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6.ヨハネスは流される

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「ヨハネス」

 人になった途端、シルバーがちゅ、ちゅ、と頭やら頬に軽くキスをする。

 今夜も、シルバーは人型になった。一緒にベッドで横になっている時に、メキメキバキバキと身体が変わるのを見てしまい、ちょっとナーバスになっているヨハネスだ。何かこう、ポンっと一気に変わるんじゃないの?!

 げんなりして、シルバーにキスされるがままになっている。

「シルバー、今日はしないよ」
「えー」
「何かまだ身体が痛いし…」
「慣らしが足りなかったか」
「それより、君の事を聞かせてよ。本当の名前は?」
「シルバー」
「それは、僕がつけた名前でしょ。君、ヘデラ族なんじゃない?」

 獣人族はいくつかあるが、エリカが言っていたヘデラ族の後継者争いと関係している気がした。
 答える代わりに、シルバーは肩をすくめる。

「確かに俺はヘデラ族だったけど、もう違う。アンタの飼い犬のシルバーだろ。それでいいじゃん」
「いやいや、僕は純粋に犬を飼いたかったんだよ!獣人だったなんて、これからどうしたらいいのか…」
「ヘデラ族の後継者争いに敗れて、戻っても殺される。こうして飼われたのも何かの縁だと思ってる。この生活は楽しいし、犬でいいから、この先も置いてほしい」
「うーん………」
「俺、こんなに安心して暮らした事なくて…ここに来てから、今まで生きてきた中ですげー幸せなんだ…」

 耳があったら垂れているだろう。でかい男がしゅんとした情けない顔をして、ヨハネスを見つめる。
 強さが全てのヘデラ族の後継者争いが過酷なのは知っている。後継者候補だったということは、幼い頃から過酷な環境に居たのだろう。

 はぁ……受け入れるしかないかなぁとヨハネスはため息をついた。

「わかったよ。これまでと同様に、一緒に暮らそう」
「!ありがとう!ヨハネス!」
「名前は、シルバーでいいんだね?」
「うん」

 一緒に暮らすにあたり、シルバーの習性をいくつか確認した。

 ヘデラ族は狼の獣人で、歴代の族長の血筋しか人型には成れない。
 本来は、人型と獣型を自在に変化できるが、シルバーは呪いを受けていて、月の出ている夜にしか人型になれない。それも、最近になって人型になれるようになった。
 まだ呪いの影響か、強制的に人型になったり獣型になったりしていて、自分では戻せない。

「ヨハネスが望むなら、呪いが解けたらずっと獣型でいるよ」
「…うん」

 聞けば、シルバーは26歳だという。若い。頷いたが、いつか気持ちが変わって出ていくかもしれない。その時まで、上手くやれたらいいかと思った。

「それで、呪いなんだけど、どうもヨハネスとすると緩むみたい」
「は………?」
「あんたが自慰するようになってから、身体がアンタを欲して人型に戻ったみたいなんだよな」
「はぁああ……???」

 というか自慰するようになってって…!

「獣の時の記憶は無いんじゃ…」
「まぁな。人型になって答え合わせみたいな…」
「うわぁああ」

 真っ赤になって顔を覆うヨハネスの手を取って、シルバーがキスをする。うっ、かっこいい…

「いいじゃん。恥ずかしがらなくても。誰だってするよそんなこと」
「僕はそういうことに疎いから恥ずかしいんだよ………」
「へぇ。したこと無かったんだ?そんな気はしたけど」
「…うん。興味無かったし…めんどくさかったし…」
「どうだった?」

 何でこんなに色気を振りまくんだ?シルバーは。裸だし。

「思ってたよりは、良かった、かな…」
「またしてくれる?呪いを解くために」

 甘えるような顔は狡い。呪いを盾にしてくるのも狡い。

「う、うん……たまになら………こんなオジサンで良ければ……」


 シルバーは、パアッと笑顔になって、ヨハネスを抱きしめた。

 
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