上 下
137 / 493
7月

フードコートにて

しおりを挟む
「先輩は唐揚げにレモンかける派なんですね」

 ある日のこと、ショッピングモールにやってきた涼香りょうか涼音すずね。二人はちょうど昼時ということで、ショッピングモール二階のフードコートに来ていた。

「私はレモンが好きなのよ」

 唐揚げ定食の唐揚げにレモンをかけようとしながら、涼香は知っているでしょう? と首を傾げる。

「いや、いつもレモンだけ丸齧りしてたじゃないですか」
「たまにはかけたくなる時があるのよ」
「そうなんですねー」

 そう言って涼音は注文したうどんをちゅるちゅる啜る。

「ふぐぅぃ!」

 やはりうどんは食べやすい。

「目がぁ……目がぁ……‼」

 出汁の香りが鼻を抜ける。

「涼音……!」

 箸が止まらない。

「美味しい……」
「涼音!」

 汁を吸った分厚いあげにかぶりつく。

「意地悪!」
「……なんですか」

 涼音が鬱陶しそうに涼香を見る。周りに人がいっぱいるのにご飯ぐらい黙って食べられないのだろうか。

「レモンが目に入ったわ」
「まあいつも通りですね」
「冷たいわね」
「早く食べてください」

 いつもなら少し優しくしてくれるのだが、なぜか涼音は冷たかった。

 涼香は悲しくなってきた。せっかく二人で食事をしているのに、前に座る涼音の目が冷たい。

 その悲しみを振り払うため、涼香はレモンにかぶりつく。

 涼音が少し笑顔になってくれた。悲しい気持ちはもう無い、二人は食事を再開するのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

女子高校生集団で……

望悠
大衆娯楽
何人かの女子高校生のおしっこ我慢したり、おしっこする小説です

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

処理中です...