237 / 493
夏休み編 7月
ベッドの上にて
しおりを挟む
どれだけ規則正しい生活を送っていても、夏休みのような長期休みに入れば、生活リズムは崩れていくものだ。
檜山涼音もその一人。いつもなら六時辺りには起きているに、夏休みの今は八時を回っても夢の中だ。
茶色いに染められた長い髪を冷感シーツに広げ、薄い掛け布団で顎まで隠している。
クリっとした大きな目は、今は閉じられて見ることは叶わないが、それでも顔のパーツの一つ一つが整っていて、可愛い少女だということが窺える。
「夏休みはいいわね……眠っている涼音を見ることができるわ」
そしてその隣で涼音の写真を撮っているのは、いつもなら遅刻ギリギリまで眠っているのに、長期休みの時だけ涼音より早起きすることができる少女の水原涼香である。
寝起きのはずなのだが、涼香の髪は、まるで櫛で梳かしたかのように艶やかで、清流のように繊細で美しい。
「やっぱり涼音の可愛さは全世界に広まるべきなのよ……」
ブツブツ言いながら涼香はひたすらにシャッターを切る。カメラロールが涼音に埋めつくされ、そろそろスマホの容量が危ない。
「ん……」
シャッター音から少しでも離れようとしてか、涼音は身を捩り、涼香から離れようとする。
しかし一人用のベッドに二人でいるため、そして涼音は壁側で寝ていたため、離れようとしても離れることができない。
「ぅ……るさぁぃ……」
涼音は目を閉じたまま、音の発信源を探すために手を彷徨わせる。
「ちょっと涼音、邪魔をしないで」
邪魔をしているのは涼香の方だ。
涼音の手から逃れようと身体を反らす涼香。
そして涼香が寝ていたのは、涼音の反対側、壁は無い。
つまり――ドタンっと鈍い音が鳴り、涼香の呻き声がそれに続く。
自業自得である。
静かな時間を取り戻した涼音は掛け布団を被り、再び夢の世界へと落ちていくのであった。
檜山涼音もその一人。いつもなら六時辺りには起きているに、夏休みの今は八時を回っても夢の中だ。
茶色いに染められた長い髪を冷感シーツに広げ、薄い掛け布団で顎まで隠している。
クリっとした大きな目は、今は閉じられて見ることは叶わないが、それでも顔のパーツの一つ一つが整っていて、可愛い少女だということが窺える。
「夏休みはいいわね……眠っている涼音を見ることができるわ」
そしてその隣で涼音の写真を撮っているのは、いつもなら遅刻ギリギリまで眠っているのに、長期休みの時だけ涼音より早起きすることができる少女の水原涼香である。
寝起きのはずなのだが、涼香の髪は、まるで櫛で梳かしたかのように艶やかで、清流のように繊細で美しい。
「やっぱり涼音の可愛さは全世界に広まるべきなのよ……」
ブツブツ言いながら涼香はひたすらにシャッターを切る。カメラロールが涼音に埋めつくされ、そろそろスマホの容量が危ない。
「ん……」
シャッター音から少しでも離れようとしてか、涼音は身を捩り、涼香から離れようとする。
しかし一人用のベッドに二人でいるため、そして涼音は壁側で寝ていたため、離れようとしても離れることができない。
「ぅ……るさぁぃ……」
涼音は目を閉じたまま、音の発信源を探すために手を彷徨わせる。
「ちょっと涼音、邪魔をしないで」
邪魔をしているのは涼香の方だ。
涼音の手から逃れようと身体を反らす涼香。
そして涼香が寝ていたのは、涼音の反対側、壁は無い。
つまり――ドタンっと鈍い音が鳴り、涼香の呻き声がそれに続く。
自業自得である。
静かな時間を取り戻した涼音は掛け布団を被り、再び夢の世界へと落ちていくのであった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる