上 下
87 / 387
6月

涼音の部屋にて 3

しおりを挟む
 ある日の夜。涼音すずねの部屋に来ていた涼香りょうかが急に部屋の電気を消した。

「今から怖い話をするわよ」
「やめてください」

 涼音が今にも泣きそうな声を出しながら涼香にしがみつく。

「これは本当にあった話よ」
「だーかーらーやーめーてーくーだーさーいー!」

 涼香の声をかき消す勢いで涼音が叫ぶ。

「ちょっと涼音、静かにしなさい」

 静かにすべきは涼香の方なのだが、涼香は涼音を黙らせようとする。どうしても怖い話をしたいらしい。涼音にとってはただの嫌がらせでしかないが。

「あれは私が深夜の山に入った時……」
「あーーーーーーーー!」

 耳を塞ぎながら、布団に潜り込んだ涼音がバッタバッタ動いて涼香の声を遮る。

「……」

 その様子が面白いため、涼香は見守ることにする。怖い話はもうしない。

 やがて疲れたのか、涼音の動きが止まる。そしてチラリと布団の剥いで顔を出す。

「もう一度お風呂に入る?」

 涼香が布団を剥いであげると、涼音の髪は汗で肌にひっついており、頬も少し赤みを帯びていた。

「いえ……大丈夫です」

 息を整えている涼音のはだけかけているパジャマを整える涼香。

「どうしてそんなに汗をかいてるのかしら」
「先輩が変なこと言うからでしょ」
「あら、そうなの?」

 元凶は白々しかった。

「ちょっと顔洗ってきます」

 そろそろ扇風機を出さないと、と漏らしながら部屋を出ていく涼音を、涼香は見送るのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

タイは若いうちに行け

フロイライン
BL
修学旅行でタイを訪れた高校生の酒井翔太は、信じられないような災難に巻き込まれ、絶望の淵に叩き落とされる…

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

ニューハーフな生活

フロイライン
恋愛
東京で浪人生活を送るユキこと西村幸洋は、ニューハーフの店でアルバイトを始めるが

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...