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二学期編 8月

模試返却の日にて 5

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「要するに、水原みずはら檜山ひやまは騙されてるってことだな?」
「そういうこと」

 纏めた彩の言葉に若菜が頷く。

「それにしても、受験が九月って言われて信じるもん?」

 凜空りくが純粋な疑問を口にする。

 いくら涼香でも、そんな調べれば分かることで騙されるのだろうか? それに、涼音も一緒に騙されるなんて思わない。

「あいつの母親が言ったからな」
「それに紗里さりちゃんも一枚噛んでるし」
「あー……あの人達……」

 一度見たことのある涼香の母と、ついこの前、共にボウリングをした紗里の姿を思い出す。

「そら信じるよな」
「そんなに凄いの? ぼくあまりその二人に関わったこと無いから分からないんだけど」

 全て解った風のあやに誰かが聞く。

春田はるた

 彩が若菜わかなに説明を丸投げすると、若菜がそれっぽく黒板になにかを書く。

「端的に言うと、涼香のお母さんは今でも模試をすれば絶対に全国一位取るし、紗里ちゃんも涼香より上の順位は取れる」

 黒板にへのへのもへじを描いた若菜の言葉に一同はドン引く。

「ヤバいよね」

 凜空の言葉を継いで彩が言う。

「どうせこの流れも水原の母親の読み通りだ」
「あー、そゆことね」

 そこで凜空が涼香の母の目的に気づいた。

 そして若菜はそれっぽくまとめる。

「とりあえず、涼香に事実を話します。そしたら涼香の学力は徐々に下がって、入試本番にはギリギリ受かるぐらいの学力に下がります」

 ここまで言ってこの場にいる全員が、涼香になにが起きているのか理解したらしく、口々になるほどるのだった。


 一方その頃――。

「――という感じで涼香を元に戻したいんだけど……」
「待ってください……あたし騙されてたんですか……?」

 一足早く、事実を知った涼音すずねが恐ろしいものを見たような表情を浮かべる。

 ある意味涼音も被害者だ。涼香を騙すためにはまずは涼音からだ、という理由で騙されただけだなのだ。

「くっそ……騙された!」

 涼香に聞こえないボリュームで机を叩く涼音。

「明日から、多分涼香はいつも通りになると思うけど……それでもいい?」
「今の先輩楽だったんですけどねえ……。入試に影響がでないのなら好きにしてください」

 涼音の同意は取れた。この後、涼香を教室へ呼び、真実を伝える。

「ここね、紅茶の温度管理は大切なのよ。貸してみなさい、やってあげるわ」

 そんな頼りになる涼香の言葉を聞いて、涼音と菜々美はため息をつくのだった。
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