557 / 583
番外編 夏休みのそれぞれ編
若菜と紗里 私のせい 6
しおりを挟む
若菜が指定された問題まで終えるのと、紗里の料理が完成するのはほぼ同時だった。
「できたわよ」
「はーい」
急いでテーブルの上を片付け、除菌シートでテーブルを拭いて、いつでも料理を置けるようにする。
そして、テーブルの上に置かれた料理を見て、若菜は眼球が落ちそうな程目を開く。
「いっぱいだぁ……」
「遠慮せず食べて」
疲れたのだろうか右腕を軽く振りながら紗里が笑う。
魚料理に肉料理、野菜や豆腐など色んな料理が並ぶ。
迷った末、よく分からなくなった紗里は、思いついた料理を片っ端から作ったのだ。
あまりの量に、最初は戸惑っていていた若菜だったが、その料理の盛り付けの綺麗さに、徐々に頭の中が食欲に染まっていく。
「美味しそう……」
緊張と疲れから、腹を満たして安心したい欲求に駆られる。早く食べたい、溢れ出る唾液を飲み込んで待つ。
「ごめんなさいね、ご飯は冷たいものなの」
お茶碗にご飯をよそった紗里が戻ってくる。
食器も出してもらい、いつでも食べることができる。
紗里と若菜が向かい合って座る。
「「いただきます」」
手を合わせて食事が始まる。
紗里は若菜の様子を観察しながら、ゆっくりと食べている。我ながら上手くできた自信はある。ただ、若菜の口に合うかどうかなのだが――。
「美味しい!」
細く長い息を吐く。
顔の筋肉の状態から見ても、無理を言っているようには見えない。その笑顔だけで紗里はもうなにもいらない。
若菜に食べてもらう手料理、少し張り切りすぎたが、この程度問題にはならない。ただ、緊張で料理中余計な力が入ってしまい、箸を持つ右手が思うように動かない。
実は、常人離れの運動能力を持つ紗里だが、その運動能力に体がついていってないのが現状だ。高校生の頃には自分の活動限界などを把握していたため、体を壊すことは無くなったのだが、今日は別だった。
このことを知っているのは若菜の両親のみ、学校にも一応伝えていたが詳細には伝えていなかった。
「紗里ちゃん食べないの?」
箸を動かさない紗里を不思議に思った若菜が首を傾ける。
「え? ああ、若菜の口に合うかどうか心配だったの」
「めちゃくちゃ合うよ! 毎日食べたいぐらい!」
「またそんなこと言って。本気にするわよ?」
そう言いながら、比較的楽に口に運ぶことができる豆腐料理を食べる。
そして、いました自分の発言に頭が真っ白になる。真っ白になりながらも若菜の表情を確認する。
「えー、本当に~?」
若菜はいつも通り、紗里の冗談だと思っている様子だ。
そのいつも通りの反応を見て、悲しいような、安心したような、なんとも言えない感情になる紗里であった。
「できたわよ」
「はーい」
急いでテーブルの上を片付け、除菌シートでテーブルを拭いて、いつでも料理を置けるようにする。
そして、テーブルの上に置かれた料理を見て、若菜は眼球が落ちそうな程目を開く。
「いっぱいだぁ……」
「遠慮せず食べて」
疲れたのだろうか右腕を軽く振りながら紗里が笑う。
魚料理に肉料理、野菜や豆腐など色んな料理が並ぶ。
迷った末、よく分からなくなった紗里は、思いついた料理を片っ端から作ったのだ。
あまりの量に、最初は戸惑っていていた若菜だったが、その料理の盛り付けの綺麗さに、徐々に頭の中が食欲に染まっていく。
「美味しそう……」
緊張と疲れから、腹を満たして安心したい欲求に駆られる。早く食べたい、溢れ出る唾液を飲み込んで待つ。
「ごめんなさいね、ご飯は冷たいものなの」
お茶碗にご飯をよそった紗里が戻ってくる。
食器も出してもらい、いつでも食べることができる。
紗里と若菜が向かい合って座る。
「「いただきます」」
手を合わせて食事が始まる。
紗里は若菜の様子を観察しながら、ゆっくりと食べている。我ながら上手くできた自信はある。ただ、若菜の口に合うかどうかなのだが――。
「美味しい!」
細く長い息を吐く。
顔の筋肉の状態から見ても、無理を言っているようには見えない。その笑顔だけで紗里はもうなにもいらない。
若菜に食べてもらう手料理、少し張り切りすぎたが、この程度問題にはならない。ただ、緊張で料理中余計な力が入ってしまい、箸を持つ右手が思うように動かない。
実は、常人離れの運動能力を持つ紗里だが、その運動能力に体がついていってないのが現状だ。高校生の頃には自分の活動限界などを把握していたため、体を壊すことは無くなったのだが、今日は別だった。
このことを知っているのは若菜の両親のみ、学校にも一応伝えていたが詳細には伝えていなかった。
「紗里ちゃん食べないの?」
箸を動かさない紗里を不思議に思った若菜が首を傾ける。
「え? ああ、若菜の口に合うかどうか心配だったの」
「めちゃくちゃ合うよ! 毎日食べたいぐらい!」
「またそんなこと言って。本気にするわよ?」
そう言いながら、比較的楽に口に運ぶことができる豆腐料理を食べる。
そして、いました自分の発言に頭が真っ白になる。真っ白になりながらも若菜の表情を確認する。
「えー、本当に~?」
若菜はいつも通り、紗里の冗談だと思っている様子だ。
そのいつも通りの反応を見て、悲しいような、安心したような、なんとも言えない感情になる紗里であった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ほのぼの学園百合小説 キタコミ!
水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、青春学園物語。
ほんのりと百合の香るお話です。
ごく稀に男子が出てくることもありますが、男女の恋愛に発展することは一切ありませんのでご安心ください。
イラストはtojo様。「リアルなDカップ」を始め、たくさんの要望にパーフェクトにお応えいただきました。
★Kindle情報★
1巻:第1話~第12話、番外編『帰宅部活動』、書き下ろしを収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4
2巻:第13話~第19話に、書き下ろしを2本、4コマを1本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP
3巻:第20話~第28話、番外編『チェアリング』、書き下ろしを4本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3
4巻:第29話~第40話、番外編『芝居』、書き下ろし2本、挿絵と1P漫画を収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P
5巻:第41話~第49話、番外編2本、書き下ろし2本、イラスト2枚収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL
6巻:第50話~第55話、番外編2本、書き下ろし1本、イラスト1枚収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ
Chit-Chat!1:1話25本のネタを30話750本と、4コマを1本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H
★第1話『アイス』朗読★
https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE
★番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読★
https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI
★Chit-Chat!1★
https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる