上 下
93 / 493
6月

梅雨の日にて

しおりを挟む
「ジメジメムシムシしてきましたね」

 ある梅雨の日のこと。

 涼音すずねは肌に張り付くブラウスを鬱陶しそうに剥がしながら不平を言う。

「明日から半袖に変えるべきかしらね」

 頬杖をついた涼香りょうかは、下敷きでパタパタと涼音を仰ぎながら言う。

「ですねー。これから暑くなるんだなあ……」

 思わずため息をついた涼音の前に座る涼香も、遠い目をしながらぽつりと呟く

「夏になるのね……」

 少し沈んだ涼香の声に涼音は首を捻る。

「なんか元気ないですね」
「ふやけてしまったわ」
「はあ……?」

 なに言ってるんですか? と怪訝な顔をする涼音に、少し頬を染めた涼香が恥ずかしそうに答える。

「そんな目で見ないで……照れるわ」
「えぇ……」

 まさか本当にふやけてしまったのだろうか? ふやけた状態というのはどういう状態なのか分からないが。

 とりあえず涼音は涼香の両頬をつねってみる。

「いひゃいわ」
「あれ? 水は吸ってませんね」
「ちょっと、いきなりなにをするのよ」

 両頬を押さえながら、涼香は涼音に抗議の目を向ける。

「ふやけてるのかなあって」
「そういう意味ではないのよ」
「知ってますよ」
「相変わらず意地悪ね」
「先輩にだけです」
「…………」

 むくれた涼香が涼音の両頬を手で挟む。

「なんでしゅか」
「私も涼音にだけ意地悪するわ」
「ふっ」

 鼻で笑った涼音だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

女子高校生集団で……

望悠
大衆娯楽
何人かの女子高校生のおしっこ我慢したり、おしっこする小説です

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

処理中です...