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7月15日 涼音の誕生日編
涼音の誕生日にて
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「ハッピーバースデー‼ 来たわよ!」
バンっ、と勢い良く涼音の部屋のドアを開けた涼香は、頭にデッカイリボンをつけていた。
「ふっふっふ。待ってましたよ、先輩!」
対する涼音は『本日の主役』と書かれたタスキをかけて腕を組んで仁王立ちしていた。
ノリノリである。
涼香は持ってきた紙袋をゴツンっ、とローテーブルに置く。重たいものが入っているらしい。
「随分とパンパンになってますねえ」
「結構多いわよ」
二人は腰を下ろす。
涼香は紙袋の中をガサゴソ。そして中から二つの、片手で持てる大きさの正方形の箱を取り出す。
「まずはこれよ」
その箱を受け取った涼音が早速箱を開ける。
「わあ、湯吞みですね」
そしてもう一つの箱にも湯吞みが入っていた。
「そう! ペア湯吞みよ!」
涼音が箱から湯吞を二つローテーブルに並べる。
魚の漢字だらけの湯吞みを並べる。
「……」
「……お寿司の幻覚が見えるわ」
「次のプレゼントはなんですかねー」
幻覚を見ている涼香を放っておいて、涼音は次のプレゼントを取り出す。
それは青い包装紙で包装されている、そこそこ重たくて大きい物だった。
「ああ、魚図鑑ですか」
開けなくても分かる。どうせ涼香のことだ。そう思っていた涼音だったが――。
「それはどうかしら」
得意げに微笑む涼香。
そんな涼香に怪訝な目を向け、涼音は包装紙を丁寧に破く。
「深海生物図鑑……って魚図鑑じゃないですか!」
「違うわよ! 魚図鑑と深海生物図鑑は別物なのよ!」
「あと図鑑って先輩が欲しいものじゃないですか」
涼音が涼香に図鑑を差し出しながら言う。
「そうだけど、涼音と一緒に見たいのよ」
差し出された図鑑を受け取った涼香が、口を尖らせながら紙袋の中に図鑑をしまう。
そしてそれと入れ替わりで手のひらサイズのラッピング袋を取り出す。
「冗談はさておき、はい」
「あ、ありがとうございます」
受け取った袋を早速開けてみる。
「わっ綺麗……」
袋の中に入っていたのはバラ色のシュシュだった。
「つけてあげるわ」
涼音は涼香にシュシュを手渡して背中を向ける。
涼香は涼音の髪を縛っているゴムを取る。茶色の髪がはらりと揺れて、やがて背中を隠す。
「いい匂いね」
「使ってるシャンプーは同じですよ」
「自分の匂いはよく分からないのよ」
そう言って涼香は涼音の髪の毛に顔をうずめる。
「ちょっ――とお⁉ くすぐったいですって!」
涼音は身をよじるが、一向に離れる気配がない。
「やっぱり落ち着くわね」
「もうっ……髪の毛結んでくれるんじゃないんですか?」
「ふふっ、そうね」
やっと離れた涼香は、涼音の髪の毛に優しく触れ、いつも通りのおさげにしていく。
「できたわ」
涼音の頭をぽんぽんと叩き、もういいわよと合図をする。
「ありがとうございます」
涼音はスマホのカメラを起動させて確認する。
「わあ! 綺麗ですね」
涼音が顔を輝かせている内に、涼香は手を伸ばしてシャッターを切る。
「もー。余計なことしないでくださいよ」
涼音は写真をすぐに涼香に送信して消去した。
スマホを置いた涼音は、髪を結ぶシュシュに優しく触れる。
「このシュシュ……大切にしますね」
そう言って涼香にもたれかかるのだった。
バンっ、と勢い良く涼音の部屋のドアを開けた涼香は、頭にデッカイリボンをつけていた。
「ふっふっふ。待ってましたよ、先輩!」
対する涼音は『本日の主役』と書かれたタスキをかけて腕を組んで仁王立ちしていた。
ノリノリである。
涼香は持ってきた紙袋をゴツンっ、とローテーブルに置く。重たいものが入っているらしい。
「随分とパンパンになってますねえ」
「結構多いわよ」
二人は腰を下ろす。
涼香は紙袋の中をガサゴソ。そして中から二つの、片手で持てる大きさの正方形の箱を取り出す。
「まずはこれよ」
その箱を受け取った涼音が早速箱を開ける。
「わあ、湯吞みですね」
そしてもう一つの箱にも湯吞みが入っていた。
「そう! ペア湯吞みよ!」
涼音が箱から湯吞を二つローテーブルに並べる。
魚の漢字だらけの湯吞みを並べる。
「……」
「……お寿司の幻覚が見えるわ」
「次のプレゼントはなんですかねー」
幻覚を見ている涼香を放っておいて、涼音は次のプレゼントを取り出す。
それは青い包装紙で包装されている、そこそこ重たくて大きい物だった。
「ああ、魚図鑑ですか」
開けなくても分かる。どうせ涼香のことだ。そう思っていた涼音だったが――。
「それはどうかしら」
得意げに微笑む涼香。
そんな涼香に怪訝な目を向け、涼音は包装紙を丁寧に破く。
「深海生物図鑑……って魚図鑑じゃないですか!」
「違うわよ! 魚図鑑と深海生物図鑑は別物なのよ!」
「あと図鑑って先輩が欲しいものじゃないですか」
涼音が涼香に図鑑を差し出しながら言う。
「そうだけど、涼音と一緒に見たいのよ」
差し出された図鑑を受け取った涼香が、口を尖らせながら紙袋の中に図鑑をしまう。
そしてそれと入れ替わりで手のひらサイズのラッピング袋を取り出す。
「冗談はさておき、はい」
「あ、ありがとうございます」
受け取った袋を早速開けてみる。
「わっ綺麗……」
袋の中に入っていたのはバラ色のシュシュだった。
「つけてあげるわ」
涼音は涼香にシュシュを手渡して背中を向ける。
涼香は涼音の髪を縛っているゴムを取る。茶色の髪がはらりと揺れて、やがて背中を隠す。
「いい匂いね」
「使ってるシャンプーは同じですよ」
「自分の匂いはよく分からないのよ」
そう言って涼香は涼音の髪の毛に顔をうずめる。
「ちょっ――とお⁉ くすぐったいですって!」
涼音は身をよじるが、一向に離れる気配がない。
「やっぱり落ち着くわね」
「もうっ……髪の毛結んでくれるんじゃないんですか?」
「ふふっ、そうね」
やっと離れた涼香は、涼音の髪の毛に優しく触れ、いつも通りのおさげにしていく。
「できたわ」
涼音の頭をぽんぽんと叩き、もういいわよと合図をする。
「ありがとうございます」
涼音はスマホのカメラを起動させて確認する。
「わあ! 綺麗ですね」
涼音が顔を輝かせている内に、涼香は手を伸ばしてシャッターを切る。
「もー。余計なことしないでくださいよ」
涼音は写真をすぐに涼香に送信して消去した。
スマホを置いた涼音は、髪を結ぶシュシュに優しく触れる。
「このシュシュ……大切にしますね」
そう言って涼香にもたれかかるのだった。
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