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二人きりの世界
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生徒達の纏った、気怠さを吹き飛ばす六限目終了のチャイム。かく言う私も気だるさという靄が晴れたような気がして軽く体を伸ばす。
いつも猫背だから伸びているかわからないけど、それでも筋肉は伸びているらしく心地いい。
先生の最後の言葉は聞いていない、教室の戸を閉める音だけは聞こえたけど。
今日はあと帰るだけ……彼女と、今日も。
私はさり気なく、窓の外を見るふりをして左隣の神乃さんの姿を見る。
だけどいつかのライラックの甘い香りがした季節みたいに、神乃さんは私の方を見ていた。
慌てて顔を背ける私、誰も気にしていないんだろうけど、周りはどうでもいい、私自身の問題だ。
小柄で可愛らしい見た目とは裏腹に、大人びた雰囲気を醸し出す人。実際、大人の余裕というものを味わわされた。
担任の先生が入ってきて、終礼が始まったけど神乃さんの視線は私に向いている気がして、だけどそれを確かめる勇気は無くて、ただ落ち着かない終礼の時間だった。
神乃さんが気になって、ほとんど聞けなかった終礼が終わり最後の号令、この時はもう視線を感じなかった。
生徒達は掃除だったり、部活だったり、帰ったり、主に三種類に分かれている。
私と神乃さんは係でもないし、部活動に所属もしていないからただ帰るだけ。
そして帰るときは、私が先に出て、後から神乃さんが追いつく、という感じなんだけど。
「花灯さん」
小柄で可愛らしい見た目通りの声の高さだけど、どこか大人びた雰囲気を感じる声で私に話しかける。
鞄を肩にかけた神乃さんが私のすぐ隣に立っていた。
「あ、ど……どうしたの?」
神乃さんといるのは慣れたはずなのに、他の生徒達がいるから落ち着かない。
身構える私を『あらあら、可愛いわね』とでも言いたげに、口元に手を当てて微笑む神乃さん。
「帰りましょうか」
教室で、このタイミングで神乃さんが話しかけてくるなんてそれ以外ないのに、なにを身構えていたんだ私は。こんな会話なんて、人に聞かれてもどうってこと無いのに。
「……うん」
私が答えると、神乃さんは見た目相応の笑みを携えて私の手を引く。
仲のいい友達ぐらいだろうか。いつもと違う神乃さんの手の感触。この握られ方はあまり経験したことが無い。
他の生徒の間を縫って、神乃さんはどんどん進んでいく。階段を下りて靴を履き替え校門を出る。
もう学校に用は無いとでも言いたげな、流れるような速さで下校する。私ももう学校に用は無いけど。
放課後になったら、私と神乃さん、二人だけの世界を作ることができる。
僅かに熱を持ち出す左肩にそっと優しく触れる。
その様子は私の右隣りを歩く神乃さんに見られていたらしく、繋いだ私の右手を、神乃さんは自らの左肩に当てる。
「わたしも、花灯さんと同じ気持ちよ」
大人びた笑みでそう言う神乃さん。その言葉で私の身体を熱が一気に駆け巡る。
高鳴る心臓に、速くなる脚、待ちきれない。
神乃さんが早く欲しいし神乃さんに私を刻みつけたい。
私の気持ちと同じと言った神乃さんも学校では見られないようなうっとりした表情になっていた。
いつものように神乃さんの家にやって来た私。
いつも神乃さんが家で一人じゃなくなるまで、私達は二人きりの世界で過ごしている。
家に入って鍵を閉めたが最後、もう私達は外から開けられるまで二人きりの世界からは出てこない。
靴を脱いで、神乃さんの部屋に行くまで我慢して、部屋に辿り着いた瞬間、私は神乃さんの小柄な身体をベッドに押し付ける。
「神乃さん……わ、私……」
私でも握りつぶせるんじゃないかと思う程の細い腕、神乃さんが恍惚とした表情で私を見て、その桜色の唇を動かす。
「いいわよ、あなたが欲しいわ」
その言葉で私は神乃さんの腕を掴む手に力を込める。
折れそうだと思っても、力の無い私じゃ折ることはできなくて、だけど痛みは刻み付けることができる。
少し頬に力が入った神乃さんだったけど、だからと言って止めてとは言わず、私の刻む痛みを嬉しそうに、微笑んで受け入れてくれる。
こんな、人を傷つける私を受け入れてくれる。求めてくれる。
制服を脱がされて、下着姿になった神乃さんは私が付けた赤い糸をその小さな体に付けて、今度は私の制服を脱がしていた。
「花灯さん。今度は、わたしを――」
そう言って、露わとなった左肩に歯を立てる。
鋭い痛みと快感が同時に走り、私の呼吸が浅く早くなっていく。
それでも神乃さんは止めることなく、自分が満足するまで自らを私に刻み付ける。
完全な二人きりの世界を作ることができないから、離れていてもすぐそこに互いを感じられるように刻み付けて。
「花灯さん。わたし、もっと花灯さんが欲しいわ」
私の肩から口を離した神乃さんは、私の手を引いて、仰向けになると、私に唇を重ねて銀糸を引っ張ってその綺麗な口を開く。
神乃さんに求められたら断ることなんてできないし、断る気の無い私は、神乃さんの望み通りにする。
私を味わう神乃さんの表情はこの世のなによりも幸せそうで、それを見た私も同じぐらい幸せだ。
