穢れと戦う神社の内、最大最強を誇る一ノ門大社、山を切り開いて作ったような巨大な敷地を誇る。
その中の執務室に彼は居た。万年筆で積み重なる書類を端から端まで丁寧に処理している。文字は達筆で非の打ち所が無い。筆運びは流れる水の如く。
その男はスラスラと莫大な量の書類を片付けていた。
「し、白獅子様ッ!支部の方から神守の援軍要請が!」
「白獅子様、こちら各地支部の消耗品、及び必需品の要請書類となります」
「白獅子様ッ!!一ノ門大社の北部支部にて穢れた神が出現したとの報告が!」
「白獅子様ァァ~、こちらの案件なのですが~……」
「白獅子様ッ!」
「白獅子様ァ!」
「白獅子様ッッ」
一ノ門の巫女達から、休みなく名前を呼ばれる彼は落ち着いて一つづつ処理をしていく。
一ノ門大社直属部隊 『六武衆』は何も戦力としてだけではない。執務や情報の処理、また各地の支部への救援等にも赴く事がある。
(……流石に多いですね…四方がいればまだ回しやすいのですが…)
生憎と四方は現在、白獅子の指示で別任務にあたっていた。
そんな中、巫女の一人がパタパタと駆け寄ってくる。
「し、白獅子様、二ヶ宮からご連絡が…」
「二ヶ宮神社から?……どなたからでしょう?」
白獅子が聞くと、巫女は答える。
「た、谷透と名乗る殿方から……」
言うや否や、白獅子は万年筆を置き、巫女に寄る。
「谷透さんに『すぐに行く』とお伝え下さい」
白獅子は白く輝く将校のような外套を羽織ると、駆け足で執務室を出る。
その様子を見た他の巫女や神守は、ポツリと呟く。
「えーっと……」
「『谷透』って確か……」
「あの『穢祓い』…ですよね…」
神守や巫女よりも穢祓いの事を優先された事に、ちょこーっと面白くない彼らだった。
通信用の陣の前には、巫女が一人通信を繋げていた。白獅子は彼女の肩に手を置くと、通信を変わる。
「ただいまかわりました。白獅子です」
『お?よーやく繋がった?』
声のトーン、そしてこの気兼ねのない言葉。間違いなく彼だ。
「谷透さんですね。今は二ヶ宮神社にいると聞いていますが、何かあったのでしょうか?」
『あぁ、それがですね。ちょいと困ったことになっちまいましてね……』
白獅子の問いに谷透は大まかな流れを伝える。
「なるほど、『無神機関』の一部が直接こちらに接触してきたと……しかしなるほど……『弾丸』は非常に危険ですね。神殺しがあちらこちらで起きかねない」
『えぇ。で、『無神機関』に乗り込むためにちょっと援軍が欲しいんですが……』
白獅子はトーンを落として話す。
「私としても加勢に行きたいのは山々なんですが、『シキヨ』などの上位個体への警戒、各地の支部の状況確認の書類確認で少々手が離せません。その蒼糸という青年の言った『シント』が本当に『神人』だとすれば、私も動かない訳には行きません……それまで少し時間がかかるかも知れませんが、六武衆を派遣するように手配します」
「ありがとうございます!!」
そう言って二、三挨拶を交わすと、通信を切る。谷透は戻ると皆に白獅子の言葉をそのまま伝えた。
「ん~、あんま悠長にはしてられないって感じぃ、なんだけど…」
「大丈夫だ。あの人は…」
谷透は続ける。
「こういう時、憎いほど良いタイミングで動いてくれるから」
「それならいいんですがね…」
蒼糸との会話が終わったあと、谷透はふと違和感を覚える。
(……そういえば、白獅子さん『神人』なら動かなきゃ行けないって言ってたけど、神社の規定でもあるのか?)
「谷透さーん」
「おー、今行くー」
ふと浮かんだ疑問は、仄の呼び声と共に消えていった。
その中の執務室に彼は居た。万年筆で積み重なる書類を端から端まで丁寧に処理している。文字は達筆で非の打ち所が無い。筆運びは流れる水の如く。
その男はスラスラと莫大な量の書類を片付けていた。
「し、白獅子様ッ!支部の方から神守の援軍要請が!」
「白獅子様、こちら各地支部の消耗品、及び必需品の要請書類となります」
「白獅子様ッ!!一ノ門大社の北部支部にて穢れた神が出現したとの報告が!」
「白獅子様ァァ~、こちらの案件なのですが~……」
「白獅子様ッ!」
「白獅子様ァ!」
「白獅子様ッッ」
一ノ門の巫女達から、休みなく名前を呼ばれる彼は落ち着いて一つづつ処理をしていく。
一ノ門大社直属部隊 『六武衆』は何も戦力としてだけではない。執務や情報の処理、また各地の支部への救援等にも赴く事がある。
(……流石に多いですね…四方がいればまだ回しやすいのですが…)
生憎と四方は現在、白獅子の指示で別任務にあたっていた。
そんな中、巫女の一人がパタパタと駆け寄ってくる。
「し、白獅子様、二ヶ宮からご連絡が…」
「二ヶ宮神社から?……どなたからでしょう?」
白獅子が聞くと、巫女は答える。
「た、谷透と名乗る殿方から……」
言うや否や、白獅子は万年筆を置き、巫女に寄る。
「谷透さんに『すぐに行く』とお伝え下さい」
白獅子は白く輝く将校のような外套を羽織ると、駆け足で執務室を出る。
その様子を見た他の巫女や神守は、ポツリと呟く。
「えーっと……」
「『谷透』って確か……」
「あの『穢祓い』…ですよね…」
神守や巫女よりも穢祓いの事を優先された事に、ちょこーっと面白くない彼らだった。
通信用の陣の前には、巫女が一人通信を繋げていた。白獅子は彼女の肩に手を置くと、通信を変わる。
「ただいまかわりました。白獅子です」
『お?よーやく繋がった?』
声のトーン、そしてこの気兼ねのない言葉。間違いなく彼だ。
「谷透さんですね。今は二ヶ宮神社にいると聞いていますが、何かあったのでしょうか?」
『あぁ、それがですね。ちょいと困ったことになっちまいましてね……』
白獅子の問いに谷透は大まかな流れを伝える。
「なるほど、『無神機関』の一部が直接こちらに接触してきたと……しかしなるほど……『弾丸』は非常に危険ですね。神殺しがあちらこちらで起きかねない」
『えぇ。で、『無神機関』に乗り込むためにちょっと援軍が欲しいんですが……』
白獅子はトーンを落として話す。
「私としても加勢に行きたいのは山々なんですが、『シキヨ』などの上位個体への警戒、各地の支部の状況確認の書類確認で少々手が離せません。その蒼糸という青年の言った『シント』が本当に『神人』だとすれば、私も動かない訳には行きません……それまで少し時間がかかるかも知れませんが、六武衆を派遣するように手配します」
「ありがとうございます!!」
そう言って二、三挨拶を交わすと、通信を切る。谷透は戻ると皆に白獅子の言葉をそのまま伝えた。
「ん~、あんま悠長にはしてられないって感じぃ、なんだけど…」
「大丈夫だ。あの人は…」
谷透は続ける。
「こういう時、憎いほど良いタイミングで動いてくれるから」
「それならいいんですがね…」
蒼糸との会話が終わったあと、谷透はふと違和感を覚える。
(……そういえば、白獅子さん『神人』なら動かなきゃ行けないって言ってたけど、神社の規定でもあるのか?)
「谷透さーん」
「おー、今行くー」
ふと浮かんだ疑問は、仄の呼び声と共に消えていった。
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