互いに互いを刻み付け合い、互いを感じ合う。五感全てを使って。
限られた時間の二人きりの世界で。
今日も明日も、その先も。
いつも猫背だから伸びているかわからないけど、それでも筋肉は伸びているらしく心地いい。
先生の最後の言葉は聞いていない、教室の戸を閉める音だけは聞こえたけど。
今日はあと帰るだけ……彼女と、今日も。
私はさり気なく、窓の外を見るふりをして左隣の神乃さんの姿を見る。
だけどいつかのライラックの甘い香りがした季節みたいに、神乃さんは私の方を見ていた。
慌てて顔を背ける私、誰も気にしていないんだろうけど、周りはどうでもいい、私自身の問題だ。
小柄で可愛らしい見た目とは裏腹に、大人びた雰囲気を醸し出す人。実際、大人の余裕というものを味わわされた。
担任の先生が入ってきて、終礼が始まったけど神乃さんの視線は私に向いている気がして、だけどそれを確かめる勇気は無くて、ただ落ち着かない終礼の時間だった。
神乃さんが気になって、ほとんど聞けなかった終礼が終わり最後の号令、この時はもう視線を感じなかった。
生徒達は掃除だったり、部活だったり、帰ったり、主に三種類に分かれている。
私と神乃さんは係でもないし、部活動に所属もしていないからただ帰るだけ。
そして帰るときは、私が先に出て、後から神乃さんが追いつく、という感じなんだけど。
「花灯さん」
小柄で可愛らしい見た目通りの声の高さだけど、どこか大人びた雰囲気を感じる声で私に話しかける。
鞄を肩にかけた神乃さんが私のすぐ隣に立っていた。
「あ、ど……どうしたの?」
神乃さんといるのは慣れたはずなのに、他の生徒達がいるから落ち着かない。
身構える私を『あらあら、可愛いわね』とでも言いたげに、口元に手を当てて微笑む神乃さん。
「帰りましょうか」
教室で、このタイミングで神乃さんが話しかけてくるなんてそれ以外ないのに、なにを身構えていたんだ私は。こんな会話なんて、人に聞かれてもどうってこと無いのに。
「……うん」
私が答えると、神乃さんは見た目相応の笑みを携えて私の手を引く。
仲のいい友達ぐらいだろうか。いつもと違う神乃さんの手の感触。この握られ方はあまり経験したことが無い。
他の生徒の間を縫って、神乃さんはどんどん進んでいく。階段を下りて靴を履き替え校門を出る。
もう学校に用は無いとでも言いたげな、流れるような速さで下校する。私ももう学校に用は無いけど。
放課後になったら、私と神乃さん、二人だけの世界を作ることができる。
僅かに熱を持ち出す左肩にそっと優しく触れる。
その様子は私の右隣りを歩く神乃さんに見られていたらしく、繋いだ私の右手を、神乃さんは自らの左肩に当てる。
「わたしも、花灯さんと同じ気持ちよ」
大人びた笑みでそう言う神乃さん。その言葉で私の身体を熱が一気に駆け巡る。
高鳴る心臓に、速くなる脚、待ちきれない。
神乃さんが早く欲しいし神乃さんに私を刻みつけたい。
私の気持ちと同じと言った神乃さんも学校では見られないようなうっとりした表情になっていた。
いつものように神乃さんの家にやって来た私。
いつも神乃さんが家で一人じゃなくなるまで、私達は二人きりの世界で過ごしている。
家に入って鍵を閉めたが最後、もう私達は外から開けられるまで二人きりの世界からは出てこない。
靴を脱いで、神乃さんの部屋に行くまで我慢して、部屋に辿り着いた瞬間、私は神乃さんの小柄な身体をベッドに押し付ける。
「神乃さん……わ、私……」
私でも握りつぶせるんじゃないかと思う程の細い腕、神乃さんが恍惚とした表情で私を見て、その桜色の唇を動かす。
「いいわよ、あなたが欲しいわ」
その言葉で私は神乃さんの腕を掴む手に力を込める。
折れそうだと思っても、力の無い私じゃ折ることはできなくて、だけど痛みは刻み付けることができる。
少し頬に力が入った神乃さんだったけど、だからと言って止めてとは言わず、私の刻む痛みを嬉しそうに、微笑んで受け入れてくれる。
こんな、人を傷つける私を受け入れてくれる。求めてくれる。
制服を脱がされて、下着姿になった神乃さんは私が付けた赤い糸をその小さな体に付けて、今度は私の制服を脱がしていた。
「花灯さん。今度は、わたしを――」
そう言って、露わとなった左肩に歯を立てる。
鋭い痛みと快感が同時に走り、私の呼吸が浅く早くなっていく。
それでも神乃さんは止めることなく、自分が満足するまで自らを私に刻み付ける。
完全な二人きりの世界を作ることができないから、離れていてもすぐそこに互いを感じられるように刻み付けて。
「花灯さん。わたし、もっと花灯さんが欲しいわ」
私の肩から口を離した神乃さんは、私の手を引いて、仰向けになると、私に唇を重ねて銀糸を引っ張ってその綺麗な口を開く。
神乃さんに求められたら断ることなんてできないし、断る気の無い私は、神乃さんの望み通りにする。
私を味わう神乃さんの表情はこの世のなによりも幸せそうで、それを見た私も同じぐらい幸せだ。
互いに互いを刻み付け合い、互いを感じ合う。五感全てを使って。
限られた時間の二人きりの世界で。
今日も明日も、その先も。
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